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May 01, 2007

たらいまわしTB企画第33回「悪いやつ」

Tara33

たら本第33回が始まりました。
どなたでも参加できるTB企画。
テーマに沿った本を紹介する記事を書き、
主催者さんや他の参加者にトラックバックやコメントしてね。
※たら本とは

今回の主催は読書記録の檀さんです。

古今東西、文学にかかせない存在、それが「悪いやつ」です。
こんな人に(ものに)惚れたらとんでもないことになる、
とわかっていても、どうにも止められない。
「悪いやつ」には、いつも幻惑されます。
それは、自分が暗黒面に踏み込むことがないと
信じている故の憧れなのか、
自分の中に悪の芽があることを知っているからの恐れなのでしょうか。
ともあれ「悪いやつ」が魅力的であればあるほど、
物語は鮮やかになるのです。
ということで、あなたの「悪いやつ」を教えて下さいm(__)m

このテーマ、よくよく考えるとむずかしい。
たとえば、ミステリーの犯人は、みんな「悪いやつ」かというと
そうとは限らない。
悪いことをする正当な理由があったりする。
その理由が小説の“キモ”なわけで、動機なき殺人の場合は、
犯人及びトリックをあてるただのパズル型ミステリーになってしまう。
またミステリーはその性質上、犯人をわからないように書くため
犯人の“悪”の部分を徹底的に書けないということもある。
小説の世界の「悪人の中の悪人」はどこにいるのか?
ノワールか?

●『冷血』のペリー・スミス
冷血

カンザス州の片田舎で起きた一家4人惨殺事件。
被害者は皆ロープで縛られ、至近距離から散弾銃で射殺されていた。
カポーティが5年余りの歳月を費やして綿密な取材を遂行した
ノンフィクション・ノヴェル

今でこそ、この事件の犯人のような人間は珍しくなくなったが
作品が発表された当時は、かなり衝撃的だったのではないだろうか。
先日、アメリカのバージニア州で32人が殺された銃乱射事件があったけれど
アメリカという国は、誰もが憧れる国という華やかさの裏に
そういう暗い一面があり、
それはアメリカ国民にうまく隠されいてるんだと思う。

●『血と骨』の金俊平
血と骨〈上〉血と骨〈下〉

昭和初期に済州道から大阪に出稼ぎにきた金俊平。
その巨漢と凶暴さで極道からも恐れられていた。
女郎の八重を身請けした金俊平は彼女に逃げられ、
自棄になり、職場もかわる。
さらに飲み屋を営む子連れの英姫を陵辱し、強引に結婚し…

作者の父親がモデルといわれている。
映画ではビートたけしが演じてました。
妻や子供に暴力はふるうし、自己中心的だし、愛人は作るし
滅茶苦茶な人ではあるのですが、
昔の女を助けたり、優しいところもある。
「悪いやつ」とはちょっとニュアンスが違うかなあ…

●『幻夜』の美冬
幻夜

1995年冬、阪神淡路地方を襲った未曾有の大震災。
その混乱の中で叔父を手にかけた水原雅也は
一人の女性・新海美冬と出会い、
運命に導かれるように東京へ向かう。
美冬がビジネスで次々に成功をおさめる一方、
美冬に魅入られた雅也は彼女の影として動く存在となる。
そこに、美冬の過去に疑念を抱く刑事・加藤が現れ…。

私は『幻夜』の関連作品といわれている『白夜行』の方が好きなんだけど
「悪いやつ」といえば断然、こちらの主人公の美冬。
『白夜行』の主人公である雪穂はまだ同情の余地があった。
しかし美冬はひたすら金だけの女。
本当に「悪いやつ」というのは男より女なのかも。

●『罪と罰』のラスコーリニコフ
罪と罰 (上巻)罪と罰 (下巻)

鋭敏な頭脳をもつ貧しい大学生ラスコーリニコフは、
一つの微細な罪悪は百の善行に償われるという理論のもとに、
強欲非道な高利貸の老婆を殺害し、
その財産を有効に転用しようと企てるが
偶然その場に来合わせたその妹まで殺してしまう。
この予期しなかった第二の殺人が、
ラスコーリニコフの心に重くのしかかり、
彼は罪の意識におびえるみじめな自分を発見しなければならなかった。

