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August 22, 2005

『コカイン・ナイト』byJ.G.バラード

4102271023コカイン・ナイト
J.G.バラード

新潮社 2005-06
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放火殺人容疑で逮捕された弟を助けるために
スペインはジブラルタルにある地中海沿岸の最高級リゾート地
エストレージャ・デ・マルにやってきた主人公。
弟はそのリゾート地にあるスポーツクラブの支配人だった。
他のリゾート地では、人々は人生に退屈し街は眠っているかのようなのに
なぜかエストレージャ・デ・マルだけは活気づいていた。
主人公は早速、調査を始めるが、だんだん街の裏側が見えてきて…

前半は、主人公が関係者に話を聞いたり、事件現場を調査したり
アメリカのサスペンスドラマにありそうなフツーの展開。
描写がうまいので、余計に本を読んでいるというより
ドラマを見ているような気分になる。
バラードはSF作家ということでもっと異世界の話かと思っていたこともあり
だんだんフツーの感じに飽きてくる。
そして中盤にさしかかったあたり…
「私たちの行く手に広がっているのは、この海岸地域で見られるとおりの
余暇社会です。
(中略)
それだけの人たちにどうやってエネルギーを与えるのですか?
何らかのコミュニティの意識を与えるにはどうしたらいいのですか?」

このあたりからやっとバラードが何を描きたいかがわかってくる。

日本も2007年に団塊の世代の定年退職が始まるということで
社会問題となっている。
しかし問題とされているのは、人材不足や経済だったりするのだが
暇になってしまった当人たちがどうなるかについては
あまり考えられていない。
日本にもクロフォードのような人が現れるかもしれない。
(クロフォードはこの作品の中で退屈している人々を
ある方法によって活気づかせます)
お年寄りをねらったリフォーム詐欺も、ある意味、
クロフォード的かもしれないなあ。
あとがきで高橋源一郎氏がこの本で行われる犯罪が
戦争に似ていると書いているが
私もそう感じた。
退屈した人々の前にある種のカリスマ性を持った人間が
現れた時、人は流されるのである。

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Comments

こんにちは、初めまして。
暇つぶしに色々なページを渡り歩いているうちにこちらにたどりつきました。僕は本はたいして読まず、どちらかというとマンガばかり読んでいます。でも、LINさんの読書感想を読んでいたらとても本が読みたくなります。面白くわかりやすいけど確かな洞察の力。最近、自分の頭で考えるってどういうことなんだろうなんて事をぼんやりと考えていたので、このページを見たら、なんか刺激を受けて考えこんでしまったです。通りすがりの者ですが、つい感じたことを書かせて頂きました。また、度々訪れたいと思っています。それでは。

Posted by: カルメラ | August 23, 2005 at 00:04

>カルメラさん
はじめまして♪
コメントありがとうございます。
>面白くわかりやすいけど確かな洞察の力。
こんな風にいっていただいてとても嬉しいです(*^^*)
実は私も今のペースで本を読むようになったのは
まだここ1、2年なんですよー。
本はドラマや映画とはまた違う楽しさがあります。
カルメラさんも是非、いろいろな本を読んでみてくださいませ。
カフカなんかいかがですか?
短い作品が多いですが、いろいろと考えさせられます。
またいつでも遊びにきてくださいね。

Posted by: LIN | August 23, 2005 at 15:29

TBありがとうございます。
 これからも、お邪魔させてください。

Posted by: indi-book | September 07, 2005 at 21:23

>indi-bookさん
こちらこそTBありがとうございました。
indi-bookさんが9月7日の記事で挙げていらっしゃる
半藤さんの『昭和史』、私も買ってはあるんですが
積んだままです(^^;
読まなくちゃ。
これをご縁に今後ともよろしくお願いします。

Posted by: LIN | September 08, 2005 at 09:28

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