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August 27, 2006

『空港にて』by村上龍

空港にて

村上龍の小説を初めて読んだ。
エッセイは読んだことがある。
私にとって村上龍の記憶といえば
Ryu's Barというトーク番組だ。
オープニング曲はバド・パウエルの「Cleopatra's Dream」だった。
アシスタントは岡部まりだ。
今、村上龍は、テレビ東京で、「カンブリア宮殿」というトーク番組の
メイン司会をしている。
アシスタントは小池栄子だ。
どうしても、私は岡部まりと比べて
知性も品も感じられないと思ってしまうのだった。
話がそれた。
この作品の内容は…

コンビニ、居酒屋、公園、カラオケルーム、披露宴会場、
クリスマス、駅前、空港。
日本のどこにでもある場所を舞台に、
時間を凝縮させた手法を使って、
他人と共有できない個別の希望を描いた短篇小説集。

“時間を凝縮させた手法”を説明すると
10分~20分くらいの(あくまでも私の感覚で)時間を
ひとつの短篇小説にしたてているので
まるでスローモーションを見るようである。
そして、カメラがズームインしたりズームアウトするような動きもある。
居酒屋で合コンをしながらも
女友達の足にとった虫を注意深く観察したりするのだ。
実際に私たちの普段の意識のあり方を
再現しようとしているんだと思われるが
「今、自分が見ているもの」と「昔の記憶」が
交互に現れるその動きが、どの作品でも単調な気がした。

あとがきで作者は「海外に留学することが唯一の希望であるような
人間を書こうと思った」と書いている。
それで思い出したのだが、80年代、片岡義男の小説でも
女たちは、日本の企業における女性の扱い方にうんざりし、
次々と、海外に留学していた。
ということは、80年代からすでに日本に希望はなかったということか。

27ページで主人公の兄がいう
「オヤジやオフクロや教師の言うことを信じたらダメだ。
あいつらは何も知らない。
ずっと家の中とデパートの中と学校の中にいるので、
その他の世界で起こっていることを何も知らない。
ああいう連中の言うことを黙って聞いていたら
おれみたいな人間になってしまう。」
というのは、その通りだと思った。
親を軽蔑してはいけないが、
親が教えてくれる世界は限られているということを
10代の若者は知っておくべきだ。
そして、自分の力で、広い世界を知る努力をするといい。

それにしても、山田詠美の『風味絶佳』を読んだ時にも感じたのだが
この作品に登場するような庶民と
山田詠美や村上龍の暮らしはあまりに違い過ぎやしないか。
だって、二人はワイン三昧で
ベロベログチョグチョの暮らしをしているに決まっている。
「クリスマス」に出てくる、主人公にペトリュスを飲ませる
ワイン通の映画監督が村上龍そのものじゃないか。
山田詠美や村上龍に庶民の気持ちがわかるとは
どうも私には思えない。
そしてやっぱり私は「あ、虚構ね」と思うのだ。

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Comments

>だって、二人はワイン三昧でベロベログチョグチョの暮らしをしているに決まっている。
わはは、面白すぎます。
別に悪口ではないのですが、龍氏はなんだか精神的に田舎者くさい。その意識の裏返しでいつも最先端のものを追いかけていないと気がすまない性分に思えます。
僕は龍氏の長編なら「コインロッカー・ベイビーズ」と「愛と幻想のファシズム」が好きです。短編は「村上龍料理小説集」と「走れ!タカハシ」です。でもある時期からなんとなく興味を持てなくなってしまいました。
>そしてやっぱり私は「あ、虚構ね」と思うのだ。
いや~、ちょっとドキッとしてしまいます。僕は虚構を(ものによってはですが)楽しんでいるから、LINさんがそう仰られるとちょっと後ろめたい。僕はLINさんならこの本をどう読むのだろう?ということを気にして読書することがあるのですが、まあ、考えても分からないので、結局自分なりに読んでいます。だってそれしか方法がないじゃん!(若干、キレ気味)ひらにお許しを。

Posted by: kyokyom | August 27, 2006 at 13:18

LINさん、こんにちはー。
「Ryu's Bar」の、ふてぶてしい表情の司会っぷりが懐かしくて、反応してしまいました。(笑)
そうかー、今は「カンブリア宮殿」といういう番組をやっているのですね。
こちらはテレ東は映らないのですよ(T-T)。
あ、でも検索したらBSJapanでも放送しているみたい。
今度チェックしてみます。(小池栄子も含め)