本当は『カラマーゾフの兄弟』を紹介したかったんだけど、
「悪いやつ」といったら、やっぱりこちらかなあと。
でもよくよく考えたら、ラスコーリニコフは罪の意識におびえるわけだから
「悪いやつ」とはまた違うかなあ…。
「悪いやつ」ってもっと、しれーっとした感じだもの。
「悪いやつ」の定義がわからなくなってきた…(・∀・;)
「古今東西の小説の中で誰が一番“悪いやつ”か」ランキングをやってほしいです。

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Comments

LINさん、こんにちわ。
私は『白夜行』の方をリストアップさせてもらいました。
悪の度合いでいえば『幻夜』ですけど。
『白夜行』の時はまだ同情する部分ありましたもんね。

>「古今東西の小説の中で誰が一番“悪いやつ”か」ランキング
私も気になりますわ。

Posted by: むつぞー | May 02, 2007 at 14:25

ごめんなさいっ
なんかしらないけどコメントが三つもいってますね。
スミマセンが削除して下さい(ぺこり)

Posted by: むつぞー | May 02, 2007 at 14:29

>むつぞーさん
今、むつぞーさんのところにコメントしてきたところ♪
『白夜行』は『幻夜』より断然、好きなんですが、
「悪いやつ」といったら、やはり美冬かなあと。
雪穂は亮司を愛していた時期があったと思うんです。
でも、美冬はホント、男を利用するだけという感じ。
美冬はあんな形で金持ちになって楽しいのでしょうか?
「誰が一番“悪いやつ”かランキング」おもしろいでしょう?(笑)
そうだ!
「本を読む人々」で、小説の世界での何でもランキングコミュを
作ってみたらどうでしょうか?

Posted by: LIN | May 02, 2007 at 14:33

LINさん、こんにちはー。
あ、そうか、ノワールという手があったか!
と、今頃思いました。
でもノワールの傑作ってあんまり知らないんですよね。
ノワールと言われて今思い浮かぶの「不夜城」ぐらいだし。
あれ、でも「白夜行」「幻夜」もノワールに入るのかしら?

「冷血」、近いうちに読もうと思ってます。
ノンフィクションノベルって、どうでした?
読んでる分には普通の小説みたいな感じですか?

なんだか無性に「キング・オブ・悪人」の
出てくる小説が読みたくなってきました。
他の方のエントリも楽しみですね。^^

Posted by: 四季 | May 02, 2007 at 17:32

>四季さん
ノワールですが、wikipediaには
“小説、映画の一分野。闇社会を題材にとったもの。
あるいは犯罪者の視点から書かれた小説。
日本では馳星周などが代表的作家。
また馳は東野圭吾の「白夜行」をノワールの傑作と評した。”
って書いてありました。
桐野夏生の『OUT』『グロテスク』あたりもそうかしら?
>ノワールの傑作ってあんまり知らない
好きな方はお好きですよね、このジャンル。
私もそんなに積極的に読むジャンルではないかなあ。
>ノンフィクションノベルって、どうでした?
ルポタージュ的なものを想像されちゃうかもしれませんが、
取り扱うテーマが実際に起こった事件というだけで、中身は小説です。
カポーティーによれば
「フィクションの技術を駆使した物語風の構成でありながら
中身は完全に事実という形式"であり、
著者の存在をまったく感じさせないものであるべき」
という定義のようです。
>キング・オブ・悪人
小説の世界の「キング・オブ・悪人」って誰なんでしょう?
気になっちゃって、気になっちゃって(笑)

Posted by: LIN | May 03, 2007 at 08:49

こんばんはー(^ ^)

ノワールですか…。。読まないです…
なんだか生々しいのが苦手なのかな、自分。
カポーティのノンフィクションノベルの定義。なるほどです。
>キングオブ悪人
気になりますー!(笑)
私も皆様のエントリ、楽しみです(^ ^)

そういえば去年、「冷血」の犯人とカポーティをモチーフにした映画がかかってまして。
気になっていたのですが見ないまま…(汗)
悪人自体よりも、それを描く側の人間のほうが冷酷にならないと
悪い奴の物語って書けないのじゃないかなあ、と。

Posted by: 天藍 | May 03, 2007 at 21:20

>天藍さん
ノワール、私も最近、読んでないです。
読むのに体力、使うんですよねえ…
読み終わった後は、ぐったりです。
>皆様のエントリ、楽しみです
GW中のせいか、みなさんのエントリ、遅いですねえ。
>「冷血」の犯人とカポーティをモチーフにした映画
フィリップ・シーモアが主演の「カポーティ」のことかしら?
あれは私も見たいなあと思ってました。
>それを描く側の人間のほうが冷酷にならないと
確かに作家というのはみな、どこか冷酷なところがあるような気がしますね。

Posted by: LIN | May 04, 2007 at 10:17

このたびは、ご参加ありがとうございます。
「冷血」まさに悪いやつですね。あれは、読んでるとだんだんカポーティのほうがどうかしてるんじゃないかと思ってくるから、不思議です。
「心臓を貫かれて」マイケル・ギルモア、のほうがずっと健全ですよね。内容は、さておき。
ビートたけしといえば、「鬼畜」の主演もしてましたね。あれも、悪いやつなんだけど、日本の悪いやつはなんか♪貧しさに負けた~♪な感じがありませんか?

