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August 26, 2006

『牛乳の作法』by宮沢章夫

牛乳の作法

劇作家、演出家であり、
遊園地再生事業団主宰の宮沢章夫のエッセイ。

笑えると聞いていたのに、
全然、笑えなくて「あれ?」と思っていたのだが
途中から俄然、おもしろくなってきた。

●笑ったとこ

「お祭は何時までやってますか」という質問は
おかしいという話。(50)

映画『フィッシング・ウィズ・ジョン』で
ジョン・ルーリーとウィリアム・デフォーが釣りに行き
まったく釣れず、空腹と寒さによって極限状態に陥り
四つんばいになったり、あらぬ方向を見つめたりするのだが
最後に「こうして二人は死ぬ」という結論。(58)
み、見たい…
ジム・ジャームッシュやマット・ディロンも出てるんだよー。
今、検索したら、マット・ディロンとは雨を降らせなくてはいけないと
雨乞いの踊りを習いに行くんだって(笑)

宮沢章夫著『わからなくなってきました』と
赤瀬川源平著『わかってきました。』と
ビートたけし著『結局わかりませんでした』
の3冊を並べたさまを想像して。(100)
で、並べてみた。

わからなくなってきましたわかってきました。科学の急所ザ・知的漫才 ビートたけしの結局わかりませんでした
(『結局わかりませんでした』は文庫もありますが、ここでは単行本の表紙を使ってます)

二千字の原稿を書くことの多い著者が
二千字はどうも中途半端な量なので
こんな原稿を頼みに来る編集者はいないかと想像する。
「五文字でお願いします」(146)

●なるほどと思ったとこ

ベケットとてんぷくトリオは似ている。
「三人のうち、一人が立ち去ると状況が変化し、
帰ってくると、また元にもどる」(108)

かつて、「つぎはぎ」が貧しさの象徴だった時代があるが
今は、つぎはぎのある衣装を身につけた者が
テレビや舞台に登場しても冗談にしか見えない(124)

●紹介されていて読みたいと思った本
『モグラびど-ニューヨーク地下生活者たち』byジェニファー・トス

そして、著者が、何度も繰り返して書いているのが
演じるということのリアリティだ。
よく刑事ドラマでかっこつけて銃を撃つシーンがある。
それに対して映画『ソナチネ』の銃撃シーンは
無表情のまま、ただ立っている。
もちろん、後者の方がリアリティがある。
また、舞台で、俳優にチーマーを演じさせようとしても
演劇を志すような青年と
「1995年の渋谷のセンター街に漂う空気」は無縁であり
いくらピアッシングしようが髪を伸ばそうが、
そこには「チーマーを主観的に演じようとしている俳優A」が
いるに過ぎないと書いている。

これは、まさに、今、私が最近の小説に感じていることと
同じである。
最近の小説の登場人物は
「役柄を演じようとしている主役A」にしか見えないのである。

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Comments

LINさん、おはようございま~す♪
今日は、涼しい~ですね。もう、秋なのかしら?

「わからなくなってきました」
「わかってきました」
「結局わかりませんでした」
いや、これシュールでおもしろいです。

そして
>「お祭は何時までやってますか」という質問は
おかしい

今、まさに、お祭は何時に終わるのか?を調べようとネットを開いたところです。(どっきり・笑)

Posted by: pico | August 27, 2006 at 13:55

>picoさん
宮沢さんは劇作家で、
この本にも演劇論のようなことを書いていらっしゃるのですが
これは、映画にもつながる話じゃないかなあと思いましたよ。
お祭というのはパッションですから、そもそも時間を区切って
終わらせるというのがおかしな話なんでしょうね。
昔は、お祭って、寝ないで3日とかやってたんだろうし…
(これは私のイメージで、実際にそういうお祭があったかどうかは
不明 笑)
この話にはオチがあって、著者の知人が
「そちらのお祭は何時までやってますか?」と問い合わせたら
祭の本部にいた老人らしき人が
「なにいってんだい、ばかやろう。
祭に終わりなんてあるもんか。」と威勢のいい声で答えたそうです。
そのことばを信じて夜遅くに、その祭の場所に出かけてみると
静まりかえった町には灯の落ちた提灯が風にゆらゆらゆれ、
道の脇には、綿菓子の袋の残骸が落ちていたそうです。
まあ、人生ってそんなもんだよね(笑)

Posted by: LIN | August 28, 2006 at 09:31

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