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September 22, 2005

『堕落論』by坂口安吾

4101024022堕落論
坂口 安吾

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太宰治とセットで語られることの多い人なので
てっきりダメダメちゃんなのかと思ったら
とてもしっかりした内容のエッセイだった。
人生、悟りきっているという感じ。
ブルノー・タウト、宮本武蔵、小林秀雄、太宰治…
ばっさばっさと斬っていきます。
タウトが愛した日本の寺院をふんっといい
小菅刑務所を美しいという安吾。

小菅刑務所とドライアイスの工場と軍艦が、
なぜ、かくも美しいのか。
ここには、美しくするために加工した美しさがいっさいない。

そして、文学についても…

文学も美しく見せるための一行があってはならぬ。
どうしても書かねばならぬこと、書く必要のあること、
ただ、そのやむべからざる必要にのみ応じて
書きつくされなければならぬ。

太宰に関するエッセイでは「人間は生きることが全部である」とも
書いている。
美しくなくてもいいからとにかく生きる。
そうそう、人生なんてそんなに美しいものじゃない。
年とともに容貌も衰えてくる、記憶力も落ちてくる、気力も萎える。
が、そこでもうダメだと思わずに、とにかくじたばたしてみる。
それが「生きる」って事なのではないかと思う。

最近の小説に感じていた違和感も、
安吾のエッセイを読んですっきり。

小説におもしろさは不可欠の要件だ。

しかし単なる読み物のおもしろさのみでは文学ではあり得ない。

読物は文学ではない。

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Comments

今晩は!
懐かしいタイトルに吸い寄せられて参りました。
私の学生時代は、大学に入ったら取り敢えずは紐解くべき本、とされていたので、○○年前というのが恥ずかしくて書けないぐらい昔に、読みました。
意外にも面白くて、その後も安吾作品は何冊か読みましたが、内容を覚えているのは「不連続殺人事件」だけ―、ちょっと情けないですね。^^

新潟市で生活した事があります。
安吾の、文学に関する感性を育てた寄居浜は、横田めぐみさんを拉致する船が着岸した場所でもある事から、かなり複雑な心境に見舞われたものでした。

お邪魔しました。

Posted by: nemuri_neco | September 22, 2005 at 22:44

安吾が父、太宰が母です♪

父は子供の頃、錯乱して暴れている安吾さんに怯えていたそうです。(同じ街に住んでいた)

小説はあまり好きではないですが、評論?は好きです。太宰のことを同時代で一番認めていたひとの一人だと思います。太宰が先に死んだのは、さぞ無念だったでしょうね。

Posted by: take | September 23, 2005 at 09:33

>nemuri_necoさん
コメントありがとうございます(*^^*)
nemuri_necoさんは東野圭吾さんが
お好きなんですね。
私は『白夜行』と『幻夜』しか読んでないんですが
『白夜行』が大好きです。
『堕落論』はこんなに著名な本なのに
今頃、読んだ私の方が恥ずかしいです。
安吾の小説も読んだことありません。とほほ。
『不連続殺人事件』は純粋なミステリーなんですね。
ミステリー大好きなので是非、読んでみたいです。
新潟駅前ってコンパクトにまとまっていたような記憶があったのですが
今、調べたら川にはさまれた三角州みたいなんですね。
そして寄居浜はあんなに町からすぐだとは!
そんな場所で拉致が行われたなんてびっくりです。

Posted by: LIN | September 23, 2005 at 10:27

>takeさん
安吾といえばtakeさんなので「読んだよー」って
報告しようと思っていたところ♪

>錯乱して暴れている安吾さんに怯えていた
takeさんがそう書いていたの、憶えてます。
そのイメージがあったので、てっきりメチャクチャな人だと
思ったら、エッセイはとってもまじめでした(笑)

>太宰が先に死んだのは、さぞ無念だったでしょうね。
だと思います。
でも、太宰に関するエッセイで「生きなきゃダメなんだ」と
書いていた安吾が、晩年、錯乱したというのは
何とも皮肉ですね。