Posted by: 檀 | May 05, 2007 at 11:56

>檀さん
主催者、おつかれさまです~。
『冷血』って結局、ペリー・スミスというのはどんな人間だったのか
よくわからなかったりしますよね。
今回のお題はいつになく考えさせられて、とても楽しかったです。
「悪いやつ」って、TVドラマなどから想起される画一的なイメージがありますが
そもそも「悪いやつ」って何者なんだろう?って考えだすと興味深い。
たとえば、歴史においては、勝った者によって負けた者が「悪いやつ」に
されてしまったり…
楽しいお題を本当にありがとうございました。
>日本の悪いやつはなんか♪貧しさに負けた~♪
あはは(笑)確かに。
そもそも、日本の文学ってすべからく「貧しさに負けた~」的じゃないです?(笑)

Posted by: LIN | May 06, 2007 at 09:57

うちも最初は「冷血」を取り上げようかなと思ってたんです。
カポーティはハイスミスと友人です。
たぶん、自分と似たものをパトリシアに感じたんじゃないでしょうか。

なんか、後ろ暗い、隠し事をもってるようなところが、二人ともあります。
ともに50年代アメリカで同性愛者であったこともある。
でも、それがカミングアウトできるようになったとしても、
どこか「ちがう人」なんでしょう。
社会の中でつねに自分を異物であると感じてしまうタイプ。

二人とも作家だけど、ジャンルにうまく収まれない。
文学の中でも、ぽつんと異物になってしまうところがあるようです。
どこにいても「ふるさと」じゃなく、「ガイジン」になってしまう感じ。

カポーティは「冷血」以降、作品が完成できなくなって、
酒に飲まれるような人生を送る。
ハイスミスは文字通り外国に逃げて、なんとか生き延びたようですが。

社会の中で、自分がじつは異物なんじゃないかと感じ、
それを隠しとおさねばならないと思ってる彼らにとって、
「悪」の問題は切実だったにちがいないです。

Posted by: overQ | May 06, 2007 at 12:43

LINさん、こんにちは。
『幻夜』がありましたね! 私も同じく『白夜行』の方が好きなのですが、悪女っぷりでいうなら『幻夜』の美冬が上ですものね。
彼女はこの先どこに行くのか、気になります。

Posted by: | May 06, 2007 at 15:54

>overQさん
最新記事の「柏餅」、とってもおいしそうです。
overQさんの住む街は、おいしい和菓子の店がたくさんありそうで
うらやましいです。
「悪いやつ」ってスケープゴートなのかもしれません。
今、ヴォネガットの『猫のゆりかご』を読んでいるのですけれど
“政府に反逆しなければよい宗教は作れない”し
“敵対する聖者がいなければ政府の存在価値はない”んだそうです。
政府と宗教は表裏一体。
善と悪も同じで、ふたつは一蓮托生なのではないか。
なんてことを思ったりしてました。
ハイスミスの晩年の作『世界の終わりの物語』なんかは、
ヴォネガットの作風と似ているような気もするのですが…
それとも、そういうSFが流行していた時代なのか。
『世界の終わりの物語』は読んでみたいです。

追伸
最近、たら本の出席率が低下してますねえ(笑)
みなさん、記事を書くのはいいけれど、
全員にコメント返しするのがしんどいのかなあと思ったり。
何か新しい企画を打ち出してみるとか?

