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June 09, 2006

『カスティリオーネの庭』by中野美代子

カスティリオーネの庭カスティリオーネの庭
中野 美代子

文藝春秋 1997-09
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浅田次郎の『蒼穹の昴』 の記事を書いた時に
四季さんに教えていただいた本。
現在、新刊では手に入りません。
カスティリオーネは『蒼穹の昴』の2章「乾隆の玉」に
宮廷絵師&イエズス会宣教師として登場します。
そして、この『カスティリオーネの庭』は
そのカスティリオーネを主人公とし
彼が、北京で過ごした日々が描かれています。

著者は北海道大学で教授をされていた方で
『西遊記』の翻訳など、専門は中国文学。
ポスト澁澤龍彦とも称される奇譚の旗手らしい。
そういわれてみると、この作品も幻想的で
澁澤の『高丘親王航海記』を思わせなくもない。
(しゃれこうべが「ラー、ラー、ラー」と追いかけてくるあたりとか)

~よかった点~
・カスティリオーネが実際に描いた絵が、
挿絵としてふんだんに使われている。
・アロー戦争でイギリス・フランス軍によって破壊された円明園だが
それが平面図や詳しい描写によって、当時の様子が再現されている。
・ちょっとしたミステリー仕立てになっている。
・当時、宣教師たちが置かれていた微妙な立場がよくわかる。

~イマイチだった点~
・著者が学者であるがゆえか、正確な記述にこだわるあまり、
ストーリーがもたついてしまっているような気もする。
・短いエピソードがいくつも連なって、ひとつの小説になっているのだが
突然、年代が前後するので混乱する。

~疑問点~
・浅田さんの『蒼穹の昴』は1996年4月発売。
中野美代子さんの『カスティリオーネの庭』は初出が1996年6月号の『文学界』
ほとんど同時ということは、どちらかが相手の作品に
影響を受けたというわけじゃないのでしょうか?
私はてっきり中野さんが、『蒼穹の昴』にインスパイアされて書いたと
思ってたので…
・『カスティリオーネの庭』ではホジャ一族の香妃よりカスティリオーネが
先に死んでいるが、『蒼穹の昴』では逆になっている。

現在の円明園
Enmeien


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Comments

LINさん、こんにちは! 読まれたんですねー。
あら、「蒼穹の昴」にインスパイアされた作品じゃなかったんだ!
私もてっきりそうなんだと思い込んでいました。
というか、そもそもLINさんにそういう印象を植え付けちゃったのが
私だったんでしょうね。ごめんなさいー。
検索してたら、こんなページを見つけました。
http://www.bookclubkai.jp/interview/contents/0060.html
どうやら「蒼穹の昴」は全然関係なさそうです(^^;。

カスティリオーネが実際に描いた絵が見れるの、いいですね。
見てみたーい。台北の故宮博物院に行ったら本物があるそうですね。
という私は、なんとなく水墨画っぽいイメージを持ってたんですけど…
…そんなわけはないですよね(^^;。
でも、イタリア的な絵が中国でどれだけ受け入れられるものかな…
やっぱり陰影に乏しい、どちらかといえばさらりとした(平面的な?)
中国らしい絵なのでしょうか?

Posted by: 四季 | June 11, 2006 at 05:29

>四季さん
ステキな本を教えていただきありがとうございましたー。
すごくよかったですよー。
四季さんも、古本屋などで見つけたら、是非。
中野さんのインタビューページ、ありがとうございます。
『蒼穹の昴』とは関係ないんですね。
偶然だとしたら、すごいですね。
お互い、「あっ!」と思わなかったのかしら?
カスティリオーネは皇帝から、陰影をつけないようにいわれてたようです。
水墨画ではないけれど、中国、中国した絵ですね。
http://www.d1.dion.ne.jp/~kalinka/china/yomoyama/bizin/kouhi.htm
だったら、皇帝も、西洋人じゃなく、中国人の画家に描かせておいたらいいやん、
と思いますが…(・∀・;)
おー、故宮博物院にある本物、見たいですねー。
でもどうして、中国本土じゃなく、台北にあるんだろ?

