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March 31, 2007

『イエスの王朝』byジェイムズ・D・テイバー

イエスの王朝 一族の秘められた歴史

宗教学者の著者の25年に及ぶ研究をもとに、
歴史上の実在者としての人間イエスと
王家の血を引く一族の歴史、キリスト教の誕生を探求したノンフィクション。
発掘調査やDNA鑑定など、最新研究の成果も盛り込んだ
キリスト教研究の集大成。

「『ダ・ヴィンチ・コード』ファン必読」と書いてあるけれど、
『ダ・ヴィンチ・コード』とはまったくアプローチの仕方が違い
考古学や古文書といった、きちんとしたデータに基づいている。
内容も、突拍子もない話ではなく、
イエスがどのような一族であり、いったい、何をめざしていたかが書かれている。
ノンフィクションではあるが、イエスを主人公とした小説を読んでいるようだ。

ところで私は、洗礼者ヨハネと弟子ヨハネは同一人物だと思ってたよ!
(ユダだって、裏切り者のユダと、イエスの弟ユダがいるし、
この時代は同じ名前が多くて混乱する!)
弟子ヨハネは漁師なのに、どうしてダ・ヴィンチの「最後の晩餐」では
あんな優男風なんだろう?

以下、ネタばれ。
(この本を読んでみようかなあと思う方は読まない方がいいです)

現在のキリスト教の形ができあがったのは、パウロによってであり、
イエスがめざしていたものとは、まったく違ったものだった、
ユダヤ人ではあるが、ローマの市民権を得ていたパウロが行ったのは
キリスト教の脱ユダヤ教。
しかしイエスの教えはあくまでもユダヤ教に基づいたもの。
(イエスの発言や行動はダニエル書に影響されている)
しかしパウロは「イスラエルの民は神に選ばれた民である」という
ユダヤ教の律法は、キリストが地上に現れたことで、
もはや無効になったとしたのである。
また、イエスは「地上の神の国」をめざしていたが、
パウロは「神の国は天上にある」としている。

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March 24, 2007

『忘れられた日本人』by宮本常一

忘れられた日本人

子供がいるわけでもなく、何かをなしとげたわけでもない自分が
もし、今、死んだら、その存在はほとんどなかったと同じなのだ
と思う今日この頃。
この本を読んで、昔の人は何とたくましく淡々と
自分の人生を送っていたことよと、感動したのでした。

宮本常一はいわずとしれた日本を代表する民俗学者。
今、ちょっと調べたら、宮本は漂泊民や被差別民、性などの問題を
重視したため、柳田の学閥からは無視・冷遇されたとか。
柳田って嫌な奴。
その宮本の代表的な作品がこの『忘れられた日本人』
もっと学術的なむずかしい本かと思っていたけれど、
民俗学というより人間にスポットをあてた一冊。

「対馬にて」では、村の寄り合いが大層、仰々しく、
著者に古文書を貸すにあたり、片道一里の村から
一時間かけて、三人の総代が船でやってくる。
それぞれきちんと羽織を着て、扇子を持っている。
それから何時間もかけて、古文書を貸すかどうか
えんえんと話し合う。
結局、貸すことになり、総代が、張箱にしるしてある封印をきって
蓋をあけ、中の冊数をしらべて、著者に渡す。
一度、村へもどった総代たちは、翌日、またやってきて
帳簿を張箱にもどし封印し、それぞれの浦へかえっていくのであった。
何と愛らしい人々であることよ!

「名倉談義」では、4人の老人が、名倉村がどのように発展してきたかを
話しているのだけれど、小笠原さんというおばあちゃんが
その合間に、チクチクと、嫁や今の若い人の愚痴をいうのがおかしい。

一番、ガツンときたのが「土佐源氏」
内容は、極道の末に盲目の乞食に身を落した
土佐の檮原の橋の下に住む元馬喰の老人の話。
それはほとんど小説であるといってもいい。
(佐野真一の『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』によれば
この話は老人の作り話だったらしいけれど。
佐野真一も余計なことをしてくれる)

歴史には、何かをなしとげた者の記録しか残されないけれど
こういう人々だって確かに生きてきたのだ。

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March 22, 2007

『猫は殺しをかぎつける』byリリアン・J・ブラウン

Photo
猫は殺しをかぎつける
猫は殺しをかぎつける

グルメ記事の担当になった新聞記者クィラランは、
パーティーで昔の恋人と再会した。
彼女は陶芸家と結婚し、自分も女流陶芸家として活躍していた。
ところが、まもなく行方知れずになってしまう。
夫婦げんかが原因の家出と思えたが…