Posted by: TRK | August 27, 2006 at 15:14

>kyokyomさん
村上龍の本のご紹介、ありがとうございます。
今度、選ぶ時の参考にさせていただきますね。
>精神的に田舎者くさい
私はRYU'S BARのイメージしかないので、
逆に都会っぽいと思ってました!(笑)
>僕は虚構を(ものによってはですが)楽しんでいる
いやあ、それが小説を読む際の正しい姿だと思いますよ。
私はどうも、それができなくて…
今、佐藤亜紀の最新刊『小説のストラテジー』というのを読んでます。
また、いずれ、記事にしますが、
より深く本を読むにはどうしたらいいかというようなことが書いてあり、
これを読んでいると自分は小説を読めてなかったんじゃないか
という気がしてきましたよ。
なかなか興味深い本です。
kyokyomさんも書店にお立ち寄りの時にでも、ちょっと立読みしてみてください。
>結局自分なりに読んでいます。
>だってそれしか方法がないじゃん!
うーん、『小説のストラテジー』を読んでいると、
それがそうでもないんじゃないかという気がします。
正しい読み方というのが(そんなに四角四面ではないけれど)
あるのではないかと、そんな気がしてます。

Posted by: LIN | August 28, 2006 at 09:22

>TRKさん
>ふてぶてしい表情の司会っぷり
あはは、そうそう、村上龍っていつも不機嫌そう(笑)
でも、私、京極堂といい、不機嫌そうな男が嫌いではないです。
陽気な夏男より断然、好きです。
「カンブリア宮殿」は私もたまにしか見てませんが
おもしろいですよー。
村上龍が例によってぼそぼそ話していて(笑)
でも、小池栄子がどうも苦手なんですよねえ。
そうか!小池栄子も夏女の匂いがするからかも。
何しろ自分が太陽が苦手な夜女なので(太陽にあたると溶けちゃうの)
「夏っ!!!」って感じの人が苦手です(笑)
TRKさんはどうですか?

Posted by: LIN | August 28, 2006 at 09:43

あ、だめだな私も。山田詠美とか村上龍とか。小説は「虚構」の世界かもしれないけど、この二人の虚構は「こっぱずかしい虚構」(笑)山田詠美で思い出したけど、筒井康隆が直木賞候補になって、その年の受賞作が「ベットタイムアイズ」。で、彼は小説「大いなる助走」で「ベットタイムエイズ」という本を書いた女流作家に負けた作家が、審査員を逆恨みして連続殺人を犯す、という小説を書いたんだけど、虚構ならここまでどたばたしてくれないと、「こっぱずかしい」んです。なんだか。なんでだろ?

Posted by: Miwako | August 29, 2006 at 13:45

>Miwakoさん
そうそう、こっぱずかしい虚構(笑)
そういう意味じゃ、江國香織なんかもそうだなあ。
なんでですかね?
彼らが、「こういうものを出しておけば都会的だろう」と思って
登場させている小物や演出が田舎くさいとか?(笑)
そうそう、筒井康隆くらい、突き抜けてくれるといいんですよね。
中途半端にリアル感を出そうとして、かえって、「そんな奴、おらんやろ~」
という登場人物を作っちゃっているのかもしれない。
まあ、でも最近の日本の作家の小説の薄っぺらさは、
その村上龍や山田詠美どころの話じゃないですから。
日本の小説はどうなるのでしょう?

Posted by: LIN | August 30, 2006 at 09:03

LINさーん。コメントさせてもらいま~す。
いっつも図書館で、村上春樹の横に村上龍があるので、絶対目に入ってしまうのですが、その度イラっとしてました。
でも最近読んだ本に、春樹さんと龍さんは知り合いだって書いてあったので、ちょっと読んでみようかな~。と、思ってたところにこの記事だったので、ちょっと嬉しかったです。
1冊位は読んでみようかなあ・・?
読んで、これから更にイラっとするかもと思うと、なかなか手がでません。

Posted by: のえ | August 31, 2006 at 09:36

>のえさん
こんにちは~(*^^*)
コメント、ありがとうございます。
>その度イラっとしてました
この表現、おもしろいです~(笑)
のえさんは、村上春樹はお好きなのですか?
私は、村上春樹や村上龍がブームになった時は
遊んでばかりいたので(笑)、読んでないんですが
つい、2、3年前、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』と
『ねじまき鳥クロニクル』を楽しく読みました。
『海辺のカフカ』も読みたいとは思っているのですが
どうも少年(青年?)が主人公の物語が苦手で…(;´Д`)
村上龍の小説も、これが初めてなんです。
どうだろう?
時間にして10~20分くらいのことをひとつの短篇にしているので
スローモーションみたいで、ある意味、イラッとするかも(笑)
私はしなかったけど。
村上龍は『半島を出よ』(北朝鮮の反乱軍が福岡市を武力占拠する話)が
おもしろそうだなあと思いましたよ。

Posted by: LIN | September 01, 2006 at 10:02

>のえさんは、村上春樹はお好きなのですか?
好きかって聞かれるとよく分からないんですが、あったら読んでしまいますね。一般的にはそれが好きって事だろ。とかいう感じなんだと思いますが。
とにかく思い入れのある作家さんです。

