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April 02, 2006

『夜と女と毛沢東』by吉本隆明・辺見庸

夜と女と毛沢東夜と女と毛沢東
吉本 隆明 辺見 庸

光文社 2006-03-14
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吉本隆明と辺見庸の対談集。
1995年から1997年にかけて
4回、行われた。
テーマは
「毛沢東」「夜」「女」「身体と言語」

「健全な昼の偽善のほうが、
夜の病より病理としては深い」
というあたりは、私も以前から感じていた。
そして今、夜が“昼”化している。
若者が夜桜見物で大騒ぎしたというニュースを見ていると
近所迷惑もさることながら
「夜の楽しみ方がわかってないな」と思う。
彼らは桜の樹の下には屍体が埋まっていることを
知っているのだろうか。

私は夜のバーの妖しさが好きだったけれど
最近は、バーもすっかり健康的になってしまって
深夜になっても居酒屋の雰囲気だ。
これは、深夜営業するチェーン居酒屋で飲み
そのままの空気でバーに来るからだ。
すっかりバーもつまらなくなってしまった。

「消費社会では身体・肉体が邪魔になってきている」
という意見も同感。
たとえば、現代人がコンピュータや携帯電話を奪われ
体ひとつで大地に立った時、いったい何ができるだろう。

<読書メモ>
64
弁護士だって検察官化しています。

70
夜型のときのほうが精神の範囲が広くて
それこそ善も悪もみんな許容できる。
人や文学というのはそういうものなんだ。

74
夜そのものが持つ情緒とか、殺意、凄み、
底暗さみたいなものも、
全部破壊されてしまったんでしょうね。

83
健全な昼の偽善のほうが、
夜の病より病理としては深い。

84
山手線などに乗るとカンボジアで戦争している奴より
よっぽど病的な目をしているんです。
目がですね、ドロリとしているんですね。
何をしたいのかわからない。
せいぜい会社へ行くだけ。

97
価値の空洞化した身体でも人が殺せるんだなとも
思うんです。

オウムでも、一流企業の新入社員でも
ノッペラボウの顔してる。

100
情報は消費財になりさがっていますから。

オウムは、ある種、エンターテイメント系の情報になっている。

101
テレビは言いよどむということを許さない世界ですから。

105
出自決定論はノンフィクション作品じゃ定番の手法ですが
実はまったく正確ではない。

107
例えば毎日毎日働いてて、朝も狂気じみた出勤をして、
すし詰めの電車の中で、一瞬、一秒か、あるいは0.01秒ぐらい
皆殺しにしてやりてえ、というふうに思う人間がいたって
おかしくないですよね。
それをちゃんとさらけ出さないと、オウムは短絡的に処理されて、
またさらに別のオウムが出てくるでしょう。

109
近代というものがタナトロジーを軽視し、
霊性を無視してきたから、とんでもないことになってしまった

115
物書きの総ノンポリ化

124
上野さんが以前、新聞か何かで皇太子と雅子さんの結婚を
評価していた。
なんだフェミニズムてのはこの程度のものか。

156
女性の性というものの中には、
男性に対する人類始まって以来の怨恨が
遺伝子に織り込まれている気がします。

164
恋愛を知ろうとすれば経験すればいいわけで

180
若い層にも「若年性市民主義ファシズム」を感じるんです。
ディファレントであることをかなり気にする。

208
消費資本主義社会の途方もない復元力。
評論家も世間も、歴史性さえも完全にのみこまれてしまっている。

217
いま、健全に見せかけているものって、すべていかがわしい。

220
国内では欲望開拓と消費刺激に血道をあげるしかない。
モノをこしらえるというのはいまや、この国の経済のあり方からいえば
犯罪に近い愚挙とされるわけです。

244
市民なんてこの日本にいやしないのです。
いるのは、ただ消費者だけです。

268
日本で70、80まで生きるってのは、
実は生かされているのであって、
人間としてかえって残酷なことではないのかと。

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Comments

LINさん、おはようございます~♪
吉本氏、辺見氏、好きです~。
辺見氏の「もの食う人びと」には開眼させられました。
こんな対談集、でてらっしゃるのですね。メモメモ~。
毛沢東の何たるか、今ひとつ理解できてないので、何ともですが、なぜ?あえて、毛沢東なのでしょう?
でもおもしろそうなので、読んでみたいです。

LINさんの言葉と、ピックアップされた言葉はどれも、うんうんとうなずいてしまいました。
(156には、少し違和感を感じましたが…)

闇があってこその光というものを、味わってこその人の深さですよね~。しんみり。

Posted by: pico | April 03, 2006 at 09:11

>picoさん
おはようございます♪
毛沢東の章は文芸春秋社の「本の話」という雑誌の中での対談のようです。
「毛沢東について対談してみませんか」という出版社側からの提案だったみたい。
辺見さんが、6年間、北京で特派員をしていたからというのもあるかもしれないです。
>男性に対する人類始まって以来の怨恨
picoさんはないですか?男への怨恨?(笑)
picoさんは愛の人だからなあ。
今、笙野さんの『水晶内制度』を読んでいるのですが
これはさすがの私もちょっとびっくり。
辺見氏のエッセイは是非、読んでみたいです。