Posted by: LIN | June 11, 2006 at 10:06

LINさん、ふたたびこんにちは。
みつけたら読まなくちゃいけないですねー。
あ、カスティリオーネの絵、ありがとうございます!
ほんと中国中国した絵なんですねえ。平面的だ~。
それでも、普通の中国の絵と並べたら違う部分があるのかな…?
それとも、カスティリオーネの影響で、中国の絵が今の形に確立されたのかしら。
きっと、たとえ皇帝のお気に入りであったにしても、
敢えてカスティリオーネに描かせる何かあったんでしょうねー。

あ、故宮博物院が2つあるのは、第二次大戦中に蒋介石が
台北に宝物を避難させたせいですね。
文化的な価値の高いものから移動させたそうなので、
カスティリオーネの絵も評価が高いということになります。
もともと、満州事変や日中戦争の時に略奪から守るために
北京の故宮博物院から、南京やら上海に分散させられてたんですって。
…実は今の状態は思いっきり日本のせいということ…;;。

Posted by: 四季 | June 12, 2006 at 06:50

>四季さん
故宮博物院はそんな事情があったのですね!
カスティリオーネの庭も、第二次アヘン戦争の時に、英・仏連合軍によって
破壊されたそうです。
戦争ってホント、いかれてます。
>カスティリオーネの影響
ううむ、それはどうだろう。
逆にカスティリオーネの絵に、中国人画家に補筆させたりしてたようです。
多分、カスティリオーネたちは、画家であることはあくまでも手段で
キリスト教伝道が本来の目的だったので、
それでもそんなにプライドは傷つかなかったのかも。
いや、もちろん、多少は傷ついたと思うけれど、
キリスト教を否定された時などは皇帝に叩頭しつつ
手をぷるぷると震わせたりするのです。
>カスティリオーネに描かせる何か
銅版画を描かせる時には「そちのもともとの技が生かされるであろう」と
陰影をつけることを許しています。
(というか、陰影をつけないと銅版画は描けないのかしら?)

Posted by: LIN | June 12, 2006 at 09:34

中野美代子は面白いです。
この人は、それに、ヒトとして、とてもえらいと思います。
いろんな壁を突破してきてると思う。
きっと、そばで見たら、エネルギーをもらえるタイプの人。

「西遊記」については、彼女が世界的権威。
無謀なくらいの深読みを展開していて、すごいものです。
西遊記は八犬伝とともに謎の本で、見かけ以上にアジアの膨大な知識が埋め込まれています。

面白いのは、『仙界と ポルノグラフィー』という本のあとがき。
回文になっています。逆さまに読んでも、同じ文になる回文。
ものすごく長大な回文で、なんじゃ、こりゃーな気分になれますw

小説はいくつか書いておられて、できはまちまちですが、
オリエント幻想というジャンルが好きだと、やっぱり楽しく読めますね。

Posted by: overQ | June 16, 2006 at 21:00

>overQさん
おお、さすがoverQさん、これも読んでおられましたか!
この小説に関していえば、本業は学者なのにうまいなと思いましたが
そうですか、できはまちまちなのですか(笑)
ネットには「2005年からは『西遊記』を個人全訳として
完結を目指す意向である」と書いてあるのですが、
いまだ、その作業が続行中なのでしょうか?
アジアが中心になりつつある現代、中国文学ブームが来るかもしれないですね。
>西遊記は八犬伝とともに謎の本
八犬伝は地元なので、私も気になってるんです。
当時、海上交通がメインだったので、千葉は房総が入口。
だから南が「上総」で、北が「下総」なんですよね。
安房神社というのがあって、古代ではかなり由緒があったらしいんですが
どうも忌部氏の没落とともに、地位が低下しちゃうんです。
房総の歴史を一度、きちんと調べたいとは思ってるんですが
どこから手をつければいいのか…(・∀・;)

Posted by: LIN | June 17, 2006 at 10:36

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