>スローモーションみたいで、ある意味、イラッとするかも(笑)
どんだけイラっとするか楽しみながら読んでみようと思います(笑)
『半島を出よ』ですね。見てみま~す。

村上ブームっていつだったのか、知らない位世間に疎い私ですが、春樹さんにはまったのは5,6年前でした。

Posted by: のえ | September 01, 2006 at 11:35

>のえさん
村上春樹ブームというのは、私の勝手な考えですけど
やはり『ノルウェイの森』が出版された頃ではないでしょうか。
1987年ですね。
ところで、のえさんもブログ、やってらしたのね。
知らなかった~。
これから時々、のぞかせてもらうね♪
『幻夜』、お読みになったのですね。
私はどうしても、前作の『白夜行』と比べてしまって
『白夜行』の方がよかったなあと思ってしまうんですよね(;´Д`)
のえさんは、『白夜行』は読まれました?
まだでしたら是非~。

Posted by: LIN | September 02, 2006 at 10:18

ぶわははは☆斬られてる×2 ばっさり!w
村上龍はね~たぶんエッセイとサッカー以外、ほとんど読んでると思うけど、
∑(゚∇゚|||)はぁうっ!と思ったのは、初期のだけで
だんだん「迎合してんの?時代に?若者に??」
って思ってきちゃって、あんましそそられないんだよね…
(と言いつつ、一応チェックはしてみてるけど)
でも、同じフレーズがほぼ1ページ分も続く、独特(ある意味シツコイw)のフレーズに触れると
「おほほほほ、村上龍だ☆」と変な世界に引き込まれることもあったり。
そんなワケで、最近は遠のいてるけど
昔のお気に入りは「超電導ナイトクラブ」「イン ザ・ミソスープ」かなぁ…(とりあえず思いついたものだけ)

山田詠美は好きなんだけど、これまたやっぱし白状しちゃうと
「僕は勉強ができない」あたりから、
自分の美学みたいなのが前面に出て、正直鼻につく、って気がしてるんだよね。
エッセイでは意外と感じないので、その違いが何だか分からないんだけどさ。

で、「風味絶佳」の時も思ったんだけど、
「あ~やっぱし80年代のヒトなんだなぁ」
村上龍もそんな気がしちゃうんだ。
その昔は当たり前だけど「庶民」だったわけで、
その頃のコトが趣味趣向の基礎になってるんだな~って。
(だって山田詠美の世界みたいなことって、実際ぼんくらおいらのまわりでもあったもん>あくまで80~90年代のハナシw)

ヒトとしての基本とか、カッコいいこと、カッコ悪いこと、ってのは変わらないだろうけどさ、
時代とともにテイストっつーか、シチュエーションは変わっていくもん。
ヘタに「現在」と照合しようとするから、何とな~く違和感感じちゃうのかなぁ…

うぎゃ!すっげー長くなっちゃったよ!!
トラバにすれば良かったか?!!
…でも、せっかく書いたからこのまま迷惑顧みずupしちゃおw
LINさん、場所取っちゃってごめんに~
m(o・ω・o)mゴメンヨ

Posted by: ponsuke | September 03, 2006 at 23:39

>ponちゃん
そうだ!村上龍といえばponちゃんであった!
すごーい、ほとんど読んでるんだ。
私はこれが初めての村上龍でした。
割とフツーの小説だったよ。
時間の進み具合が遅いことをのぞけば。
作家と作品の主人公には、私小説以外は関連性がないっていうけどさあ
村上龍や山田詠美が書こうとしている主人公と本人たちが
あまりにかけ離れていると思う、私は。
初期の頃の作品は知らないけど。
山田詠美の『風味絶佳』で、彼のために料理を作る女の子の話が出てきたけど
それを読んでいる時も、あのメイクで長い爪のばした山田詠美が
「料理?けーっ!」って高笑いしている姿が思い浮かんじゃうんだよねー(笑)
>その頃のコトが趣味趣向の基礎になってる
ああ、そうかも~。
でも、また最近、バブルっぽくなってきたからいいのかもよ(笑)
>時代とともにテイストっつーか、シチュエーションは変わっていくもん
その通り!
10年前、かっこよかったことが、今、かっこ悪くなってたりするもんね。
作家はそのあたりを意識して書くべきだよね。
>山田詠美の世界みたいなこと
そうそう、あった、あった。
あの頃って、毎日、高級ワイン飲んで、フランス料理食べてたような気がする(笑)
>すっげー長くなっちゃったよ!!
いやいや、ウチは長文のコメント多いから、全然、平気よ~。
月曜日だねー。
お仕事ファイト♪

Posted by: LIN | September 04, 2006 at 09:17

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