新聞記者クィラランが、飼い猫のシャム猫ココと協力して
事件を解決するというシリーズ。
現在、30作、発売されています。
この『猫は殺しをかぎつける』が第1作目だと思って買ったのに、
どうも早川書房がこのシリーズの中で初めて翻訳したのがこれで、
実際は第4作目だったようだ。
表紙には「新シリーズ第一弾」と書いてある。
まぎらわしいのう…

アガサ・クリスティファンとしては、
ミステリーとしての質は、やや落ちるといわざるをえない。
もたついているというか、キレがないというか。
犯人も動機も殺人方法も何だかなあという感じ。
アガサ・クリスティを読み終えた後のようなスッキリ感はない。
じゃあ、何がおもしろくて読むのかというと、
もう、ひたすら、シャム猫のココの賢さ&愛らしさにつきる。
ただ、私も相当、猫は賢いと思っている方だけれど、
「ここまで猫がするか!?」という気はする。

はまる人ははまるらしいけど、
もう2、3冊、読んだら、はまるのかなあ…

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March 20, 2007

『天皇家の“ふるさと”日向をゆく』by梅原猛

天皇家の“ふるさと”日向をゆく

梅原猛が戦後歴史学最大のタブーに挑戦。
南九州の旅で記紀の神話を実地検証。
ニニギノミコトはどこに降りたのか。
海幸・山幸伝説の隠された意味とは。
そして神武天皇を東征の旅に駆りたてた事情とは。
国産み・国造り物語が解きほぐされ、
天皇家誕生の隠れたドラマが明らかに…。

天孫の降臨された高千穂については二説あり、
宮崎県西臼杵郡高千穂町説と霧島説がある。
私は、どうも、どちらの土地もピンとこない。
天孫降臨が、朝鮮から弥生人が渡ってきたこと意味するとすれば
上陸の地は、北九州が自然であろう。
どうして、ぐるっとまわって、鹿児島または宮崎なのか…
弥生人が南から来たっていうのならわかるけど。
もしくは、すでにその頃、北九州には大きな勢力があって
そこを避けて、南九州に上陸したとか。

神話に詳しくない私は、今回、この本を読んで、
アマテラスオオミカミ、海彦山彦、神武天皇のつながりが
よくわかってよかった。
アマテラスオオミカミの孫がニニギノミコト。
ニニギノミコトが降臨し、狩猟採集民の一族と結婚して
生まれたのが海幸彦と山幸彦。
その山幸彦が漁労民の一族と結婚して生まれたのが
ウガヤフキアエズノミコト。
その子供が神武天皇となるわけである。

カラー写真満載の文庫本で629円は安い。
この本によれば、レヴィ=ストロースが日向神話にただならぬ愛情を
示しているそうだ。
レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』も読んでみたい。
読書中は、宮本常一の『忘れられた日本人』。

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March 17, 2007

西行、西行、西行

Saigyo

“西行”関連の本を3冊、読みました。

西行とは、平安時代の歌人である。
が、もともとは武士で、実家もお金持ちで、
時の天皇、鳥羽院にもかわいがられていたエリート。
しかし、23才の時に出家。
出家の理由は、白河院の愛妾にして鳥羽院の中宮であった
待賢門院璋子への恋に苦しんだゆえともいわれているが、
実際のところは謎。

西行が生涯、愛した待賢門院璋子は鳥羽院との間に崇徳院を産むが
実は、鳥羽院の祖父である白河院の子であるといわれていて
鳥羽院は崇徳院を「叔父子」と呼び忌み嫌う。
後に崇徳院は、同じ待賢門院璋子の子である後白河法皇と対立し
保元の乱が起こるのだが、戦いに敗れ、讃岐に流される。

待賢門院璋子は、白河院が崩御すると、華やかな人生が一転。
夫、鳥羽院は、璋子に代わって藤原得子(美福門院)を寵愛し、
得子が産んだ生後三ヶ月の躰仁親王を立太子させ
崇徳天皇から皇位を譲り受けさせる。
その後、得子を標的にした呪詛事件が相次いで発覚し、
それを裏で引いているのが待賢門院璋子と世間で騒がれ、
結局、璋子は法金剛院において落飾(出家)。

すごい、どろどろっぷり(笑)
西行を主役にして大河ドラマができるんじゃないだろうか。

さて、私が読んだ3冊とは…

西行
白洲さんが西行ゆかりの地を旅しながら、西行について解説する紀行文。
地図や写真も満載で、読んでいて楽しいです。
こういう歴史がからんだ紀行文をもっと読みたい。
何かオススメあったら教えてください。