Posted by: LIN | September 23, 2005 at 10:42

LINさん こんばんは。
安吾さんのこと考えてみたら、人柄と生き方が好きなんだな、と気付きました。腕白小僧で通したような。人間にホレます。
ウチの餓鬼に安吾さんの息子さんの名を貰おうとしたこと思い出しました。却下されましたけど。
ただ時代のせいか教養がありすぎて、戦前の文士は漢詩なんかスラスラ作れて当たり前みたいだったらしいし、文章に漢文の調子よさみたいなの「堕落論」だけかもしれないけど、自然に出ちゃってるのではないかと。
それがなぜイケナイかって要領よく言えればねえ。思考が型にはまるOR粗くなる……?
腕白&駿足小僧についていけないだけかなあ。わかりません。でも小菅刑務所うんぬんって面目躍如。ワタシは支離滅裂。
長話でごめん。でも「黒後家蜘蛛」を発見して
大喜び!ヘンリー♡
これは海外ミステリーのところに書くべきなの?それであなたは気付くの?
ヒマできたらレス下され。

Posted by: Pnza | September 23, 2005 at 23:59

坂口安吾とLINさんが語り合えば毒の吐き
合いで大盛り上がり。などということを想像
してしまいました。

うーん、確か堕落論読んだけど、覚えてな
いや。でも、感想読むと面白そうだなあ。い
やいや、今は他の本の予定が・・・

Posted by: kyokyom | September 24, 2005 at 00:26

>Panzaさん
『片付けない作家と西の天狗』読み始めました。
すっかりショーノに毒されて普通の小説が
読めない体になってしまいました(笑)
安吾はねえ、ちょっと偉そうです(^^;
まあ、頭いいんだろうけど、
日本人には弱い太宰の方が好かれるかもね。

>戦前の文士は漢詩なんかスラスラ作れて当たり前
そうあるべきですよねっ!
最近、TVドラマとか見てると、ちょっとグラビアで人気でてきた女の子が
演技もできないくせに、ちゃらちゃら出てるじゃない?
作家もそうで、基礎的な教養もないのに
ちゃらちゃら小説もどきを書いちゃう。
素人とプロの境目がなさすぎですよ。

Panzaさんも『黒後家』お好き?
私も大好き~。
でもあれは、冬、スコッチを飲みながら読むって決めてるので
今は寝かしてあります。
もったいなくて読めないというのもある。
(だって5巻までしかないんだものっ!)
執事ものだと『比類なきジーヴス』もおもしろいそうです。
ヘンリーとはまったく違うタイプの執事らしいですが。
『黒後家』に関するコメントはよかったらこちらにどうぞ↓
http://linlinlin.cocolog-nifty.com/lin/2004/10/by.html
古い記事にコメントくださっても、サイドバーの
「最近のコメント」というところに表示されるのです。
でも、Panzaさんならどこに書いてくれても
全然OKですよーん♪

Posted by: LIN | September 24, 2005 at 10:32

>kyokyomさん
安吾と毒舌合戦、いいですねえ。
しかし、それには教養が~

>覚えてないや。
私なんて先月、読んだ本でも忘れてしまったものも
ありますよ。
「忘れてしまう本は、自分にとってそれだけのものだったんだから
忘れていい」
とどこかに書いてありましたから、それでいいんです。
と、自分にいいわけ(^^;

Posted by: LIN | September 24, 2005 at 10:39

私もこの本、昔読んだ記憶あるんだけど…。忘却。反省。
もう一度読んでみようっと。

今、菊地成孔の「東京大学のアルバート・アイラー」を読んでます。
めちゃめちゃ面白いです。わははは。
でもこの人がサックス吹きだなんて、全然知らなかったよ。

本て、面白いなぁ。読むのがもうちょっと、早かったらなって思う。


Posted by: きみ駒 | September 25, 2005 at 10:13

>きみ駒さん
本の内容って結構、忘れちゃうものですよね。
「忘れてはじめて身につく」ってどこかに書いてありましたけど。
菊池成孔、知識が豊富だよね。
『東京大学のアルバート・アイラー』はまだ買ってませんでした。
買わなきゃ。
っていうか『憂鬱と官能を教えた学校』も途中で
投げ出したままでした(^^;
そうそう、彼はサックス吹きです。
山下洋輔バンドでデビューです。
最新アルバムはジャズというより現代音楽ですね。
そういえば、この間、武田真治がTVでサックス吹いてたけど
あの人って実際のとこ、うまいの?

>読むのがもうちょっと、早かったらなって思う。
えー、そんなことないよ。
むしろ、この年齢になってからの方が
しみじみ味わえることって多いと思うよ。
読んでいて「ああ、これは20代じゃわからんかった」って
感じること多いもん。
きみ駒さんも、がんがん読んでくんなまし。
お仕事、お忙しいのかな?

