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May 10, 2005

『雪沼とその周辺』by堀江敏幸

410447102X雪沼とその周辺
堀江 敏幸

新潮社 2003-11
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山あいの小さな町、雪沼。
そこに暮らす人々のさりげない日常を描いた7つの短篇。
ボーリング場、料理教室、製函工場、書道教室、レコード店、中華料理店…
主人公たちの職業も、ストーリーの重要な役割を担っている。

「レンガを積む」は音にこだわりを持つレコード店主の話。
主人公の蓮根さんは、学生の頃、東京のレコード店でアルバイトをしていた。
その蓮根さんの特技は…

客たちが棚を漁るときの手つきや背中の曲がりぐあい、顎のシルエットなども
ほぼ記憶していて、さまざまな印象を総合したうえで、
入荷したばかりの新譜だけでなく在庫のなかからそのときの天候や体調や
気分に合いそうな曲をさりげなくかける。
ジャズ、クラシック、演歌、歌謡曲、フォーク、シャンソン、なんでもござれだった。
むろんはずれることも多かったが、ぴたりと一致したときの反応を見るのは
他にかえがたい喜びだった。
ラベルとジャケットを読んでいく目の動きと音楽をとらえる耳の動きが
わずかにずれて、というか耳がぴくりと反応して指先にリズムが生まれ、
頬の筋肉がゆるんでくる。
あ、当たったかなと思った瞬間、客が顔をあげて、レジのほうに
ちらりと目をやる。
現在演奏中のレコードのジャケットが見えるようそこに立てかけておくからだ。
いくらかでも自尊心のある者はそこでジャケットを盗み見し、
最初から欲しかったようなふりをしてそれをさっと抜き出す。

これ、すごくわかる!
私もCDショップで「ん!」と思う音楽がかかると同じような反応をしてしまう。
でもって、演奏中と飾ってあるジャケット、ちら見するもの(笑)
そして、やはり「最初から欲しかったようなふりをして」買うのである。

新潮クレストシリーズがお好きな方にオススメの本。
ただ、知らない間に話が飛ぶので、「あれ、何の話をしているんだっけ?」と
もどって読み返さなければいけない箇所が結構あった。
私の読解力に問題ありか!?

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Comments

はい、堀江敏幸もクレストも好きです(笑
言われてみれば、共通するものがあるような気がします。
最新刊『河岸忘日抄』はさらに日本離れした物語ですよ。

Posted by: uota | May 10, 2005 at 23:00

わー,とうとう読まれたんですね。
私もクレスト好きです・・・といいつつあんまり読んでないけど(笑)。
じっくり味わって読みたいと思うと,反対になかなか手が出せなかったりします。
「河岸忘日抄」も積んであるんですよね・・・。

Posted by: せいこ | May 11, 2005 at 01:02

>uotaさん
読んでいるうちに、クレストっぽいなあと思ったのですが
本の最後にクレストの宣伝があったんです。
これは出版社もターゲットが同じだと考えているなと(笑)

>『河岸忘日抄』
河岸に係留された船で生活する男が主人公だなんて
なかなかおもしろそうです。
私はパリ好きなので『郊外へ』あたりもおもしろそうです。
いずれにせよ、読み続けたい作家ですね(*^^*)

Posted by: LIN | May 11, 2005 at 09:35

>せいこさん
やっと読みました!
昨年末に購入したのですが、2年前の本なんですね(笑)
最近、積んでばかりいると知らない間に文庫になるという事に
気づきまして、ただいま「積読本処理強化月間中」です。(^^;
しばらく本は買うまいと思うのですが、つい押してしまう
Amazonのボタン。
せいこさんが紹介されていた立川談四楼さんの
『大書評芸』も気になります。
福田和也絶賛ってすごいなあ。

Posted by: LIN | May 11, 2005 at 09:46

堀江敏幸のクレストっぽさは本文書体の共通にあるようです。彼は精興社明朝が好きっぽいです。

Posted by: 堀江敏幸至上主義者 | May 18, 2005 at 16:00

>堀江敏幸至上主義者さん
川上弘美の『古道具中野商店』も精興社明朝らしいです。
堀江さん、どうせなら紙も同じにしてあのばらばらの切り方にすればいいのにね。
ってあの切り方、なんていうの?

Posted by: LIN | May 19, 2005 at 10:18

> あの切り方
「アンカット」ですかね。つまり切ってないわけです。新潮は文庫も天を化粧断ちしてないですね。たぶん栞があるせいでしょう。このばらばらの切り方が新潮文庫独特の味わいを生んでいるような気もします。

Posted by: Rym | May 19, 2005 at 11:08

>Rymさん
アンカットっていうんですねっ!
( ̄▽ ̄)ノ凸彡☆へぇ~へぇ~

何か装丁っておもしろそうです。
本を買おうかなあ。
作品集じゃない方がいいなあ。
『装丁ing』というこの本はどうでしょう?
http://www.tosho-sekkei.gr.jp/

Posted by: LIN | May 19, 2005 at 14:07

『装丁ing』いいですね。わたしもほしいくらい。笑

Posted by: Rym | May 19, 2005 at 14:50

>Rymさん
それじゃ、おそろいで買いましょう。
たとえ本でもRymさんとペアだなんて
胸がときめきます~ヾ(・◇・)ノ ピヨピヨ

Posted by: LIN | May 19, 2005 at 17:31

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