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September 26, 2006

『純粋理性批判殺人事件』byマイケル・グレゴリオ

Junsuiriseihihan

19世紀、霧の立ちこめる街ケーニヒスベルクを
恐怖のどん底に陥れた連続殺人事件を追う若き判事に
助けの手を差し伸べたのは世紀の哲学者カントだった!
折りしもナポレオンはプロイセン侵攻を準備。
スパイ疑惑が政情を揺さぶる中、
跪いた死体に残された唯一の手掛かり「悪魔のかぎ爪」を追うカントは、
目撃者アルビノの助産婦に辿り着くが…。

「哲学者カントが連続殺人事件の謎に挑む!」と
書いてあったので、てっきりカントが主人公かと思ったのですが
メインはカントの弟子である予審判事ハノ・シュティフェニースでした。
カント自身は、晩年という設定なので、よれよれしてます(笑)
ケーニヒスベルクで起きている殺人事件の犯人は誰かという謎もあるのですが
主人公ハノにも、謎めいた過去があるという設定です。

駄作のような、そうじゃないような、ビミョーな作品。
「これ、カントが出てこなくてもいいじゃん」と思っていたのですが
最後の20ページくらいで「ああ、なるほど」と納得。
私はカント哲学を知りませんが、
カントの「人間とは道徳的良心の主体である」という考えに
もしも、晩年、カント自身が疑問を感じていたら…
という話なんじゃないかと思いました。

以下、ややネタばれ

カントと元従僕ランペの関係が気になりました。
ランペは実在した人物で本当に解雇されたらしいのですが、
二人の間に何があったのか。
この作品では、もっと、カントとランペの境界を曖昧にして
「ジキルとハイド」のように描いたらおもしろかったんじゃないかと
思いました。

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Comments

 僕としては本の内容より、このポスター?の、救いようのないキャッチコピーに惹かれます。
・この秋は~で決まり!
・今、なぜ~なのか?
・~は終わった!次は…だ!
・~から…へ
 ここら辺の言葉、もういい加減使う人がいないだろうと思って油断してると、突然遭遇して腰を砕かれます。

Posted by: LSTY | September 26, 2006 at 15:50

こんばんは。
>「人間とは道徳的良心の主体である」
もし、そのテーゼが作品の主題なら、タイトルは
『実践理性批判殺人事件』のほうがいいのでは。
どうせなら、『帝都物語』のように、若きフィヒテやシェリング、
ヘーゲルなどを登場させれば面白いのにと思ってしまいます。
ちょっと、時代に無理があるかもしれませんけれど。

Posted by: 多摩のいずみ | September 27, 2006 at 03:29

>LSTYさん
多分、このてのポスターのコピーは社内コピーライターもしくは担当編集者が
書くんじゃないでしょうか?
糸井重里に頼んだら、絶対「この秋はこのミステリで決まり!!」
とは書かないだろうなあ。
私は、もろ、糸井重里世代で、彼のコピーは西武の「おいしい生活」が有名なわけですが
その頃はいかにも「買って」というコピーはださいと思われていたわけです。
が、バブルがはじけ不況になり、企業はそんなおしゃれなコピーをいっている場合じゃなくなって
「安いよ、安いよ」と連呼するようになった。
ここにきて、今、プチバブルとかいわれていますが、
「この秋はこのミステリで決まり」は、不況時代の名残では?
といったら、かばいすぎ?(笑)

Posted by: LIN | September 27, 2006 at 11:04

>多摩のいずみさん
おー、「人間とは道徳的良心の主体である」は実践理性批判の方なのですね。
『帝国物語』!
同感です。
私も、ある程度、歴史的事実に即した小説なのかと期待したのですが
実在の人物は、実際に40年近く仕えたという従僕ランペと、
弟子ヤッハマンくらいですかねえ。
歴史ミステリーとしては、ちょっとビミョーです。
ただ、私は、カントに詳しくありませんから、
カントをよく理解している人が読むともっとおもしろいのかもしれません。
書店に立ち寄られた時にでもちょっと立読みなさってみてくださいませ。

Posted by: LIN | September 27, 2006 at 11:10

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