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December 02, 2005

『五里霧』by大西巨人

406198392X五里霧
大西 巨人

講談社 2005-01
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「おおはしきょせん」じゃありません。
「おおにしきょじん」です。
若い子はそもそも巨泉を知らないか(笑)
三浦しをんが「大西巨人いいよー」と書いていたので
読んでみた。
講談社文芸文庫なので、文庫なのに1365円もする。
ところが、overQさんに教えていただいたのだが
ネットでただで読めるそうです。ショック_| ̄|○

2.26事件、戦争、召集、労働運動、差別、左翼文学、東欧民主化、
フェミニズム、エイズ……。
1931年から1992年までの、ある年ある月の出来事を手懸りに、
当時の時代相を鋭く抉り、人間の生き方を問い直す
12の物語で構成された短篇オムニバス「十二か月物語」。

「エイズ」は血友病である主人公とその妻の話。
二人が実に淡々としているので、
「エイズは大変な問題なんだ」といわれるより
心に残る話です。
大西さんは実際に、お子さんが二人とも血友病なんだそうです。

表題作「五里霧」は、ある強盗事件について発言した作家である主人公のもとに
二人の人物が訪ねてきて…という話。
これは私も読みながら、主人公と同じ発想をしたので、
知らず知らず、人間は差別をしてしまうものなのだなあと感じました。

「牛返せ」は未開放部落の話。
(もしかして今は、未開放部落って使っていけないことば?自信ない)
差別があるとは知ってましたが、部落民の人が、部落民でない人に、
買物の代金を直接、手渡すことが許されず、
店には代金受け取り用の箱が置いてあったという話には驚きました。

大西さんは86才の現在もご自身のHPで連載を続けておられます。
長生きしてこれからもいい作品を書いていただきたいなあと思います。

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tanpen

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Comments

LINさん、「短編小説の香り」ご紹介いただきありがとうございます。
まさか、大西巨人でくるとは思いませんでした。ちょっとびっくりです。
今、手元に大西巨人の『縮図・インコ道理教』があります。読むのが楽しみにです。

Posted by: uota | December 02, 2005 at 21:54

>uotaさん
わざわざコメントありがとうございます。
ステキな短篇をたくさん見つけていきましょうね。
おー、『縮図・インコ道理教』お買いになったのですね。
私はまず『神聖喜劇』が先かなあ。
uotaさんは『神聖喜劇』読まれました?
しかし長編はあらすじを書けばそこそこ記事が形になるけど
短篇は紹介がむずかしいですね。
今回の記事でこの本のよさが伝わったのか
とても不安(・∀・;)

Posted by: LIN | December 03, 2005 at 09:09

『神聖喜劇』が完結したときから、そのうち読もうと思っているのですが、巻数で怖気づいています(笑) 正月候補かな。
短編は、読むのは楽でも、書くのは作者も読者も大変かもしれないですね。

Posted by: uota | December 04, 2005 at 16:42

>uotaさん
確かに5巻は長いですよねー。( -.-) =зフウー
短篇を書くのはむずかしいと馳さんもおっしゃってましたね。
(週刊ブックレビューで)
そういえば馳さんの『不夜城』も読んでないしっ!
「短篇小説の香り」に次は短篇らしい短篇を紹介しますので
待っていてくださいね。

Posted by: LIN | December 05, 2005 at 09:01

大西巨人はやっぱり「神聖喜劇」。日本近代小説の金字塔です。

戦後文学者、と呼ばれた小説家たちがいて、今いちばん読まれてないし、たしかに読みにくいのは、この人たちでしょうw

70年代まではむしろ異常によく読まれていて、まさに重厚長大で深刻難解。
それは敗戦のインパクト、戦後昭和とともにあったので、その記憶が薄らいだ今、読まれなくなったのは当然といえば当然なのかもしれません。

「神聖喜劇」のほかには、
埴谷雄高「死霊」、
大岡昇平「レイテ戦記」、
武田泰淳「富士」、
野間宏「青年の輪」、
中野重治「甲乙丙丁」など。
どれもこれも長い長い。暗い暗い。

大江健三郎は戦後文学者の直系の子孫ですが、やっぱりあまり読まれないですね( ;∀;)

乱歩なんかは逆に、80年代後半からじわじわ人気がよみがえってきた人。戦前の気分を定着した代表的作家なのだけど。

いい作品と呼ばれるものって、意外に短期間で変化していくんだなと、これまで生きてきて、すごく思います。

以前、LINさんが取り上げておられた「ブンガク理論」なんかは、「価値が変化しちゃう」という事実を前提にしてるはず。
流行がめまぐるしく変わるのを目の前にして、では本当の文学的価値ってなんだろう、と考えるところから、理論が始まってる。
ただ、そんなことを思う人たちは、逆にいえば、流行に過度に敏感な人たちなんで、
「理論」自体もどんどん流行を生み出すという逆説に至っていますが(;・∀・)

Posted by: overQ | December 07, 2005 at 20:57

>overQさん
>本当の文学的価値ってなんだろう
そうなんですよ!
私もずっとそれを考えてます。
埴谷だって大江だって、いくら読んだ人が「いい!」といおうが
読まれなくちゃ意味ないわけで。
だからっておもしろければいいってものでもないですし。
>「理論」自体もどんどん流行を生み出す
確かにその類の本を読んでも、人によって
いってることが全然、違うんですよね。
でも、理論書はあくまでも「人は文学を読む」
という前提で書いてあるわけですが
平成14年度の世論調査では
まったく本を読まない人が37.6%いて、
読む人の「読む」にはビジネス書なんかも入ってるだろうから
果たして、今、文学を読む人ってどのくらいいるんでしょう。
またライトノベルや泣かせる本とか、
「ちょっとそれは文学じゃないんんじゃない?」という本は
これからもどんどん増えていくのだろうか。
なんてことをつらつらと考えています。

Posted by: LIN | December 08, 2005 at 10:07

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