« 「ぶくろぐ」スタート! | Main | 今日の収穫5冊 »

September 21, 2004

『スズキさんの休息と遍歴』by矢作俊彦

スズキさんの休息と遍歴―またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行
矢作 俊彦

発売日 1994/09
売り上げランキング 166,733

Amazonで詳しく見る4101180156

『ららら科学の子』で今年度の三島由紀夫賞を受賞した矢作俊彦氏による1990年の作品。

スズキさんは妻と息子(小学生高学年?)の三人暮らし。
広告代理店の副社長をしている。
妻がヨーロッパ旅行に出かけている間、息子のケンタを実家に預け、
自分は愛車のシトロエン2CVで箱根あたりをドライブする予定だった。
が、ひょんな事がきっかけで、ケンタと二人、北に向けて冒険旅行が始まる。
もちろん愛車ドーシーボー(2CVをそう読む)に乗って・・・
ちなみにドゥシボ(私はこう呼んでいた)はこんな車↓
2cv.gif
旅の途中では、スズキさんが全共闘だった頃のエピソードがはさまれる。
そして様々な人間に出会い、その都度、スズキさんは現代の矛盾に論争を挑む。

山中の工事現場に向かうアフガニスタン人に出会った時はケンタにこういう。
「ビルディングはこの人たちがつくるんだ。決して丹下健三がつくるわけじゃない」

卒業以来、ひさしぶりに会う同級生にはディズニーランドについてこう語る。
「ディズニーが子供に送るメッセージは、イソップと同じだ。
あらゆる神話からの革命性、人間性の剥奪だ。
キリスト教倫理観による個人の矮小化だ。
清潔で正確で便利で速いことの絶対的な権利を、電気と光学を使って押売りするんだ」

と何かにつけて熱いスズキさんに対して、息子のケンタはなかなか利発で冷静である。
二人の会話が何ともおもしろい。
息子「かしわってなあに?」
父「ブロイラーじゃないってことだよ」
息子「北京ダックのことかあ」
父「北京ダックを知っているのにかしわを知らないのかい?」
息子「それじゃ、ブレスの鳥肉のこと?」
父「えっ、ブ、ブ、ブレスってフランスのブ、ブ、ブレスか?」
息子「うん」
父「何で知ってるんだ?」
息子「だって食べたよ。ママが食べたのぼくに少しくれたの。西麻布の人ん家みたいなレストランでね
緑色のソースのやつ」
父「ガソリンスタンドの横の坂道あがったとこにある店か」
息子「うん。そうだよ。いつもそこだよ」
父「いつも!?」
息子「いつもじゃなくってね。・・・その、パパがママと喧嘩したときだけだけどね」

この親子二人の掛け合い漫才を読んでいるだけでもかなり楽しい。
小学生の息子さんがいる父親の方は是非、読んでほしい。
きっと二人で旅に出たくなるはずだ。
また、この作品は『ららら科学の子』へ向かうターニングポイント的な作品のようなので
これから『ららら科学の子』を読む方にオススメ。

|

« 「ぶくろぐ」スタート! | Main | 今日の収穫5冊 »

Comments

「ボクシングはこのジョーが撃つんだ。決して丹下段平が戦うわけじゃない」

Posted by: Rym | September 21, 2004 at 19:41

>Rymさん
新手のイジメですか?(笑)
確かに私が悪かった。
「年下の男はみんなバカだと思っていた」という発言はよろしくない。
しかし、この謎解きみたいなコメントは何でしょうか?
降参するので教えてください(笑)

Posted by: LIN | September 21, 2004 at 20:00

すいません、LIN姐をいじめる気なんてなかったのです。謎解きとかでもなくて、ただ「ビルディングはこの人たちがつくるんだ。決して丹下健三がつくるわけじゃない」のパロディをやってウケを狙ってコケたというだけです。笑

>確かに私が悪かった。
そういうわけで、LIN姐さんが謝ることなんて何もないのであって、こちらこそすいませんほんとうに。『らららアトムの子』が未読だったのでつい余計なコメントを。

>「年下の男はみんなバカだと思っていた」という発言はよろしくない。
いえいえそんなことはございません年下の男は甘えてばかりでぜんぜんダメですよほんとうに。ほんとうに。いやマジで。降参。ああ、びっくりした。

あとで例の場所にメッセージ送っときますね。そういえば返信してなかったですので。すいません週末はちょっとバタバタしてまして。詳細はまたJUGEMのほうにでも書きますが……。

Posted by: Rym | September 21, 2004 at 20:32

>Rymさん
あ、丹下健三と丹下段平をかけたのね・・・あ〜、なるほど〜・・・
_| ̄|○
私が元落研部長と知っての狼藉かっ!

ってわかっていると思いますが、最初のコメントもこれもみんなギャグですからね〜(笑)

しかし、関西ってもっと笑いのレベルが高いかと思っt(以下略)

>あとで例の場所にメッセージ送っときますね。
待ってま〜す♪

Posted by: LIN | September 21, 2004 at 20:52

なつかしい〜本です。
刊行当初に読んですっかり忘れていて、
LINさんのレビューが書かれるのを楽しみにしてました。
おかげで、本の記憶とともに、いろいろな想いでが
ぷわっと蘇ってきてほわほわしてます。
ありがとうございました。

ちなみに私は、ごく一般的に、
トゥーシーボと呼んでました。
懐かしいです。80〜90年代。。。(遠い目)

Posted by: pico | September 21, 2004 at 21:07

「あ〜、これだから年下の男はダメなのよね〜」

みたいな?
みたいな?