Posted by: LIN | April 03, 2006 at 10:45

再びpicoです。すみません~。
男性への怨恨はないですね~。
無理やりひきずりだしたらひょっとしてあるのかもしれないですが、
遺伝子的には、自分にない部分を持つというところでは、ある種うらやましいとかそういった気持ちの方が強いですね。
なぜ、「?」となったかはですね。
怨恨という言葉、そのものよりも、男性からその言葉が出たことに対して、「?」だったのです。
言葉は鏡というように、その言葉をはいた人自身が、逆に女性にそう感じてるのかな?とも受け取れるかな~と。
女性軽視ともとれますし、はたまた、畏怖みたいなものなのでしょうか?
微妙な言葉だな~と感じました。

笙野さんの『水晶内制度』は、読んでみたいです!

Posted by: pico | April 03, 2006 at 11:12

>picoさん
この発言をした吉本さんは女性への恐怖があるそうです。
特にフェミニズム系の女性たち。
あの人たちは同じ女性である私も怖い(笑)
辺見さんが「男の方にも女性への恨みがあるのでは?」と尋ねると
「男は母性願望があるから恨みよりも甘えでしょう」とおっしゃっています。
女性軽視はむしろ辺見さんかなあ。
吉本さんはご家族を大切にしているから。
辺見さんはガールフレンドがたくさんいる遊び好きのオヤジという匂いがします。
辺見さんは女性に
「あなたは書くものもくだらないし、性格も最低だけど、
あっちのほうだけは凄い」っていわれたいんですって。
くだらない(笑)

Posted by: LIN | April 03, 2006 at 12:19

LINさんこんばんわ(^^)

83、同感です。
「善意をアピールする」というのがキモチワルイですね。
習慣化してしまった善意は表に出ないですからね。

Posted by: ねあ。 | April 03, 2006 at 22:59

 こういうブームって最近多いですよねぇ。
 僕は最近、花見は昼も夜もキライになってしまいましたよ。

 だって、あの群集の中に、ほんのりサクラ色の美しい花を愛(め)でてるひとなんかひとりもいませんもんね。
 ブルーのドキツイ色のシートを敷いて、大きな音でカラオケをしてるオヤジがいると思えば、流行のバックにハイヒールを履いて土に穴をあけてる女性もいたり。
 コレがブームとなったら、何も考えずに、本来の目的すら無視してただただ騒いでますもんね。

 こういうのを見ていると、 244 には激しく同意します。たしかにこの国には自分の頭脳を使っている市民なんていませんね。マスコミ等の宣伝文句に踊らされているマリオネットみたいな消費者ばっかりが見えます。宣伝では一般常識まではわざわざ言ってくれませんからね。そのあたりは抜けちゃっているんでしょう。

 ちょっと冷静に周りをみわたせば、自分も含めて気持ち悪いものばかりですね。
 ε-(ーдー)ハァ

Posted by: ろぷ | April 04, 2006 at 09:34

>ねあ。さん
善意のアピールはキモチワルイですね。
この項目で、吉本さんがいっているのは
「自分たちは正しい」と思いこむことは
ファシズムにつながるということのようです。
正しいことだけがまかりとおる“昼”に比べて
“夜”は何でもありで、許容範囲が広い。
たとえば、同性愛の危うさよりも、
同性愛をダメだということの危うさですよね。

Posted by: LIN | April 04, 2006 at 09:38

>ろぷさん
酒の飲み方がおかしくなってきたのは、
チェーン居酒屋が街のあちこちにできた頃からではないかと思います。
大学時代に、安い酒をがぶ飲みして大騒ぎすることを覚えてしまうんですね。
そのスタイルを花見にもバーにも持ち込むんですよ。
私は昔も今もチェーン居酒屋が大嫌いです。
まあ、花見は大きな公園に行かず、
近所に数本、桜が並んでいるような場所で愛でるのが一番ですよ。
日本人の消費のありかたってちょっと異常。
休日のデパート(滅多に行かないけど)は家族連れで殺気だっていてすごいし
限定品はどんな高価なものでも、すぐ売り切れるし。
日本は今、これといった輸出品もないから、お互いに消費しあって
国内経済をささえているってことなのかな?

Posted by: LIN | April 04, 2006 at 10:03

おっと。(^o^)
私の解釈が少し違っていたようですね。
でも、吉本さんの意見にも同感です。

Posted by: ねあ。 | April 07, 2006 at 01:08

>ねあ。さん
私の方こそすみません(・∀・;)
1、2行のピックアップじゃわかんないですよね。
でもねあ。さんのおっしゃっているような意味も
あるんだと思います。

Posted by: LIN | April 07, 2006 at 09:37

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