Posted by: LIN | September 25, 2005 at 11:16

レスレスです。やあやあ。

ちゃうねん、ちゃうねん!>読むのが早かったら
「もっと若い頃に読みたかった」って意味じゃなくってね、
読むスピードが早いといいな、って話です。
私遅くってねー。なっかなか読めないのよ。
1日1冊のペースなら、がんがん読めるのになぁって思うの。

1冊の本をじっくり、というのもいいとは思うけど、
読みたい本がいっぱいあるんだもん。

ところで、この場を借りて、ちょっとつぶやいていい?
浅田次郎の「シェラザード」読んだのね。歴史長編小説。
皆さん、「良かった、感動した、泣いた」って言われてるんだけど、
見事に全然心に響かなかったの。歴史的な事実に「へぇぇ」って
思うことはあったんだけど、「壮大なお話」を淡々と読んでしまった。
そういえば私、浅田次郎ではあんまり泣けないのよね。

律子さんていうヒロインがいるんだけど、チャーミングな人なんだって全然思えなくって、最後に「ああ、貴女は弥勒丸(船の名前ね。説明割愛。すまん)自身だ。美しい方だ」って台詞があって、「えええ、そんなに素敵な人やったん?」て気付く始末。

ちなみに、リムスキー・コルサコフの「シェラザード」は大好きです。

つぶやき、長過ぎやね。ごめんねー。
武田真治よりは、チェッカーズのフミヤの弟さんの方が上手かったような。
遠い記憶なので自信なし。

Posted by: きみ駒 | September 25, 2005 at 17:42

角川を読んだので、新潮に収録されているエッセイも読んでみたいなと思いました。
予想外に結構骨太ですよね。

Posted by: るちあ | September 25, 2005 at 22:58

>きみ駒さん
>読むスピードが早いといいな、って話です。
いやん、早トチリしてしもうた~(^^;
ごめんなさい。
きみ駒さんも早く読めないタイプ?
私もです。
でもね、本に書いてあったけど
読みながら映像やイメージを出力させるタイプの人は
風景描写を読むのに時間がかかるらしいです。
つまり、出力させない人もいるってことですよね。
きみ駒さんはどうですか?
『シェラザード』は未読ですが、
(というか浅田次郎、一冊も読んだことなし)
みんながいいという本でもダメなのってあるよね。
特に「良かった、感動した、泣いた」という本ほど
ハズレが多い(笑)
音楽の「シェラザード」は私も好き好きー。
きみ駒さんがそこまでいう『シェラザード』
逆に読みたくなってきました(笑)

Posted by: LIN | September 26, 2005 at 08:34

>るちあさん
実は私も角川で読んだの(^^;
でも表紙は新潮の方がインパクトがあったので
そちらで紹介しました。
そうかあ、収録作品、違うんですね。
これは読まねば。

Posted by: LIN | September 26, 2005 at 08:48

>読みながら映像やイメージを出力させるタイプ
みんなそうだと思ってた!
違うんですか?
読みながら映画を撮ってる感じだと思った・・・。
私は、だから映画を必要としないのだとも。
ふーむ。

Posted by: take | September 27, 2005 at 10:52

>takeさん
保坂和志さんの『小説の自由』からの引用ですが
次の2つの文章を黙読してそれに要する時間を計ってみてね。

①先頭を行く牛が落としたばかりの、まだ湯気が立っている糞に
足を取られながら、乳房を重たい鐘のように揺らして牛の群が
歩いていた。
牛の息が静かな霜の降りた空気に立ちのぼり、
昇る朝日のりんとした輪郭をかすませた。
最後の牛が、肢の間に突進してきた茶色のねずみを
蹴り上げた。

②比較的やせた高地の方が、牧羊は盛んだった。
だが、牧羊の収益は徐々に薄くなり、
牧羊地も次第に野生の状態に戻りつつあった。
隣町からやって来る訪問客は喜んだが、
牧羊で生計をたてる農家にしてみれば、
これは悲劇以外の何ものでもなかった。

いかがですか?
イメージで考えるタイプの人は①を読む方に時間がかかり、
言葉で考えるタイプの人では、同じか②の方がやや早く読める。
また、イメージで考える人の場合、言葉で考える人と比べて
文章を読むのに、2~3割余計に時間がかかるんだそうです。

Posted by: LIN | September 27, 2005 at 12:11

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