Posted by: Rym | September 21, 2004 at 21:09

>picoさん
>picoさん
ひゃーっ!
刊行当初にお読みになったのですか?
いやいや、それはすごい!
当時、矢作俊彦さんってそんなに知名度なかったのでは?
それをご存知とはさすがpicoさん!

picoさんはトゥーシーボとおっしゃってましたか(^^)
ニーシーヴィーという人もいましたね。

>懐かしいです。80〜90年代。。。(遠い目)
ホント!ホント!
懐かしいですよね〜(遠い目・・・)
今度、ゆっくり、語り合いましょう。
ナカマ♪((o(*^∇^)X(^∇^*)o)) ナカマ♪

Posted by: LIN | September 22, 2004 at 01:02

>Rymさん
>あ〜、これだから年下の男はダメなのよね〜
いやいや、そんな君たちがいとおしいよ(笑)

Posted by: LIN | September 22, 2004 at 01:06

これ、単行本は縦に長く、本棚で目立っています。
凝った文字組で笑います。文庫はどうなっているんでしょうか。
全共闘世代のノスタルジーと馬鹿にする批評家もいますが、
矢作俊彦は歳をとるにつれユーモラスになってきていておもしろいです。
虚実入り交じった怪作『あ・じゃ・ぱ・ん』も2年前に復刊されているので是非。

漫画家から小説に転向した当初のものは、どれも横浜が舞台のハードボイルドです。
横浜に遊びに来る東京の人間を田舎者扱いしています。
日本語で初めてハードボイルドを書いた人で、
いまだにこの人を超える人は出てきていないと思います。

中学生の頃に『マイク・ハマーに伝言』や『神様のピンチヒッター』などを読み、
世の中をひねて見るようになってしまった俺です。
ほんとこの人ばかりは恨んでいます。

Posted by: mort_a_credit | September 23, 2004 at 00:22

>mort_a_creditさん
>文庫はどうなっているんでしょうか。
イラストあり、手書き文字あり、太字あり・・・
多分、単行本と一緒ではないかと思います。

>日本語で初めてハードボイルドを書いた人で
9月10日に発売された新作『THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ
』は
「19年ぶりのハードボイルド書き下ろし!二村永爾シリーズの最新作」だそうですよ〜
これ、タイトルは当然、レイモンド・チャンドラーに引っ掛けてるんでしょうね。

しかし、矢作俊彦って『ららら科学の子』でぱっと出てきた作家なのかと思っていたら、
70年代から書いていたんですね_| ̄|○
まずは『マイク・ハマーへ伝言』から読んで勉強したいと思います・・・

>世の中をひねて見るようになってしまった俺です。
そういう人ってチャーミングだと思います♪
何でも鵜呑みにする人と話していてもつまんないですよー(毒)

Posted by: LIN | September 23, 2004 at 09:45

本家ハードボイルドに引っ掛けまくりです。
マイク・ハマーもあっちの探偵です。
でも大藪春彦や北方謙三などは表層だけの模倣で、
矢作はとことんハードボイルドです。

私立探偵濱マイクは、矢作から引っ掛けてます。

週刊誌で伊集院静みたいな連載をしているので、
いきなり出てきたおっさんというイメージなのも仕方ないです。

あまり女性が好む作風ではないですが、
現代においては、ハードボイルドとは「笑う」ことが最善の読み方だと思います。
だって、セックス終わったらためらいなく撃ち殺すんですよ女を。

『Wrong goodby』いま読んでいます。
このタイトルは「警官にうまくさよならを言う方法は、まだ発明されていない」という、
『The Long Goodby』の一節に引っ掛けていると思います。

Posted by: mort_a_credit | September 23, 2004 at 12:00

>mort_a_creditさん
『THE WRONG GOODBYE』、すでにご存知でしたか。
私も読んでみようかなあ。

ハードボイルドは、最近、人に薦められて原リョウの『私が殺した少女』を読みましたが
正直、そんなに感動はしませんでした^^;
直木賞受賞作品なんですけどね。

今ひとつハードボイルドが好きになれない私ですが矢作氏の作品でも読んで
認識を変えたいです。

ちなみにハードボイルドとは違いますが、高村薫氏の『わが手に拳銃を』あたりは
かっこいいと思います。

Posted by: LIN | September 23, 2004 at 12:52

読む前に『リンゴォ・キッドの休日』を読むのがおすすめですが、
これは相当に入手困難です。
新潮文庫版は見たことがないです。光文社文庫版をたまに見ます。

でもとりあえずは『The Wrong Goodbye』(スペルミス!)を立ち読みするのがいいですね。ハードボイルドを受け付けなかったら手間とお金の無駄です。

二村って人は警官で、それでチャンドラーの一節に引っ掛けたタイトルが、
さらにひねられているわけです。

高村薫は文体から男だと思っていました。まあ、顔写真を見ても男に見えますが。

Posted by: mort_a_credit | September 23, 2004 at 16:48

>mort_a_creditさん
『The Wrong Goodbye』立ち読みしてきました。
重かった・・・(笑)
『マイク・ハマーへの伝言』が見つかったのでまずはこちらから読んでみます。

>高村薫は文体から男だと思っていました。
みなさん、そういいますね。

>まあ、顔写真を見ても男に見えますが。
ひどいなあ(笑)
私は彼女にとても憧れているんですよ♪

Posted by: LIN | September 23, 2004 at 19:30

The comments to this entry are closed.

« 「ぶくろぐ」スタート! | Main | 今日の収穫5冊 »