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September 09, 2004

『業柱抱き』by車谷長吉

業柱抱き
車谷 長吉

発売日 1998/04
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作者の名前にピンと来ない方には、昨年、数々の映画賞を総ナメにした
『赤目四十八瀧心中未遂』の原作者といえばおわかりいただけるのではないだろうか。

苦労の人である。
30才の時に無一物となり、以後9年間、住所不定のタコ部屋生活を送る。
この間も私小説を書き続ける。
47才、新潮社から初めての本『鹽壷の匙』を上梓した。
そして53才、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞を受賞。

そもそも私小説というのは本人はもちろん、親、兄弟、親戚縁者、
知人全ての恥をさらすことである。
自身も「私小説を鬻(ひさ)ぐことは、いわば女が春を鬻ぐに似たこと」と書いている。
それでも書かずにはいられなかったという。

これはそんな彼のエッセイ集である。
人生について悩み続け苦しみぬいた彼のことばは深く、そして鬼気迫るものがある。

●書くという振る舞いには、人の生血を求められる。

●まず何よりも青竹より素手で油を搾り出すがごとく、
 己れの生き血を搾り出さないことには・・・

●言葉はある場合には、その人の一番奥底にひそんでいる生霊を語ってしまうことがある。

●文学には毒がふくまれている。
 この中毒には二重の精神過程があって、毒にあたればあたるほど
 より深く文学の快楽に囚われていく面と、逆により深く自己憎悪に囚われ、
 文学を忌むようになる・・・

車谷氏がいかに苦しみながら小説を書いているかがおわかりいただけるかと思う。
「産みの苦しみ」というが「血を吐く思いで処女作を書いた」と氏はいう。
それを安産よろしく、ぽこぽこと年間に何冊も書いてしまう作家というのはいかがなものか。

少なくとも私はそういう作家の本を読みたいと思わない。
敢えて誰とは書かないが・・・(笑)

※文庫版の表紙が内容と合致していないような気がしたので
リンク先は単行本になっています。
もし、お買い求めになる場合は文庫本が出版されておりますのでご注意ください。

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Comments

私小説として評判だった『鹽壷の匙』を当時読みました。
LINさんの記事を見てもう一度読んでみようかなと思いました。
当時は人生経験不足のせいか十分楽しめなかったもので。
今読めばまた違った感想を持ちそうな気がします。

Posted by: uota | September 09, 2004 at 23:22

>uotaさん
実は私はまだ『鹽壷の匙』は読んでいないのです^^;
ただ、今回のエッセイで彼がかなり苦しんで小説に立ち向かってきた事が
よくわかりました。
今はどういう状態かわかりませんが、精神を病んでいるような事も書いてありました。
正直、『白痴群』改め『武蔵丸』という短編小説を読んだ時にはそれほど何かを感じたわけではないのですが、
今回、彼の他の作品も読んでみたいと思った次第です。

>当時は人生経験不足のせいか十分楽しめなかったもので・・・
年を重ねて初めてわかる事ってたくさんありますよね。
ま、妙にしたり顔の自分が寂しかったりもしますが・・・(笑)

今夜はこれから『停電の夜に』を読むつもりです。

Posted by: LIN | September 10, 2004 at 00:18

この記事読んで、
『業柱抱き』読んでましたよ。

Posted by: ベル | September 16, 2004 at 00:15

>ベルさん
読み終わりました?
よかったら、感想、教えてください。
『お厚いのがお好き』は全46回放送に対し20冊しか紹介されなかったので
『なおかつ〜』に残りを入れると予想。
続編が出るということは売れているんでしょうね。
いまだに本屋で平積みされているし・・・
この分だとDVDも発売されるかも。( ̄∀ ̄*)イヒッ

Posted by: LIN | September 16, 2004 at 09:41

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