白道
こちらも西行について書かれたノンフィクションですが
時々、筆が走りすぎて、小説タッチになってしまうところがあり
フィクションとノンフィクションの境が、非常に曖昧です。
また、白洲さんと比べると、寂聴さんの文章は、西行への想いが激しすぎて、
やや暑苦しいです(・∀・;)
西行のエピソードは、白洲さんの『西行』とかなり内容が重複するのですが
在原業平、徐福、安部貞任のことなど、西行とは直接かかわりのない人々の
エピソードがおもしろいです。

西行花伝
こちらは西行の生涯を描いた小説です。
21章に分かれていて、章ごとに語り手が変わります。
いやあ、とにかく、長かった。(707頁)
文章自体は読みやすくて、さらさら読めます。
これを読んで、西行の生涯についてはよくわかったのですが、
どうしてもわからないのが西行の考え方です。
果たして、心を無にする仏教と、心を浮き足立たせる歌は
矛盾しなかったのか。
ところどころに、西行の仏教に対する考え方が書いてあるのですが
どうも、それが私の心にカチッとはまらないんですよねえ…
アミニズムに近い考え方なのかなあ。
西行が熱心に語りつづけた「歌による政治(まつりごと)」というのも
よくわからず…
でもこの『西行花伝』は、いいです。
オススメ。

<自分メモ>
P.338
P.516
P.537
P.566

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March 06, 2007

辰巳芳子さんについて再び

Tatumi_yoshiko

この間も記事にしましたが、
昨夜、NHKで、日本のターシャ=テューダー、辰巳芳子さんの一年を取材した番組が
再放送されました。
先月、ハイビジョンで放送した時、録画しそびれたのでよかった!

辰巳芳子、82歳。
今、最も注目を集める料理家である。
「あなたのために いのちを支えるスープ」と題した著書は
12万部を越える大ベストセラー、
あなたのために―いのちを支えるスープ
自宅で開く料理教室は予約が3年先まで埋まっている。
番組は、鎌倉の自然の移ろいとともに、辰巳さんの四季を見つめた。
春、豊かな自然の恵み、菜の花、竹の子、ふき。それらを自ら摘み取り、
手間をかけた仕事で食卓に運ぶ。
灰汁の抜き方、味の入れ方、保存の仕方、母から娘へ代々受け継がれてきた
繰り返しの中に、辰巳さんがこだわる“生き方の基本”がある。
夏、辰巳さんの元に一通の手紙が届く。
600人を越える入院患者に、辰巳さんのスープを飲ませたいという
高知市の病院からだ。
実現すれば、辰巳さんの30年来の夢が叶うことになる。
実は、辰巳さんのスープは病いを受け嚥下困難に陥った父のために、
8年間毎日工夫を重ね作り届けた経験が元になっている。
手間を重ねた料理は、食べる人が“愛されている”ことを
確かに感じる“励まし”なのだと語る辰巳さん。
さらに秋、冬と季節を追いながら、日本の食文化の豊かさと、
料理を通して人生の心得を説く辰巳さんのことばを記録する。

その辰巳さんが数日前、ラジオ番組のNHKカルチャーアワーで
ダシについてお話されていました。
シェーンハイマーという学者が、実験で、ラットの腸に、牛乳から採ったタンパク質を
入れてみると、腸が懸命に働く様子が見えたそうです。
ところが、牛乳から採ったものと同じ成分で合成された化学物質を入れても
ラットの腸は反応しない。
だから、インスタントのだしではダメですよと、辰巳さんはおっしゃるわけです。
(ある時、辰巳さんの講演会に金銭的余裕のある奥様が200人集まったそうですが、
その中で、だしを取るという人は30人だけだったそうです!)
食べるということは、エネルギーの補給だけではなく、日々、細胞を刷新しているんだそうです。
いい加減な食事をしていると、いい加減な体になってしまいます。
コンビニのおにぎりとか、冷凍食品とか、命が感じられない食べ物は
私はダメだと思ってます。
(アンチファーストフードの私は、この間、チャールズ皇太子が
「マクドナルドは禁止すべきだ」と発言した時は、胸がすっとした)
かくいう、私も、ダシはついつい、インスタントを使ってしまってました。
今後は、かつおぶし、煮干、昆布で、きっちりダシを取ろうと思います。
TVの方では、辰巳さんの家の畑で育った菜の花を軽く炒めて味付けたものを
ご飯の上にのせた、菜の花丼がおいしそうでした。
私も今後、辰巳さんのように丁寧な食事づくりを心がけていきたいと思いました。