Posted by: LIN | May 07, 2007 at 12:16

>高さん
美冬は悪い奴ですよねえ。
私も『白夜行』の方が好きです。
『幻夜』は『白夜行』の続編のようにいわれていますが、
私にはどうしても、雪穂と美冬は別人としか思えないです。
3作目が出るらしいという噂があるようですよ。
次はどんな悪女が…((;゚Д゚)ガクガクブルブル

Posted by: LIN | May 07, 2007 at 12:33

LINさん初めまして!
『幻夜』がちょっと気になりました。普段あまり読まないジャンルなので面白そうです。
海外ものも滅多に読まないので参考になります!
(あらすじをのせるのは重要だなと別の意味でも勉強。)

Posted by: | May 09, 2007 at 18:21

こんばんは。
“真の悪いやつ”とは、なんなのか考えてしまいましたね。
悪くても愛されるキャラと悪くて非道なキャラは、
同じ“悪い”でもかなり雰囲気違うでしょうし・・・。

>日本の悪いやつはなんか♪貧しさに負けた~♪
という意見に賛成です。
そんな哀愁が結構好きな私です♪

Posted by: tomekiti | May 09, 2007 at 21:56

LINさん、こんばんは。
『冷血』のペリー・スミスがいましたね~。
わたしは旧訳で読んだんですけれど、「あの善良な一家は、いままで自分に冷たくしてきた世間の尻ぬぐいをするめぐり合せだったんだ」みたいな発言にぞっとした覚えがあります。
映画『カポーティ』もおもしろかったですよ。あれを観ると、カポーティのがよっぽど冷血だと思ってしまいますけれど。
そしてわたし、ドストエフスキーはことごとく未読です。翻訳もの好きなのにお恥ずかしいかぎりです…。

Posted by: マオ | May 09, 2007 at 22:42

>葵さん
『幻夜』をお読みになるのなら、是非、先に『白夜行』を♪
昨年(だったかな?)、ドラマ化されましたが、原作はあれとはまったく別物ですから。
あらすじをのせるのは結構、めんどくさいのですが(笑)
じゃあ、自分が、本について検索してまず何が知りたいかというと
あらすじなんですよね。
海外ものでも、おもしろい作品ありますので、葵さんも是非、チャレンジしてみてね~。

Posted by: LIN | May 10, 2007 at 08:59

>tomekitiさん
>“真の悪いやつ”とは、なんなのか考えてしまいましたね
ホント、今回のお題は考えさせられました。
“悪人”ではなく“悪いやつ”ということばには、
「憎めない」という要素が含まれているような気もするのですが
私が今回、チョイスしたのは“悪人”が多いです。
tomekitiさんは、恩田陸作品をたくさん、読んでいらっしゃるのですねー。
私は『三月は深き紅の淵を』はすごく好みだったのですが、
『光の帝国~常野物語~』を読み『ネクロポリス』で恩田陸とは決別しました(^^;
でも、正直、気になる作品もまだまだあるので、tomekitiさんの恩田陸作品の記事、
とても参考になりました。

Posted by: LIN | May 10, 2007 at 09:13

>マオさん
>いままで自分に冷たくしてきた世間の尻ぬぐいをするめぐり合せ
ホント、ぞぞぞとします。
でも、最近の殺人事件はこういった理由のものが増えているような気がします。
怖ろしいことですけど…
「カポーティ」ご覧になったのですねー。
あれは見てみたいなあと思ってるんです。
>翻訳もの好き
翻訳もの好きでしたら、ドストエフスキーは是非。
想像していらっしゃるより、とっつきやすいと思います。
『カラマーゾフの兄弟』なんて良質のミステリーといっても過言ではないです。
もしかすると、私が苦手意識を持っているシェークスピアもそういう部分があるかもしれないですね。
近いうちに、シェークスピア、チャレンジしま~す(笑)

Posted by: LIN | May 10, 2007 at 09:21

LINさん、こんにちは。
>ミステリーの犯人は、みんな「悪いやつ」かというと
そうとは限らない。
そうなんですよね。徹底的な「悪」より「事情のある悪」の方がむしろ多いような気がします。
人間は多面性を持っていることを描こうとしたら、どうしてもそうなってしまうんでしょうね。
>本当に「悪いやつ」というのは男より女なのかも。
すごく説得力があります(笑)

Posted by: NARU | May 10, 2007 at 22:16

>NARUさん
こんにちは~♪
ミステリーの犯人って、単純に「悪」として書かれてしまうことが多いけれど
彼らにも幸せな子供時代や楽しかった頃があったはずなんですよね。
本当は、犯人が「悪」にいたった事情を知りたいのだけれど、
そこを語ってしまうと、ミステリーという性質上、犯人がわかってしまうので
書けない。
ミステリーのジレンマですね。
>すごく説得力があります(笑)
でしょ?(笑)
絶対、女の方がワルだと思います。
実行犯は男でも、その裏側にもっとワルな女がいるみたいな。

Posted by: LIN | May 11, 2007 at 10:53

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