辰巳さんの新刊が出ました↓
辰巳芳子慎みを食卓に―その一例

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March 02, 2007

たらいまわしTB企画第31回 「積読の山も誇りと本の虫」

Tara31

ひさしぶりにたら本に参加します。
(たら本はどなたでも参加できます。
テーマにそった記事を書いて、主催者さんの記事にTBしたり、
他の参加者さんの記事にコメントしたりしてみてね♪)

今回の主催者は「時々、読書感想文。」の菊花さんです。

今回のお題は「積読の山も誇りと本の虫」
買ってきて本棚に積まれたままの本、
読みたい本リストにメモしてあるけど未入手・未読の本など、
現在の貴方の積読本(の一部)を教えてください。
えー、そしてですね、せっかくの「たら本」第31回ですので、
一首(三十一文字/五七五七七)詠んでください。
三十一文字のお題は勿論「積読の山も誇りと本の虫」です。
回答に挙げた本のどれか1冊に関する歌でも、
積読本全般に関する歌でも、勿論本の虫に関する歌でも◎です。

私が、昔から、人生のモットーとして掲げているのは、
「やらずに後悔するなら、とにかくやってしまえ」です。
恋愛も「この人とつきあったらどうなるかしら?」と悩む前に
まず、つきあってしまう。
ダメなら捨てる(笑)
もちろん、私が捨てられる事も多々あり(^^;
本も同じで、ぴっとひらめいたら、ぱっと買う。
でも、いつまでたっても読まない本は、定期的にブックオフに売る。
欲しくなったら、また買えばよい。
そういうわけで、積読本は、そんなにない方かもしれません。

本棚の前に立ち、ぱっと目に留まったのはこの3冊。

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オレンジ色の本は『ファン・ゴッホの手紙』
ファン・ゴッホの手紙
山口智子さんがナビゲーターを務めた「ゴッホへの旅」という番組で
山口さんが、常に旅で持ち歩いていたのがこの本。
とてもステキな番組でした。
あの時代、パリの芸術家は日本に憧れていて、
浮世絵も大変、人気があったって知ってました?
山口智子の旅シリーズ 山口智子 ゴッホへの旅 ~私は、日本人の眼を持ちたい~
山口智子の旅シリーズ 山口智子 ゴッホへの旅 ~私は、日本人の眼を持ちたい~

青い本はボリス・ヴィアンの『サン=ジェルマン=デ=プレ入門』
サン=ジェルマン=デ=プレ入門
第二次世界大戦直後のサン=ジェルマン=デ=プレは
ピカソ、カミュ、コクトーをはじめ大勢の文化人が集まった場所。
その中心的存在が『日々の泡』の作者、ボリス・ヴィアンでした。
この本は彼が綴った、サン=ジェルマン=デ=プレのドキュメント。
写真・図版も300点収載されてます。

白い本は金井美恵子さんの『切りぬき美術館 スクラップ・ギャラリー』
スクラップ・ギャラリー 切りぬき美術館
ルノワールの犬から李朝民画の虎まで、
古今東西、金井さんの大好きな絵のスクラップ・コレクション。
ながめていると、まるで金井さんをガイドにして美術館をめぐっているみたい。

この3冊は、たまに手に取って、ぱらぱらとながめるのだけれど、
じっくり読むという感じにならないですねえ。
いつか、読むのかしら?

そして、しばらく読書から遠ざかっていた私が、ひさしぶりに手にした本が
白洲正子の『西行』。
西行
今のところ、和歌はさっぱりなのですが、
白洲さんが西行の足跡を訪ねて旅をする様子や西行の生き様などが
読んでいて、楽しいです。
そして新たに西行、白洲正子がらみとして、3冊、購入。
『かくれ里』by白洲正子
かくれ里

吉野・葛城・伊賀・越前・滋賀・美濃などの山河風物を訪ね、
美と神秘のチョウ溢(チョウイツ)した深い木立に分け入り、
自然が語りかける言葉を聞き、日本の古い歴史、伝承、習俗を伝える。
能・絵画・陶器等に造詣深い筆者が名文で迫る紀行エッセイ。

『白道』by瀬戸内寂聴
白道

『西行花伝』by辻邦生
西行花伝
この2冊はどちらも、西行の生涯を小説にしたもの。
他にも、井上靖や小林秀雄も西行について書いてますね。
西行好きの母から、貸してもらった『西行を歩く』という本も
写真がいっぱいでなかなかよいです。
西行を歩く―さすらいの歌僧を追う旅

そして、今回のお題には、「一首、詠んでください」という宿題が~(^^;
私は歌はまったくの不調法ですので、西行の有名な歌を…

ねがはくは花の下にて春死なん
そのきさらぎのもち月の頃

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