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June 30, 2007

『古代からの伝言 日出づる国』『時の娘』「恋愛小説家」「ダロウェイ夫人」「ドラマ・エリザベス1世」「恋に落ちたシェイクスピア」

Lin

脳内メーカー
によると私の頭の中はこうなっているらしい。
ちなみに本名だとこうなる↓
Photo

●今週読んだ本

古代からの伝言 日出づる国古代からの伝言 日出づる国
八木 荘司

角川書店 2006-09-22
売り上げランキング : 91085

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1999年~2004年まで、産経新聞で連載されていたもので
「日本書紀」の世界をリアルに再現したシリーズ。
全7冊。
この巻では、崇峻帝弑逆から推古天皇の死までを描く。
崇峻帝弑逆の実行犯である駒と河上娘との悲恋物語がよかった。
駒は自分のことを「やつがれ」というので、
同じく「やつがれ」という巷説百物語、又一役の渡部篤郎の顔が
浮かんだ。
この時代の朝鮮半島における高句麗、百済、新羅、任那の関係が
とてもよくわかった。

『時の娘』byジョセフィン・ティ

英国史上最も悪名高い王、リチャード三世――
彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか?
退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに
歴史書をひもとき、純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。
歴史ミステリの名作と知られ、
高木彬光の『成吉思汗の秘密』や『邪馬台国の秘密』に影響を与えた。

すばらしい作品だと思うが、
そもそもリチャード三世が悪人扱いされていることを
知らなかったので、それほどラストに衝撃は受けなかった。
しかし、つくづく歴史というのは
勝者によって書き換えられてしまうものなんだと思った。
「歴史=真実」だと簡単に思ってはいけない。

●読書中

悪党芭蕉悪党芭蕉
嵐山 光三郎

新潮社 2006-04-22
売り上げランキング : 57879

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芭蕉は「三百年前の大山師」だった!(by芥川龍之介)
弟子は犯罪者、熾烈な派閥闘争、句作にこめられた危険な秘密……。
神格化され、〈宗教〉となった芭蕉の真実の姿を描く、
今まで誰も書けなかった画期的芭蕉論。

ココで立ち読みできます。
今、半分、読み終わったところだけれど、おもしろい!

『ユリシーズⅡ』byジェイムズ・ジョイス
他の本に浮気しつつも、ちょっとずつ読んでいる。
今は、スティーヴンスが図書館で滔々とシェイクスピア論を
述べているところ。

●新たに購入した本
『古代からの伝言 水漬くかばね』by八木 荘司
今週、読んだ『古代からの伝言 日出づる国』の続き。

『ユリシーズⅢ』byジェイムズ ジョイス

『古都』by川端 康成
「本を読む人々。」というSNSの「古今東西の名作を読もう」トピックの
7月の課題本。

『気になる部分』by岸本 佐知子
名翻訳家によるデビューエッセイ集。

『Self-Reference ENGINE』by円城 塔
書評家、大森望氏が「今年の日本SFベストワンは
これか伊藤計劃『虐殺器官』」と絶賛している。
『虐殺器官』も気になるが、タイトルからして苦手だ。

『芭蕉 おくのほそ道―付・曾良旅日記、奥細道菅菰抄』by松尾 芭蕉
今、嵐山光三郎の『悪人芭蕉』を読んでいるので。

『湘南の暮らしと家―ビーチサイドスタイル』by湘南スタイルマガジン編集部
いつかは海のそばで暮らしたい。
と、思っている。

『夜の来訪者』byプリーストリー
kotaさんのブログ週刊ブックレビューで紹介されたいたので。
ある裕福な実業家の家庭で娘の婚約を祝う一家団欒の夜に
警部を名乗る男が訪れ、ある貧しい若い女性が自殺したことを告げ、
全員がそのことに深く関わっていることを暴いていく。

『暗号解読 上』byサイモン・シン
今月、文庫化されました。
ぎんこさんオススメ。

●今週見た映画

恋愛小説家恋愛小説家
ジャック・ニコルソン

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2007-05-30
売り上げランキング : 16200

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甘く切ない女心を描き、書いた本はすべてベストセラーという恋愛小説家メルビン。
しかし実際の本人は、異常なまでに潔癖性で神経質の嫌われ者。
周囲に毒舌をまき散らし、友人は誰もいない。
そんな彼がある日、ウェイトレスのキャロルに淡い恋心を抱くが・・・。

メルビンを演じるジャック・ニコルソンが優しい雰囲気なので、
嫌われ者という役が似合っていない。
『恋愛適齢期』でも遊び人の実業家という役どころだったが
あれも似合っていなかった。
ジャック・ニコルソンは映画後半のメルビンのような
誠実な役柄が似合う。
メルビンが小説家ゆえ、日常会話はうまく話せないのに、
書き言葉でならうまく話せるところがおもしろかった。
日本における短歌のように、
欧米ではそもそも女性を口説く時は
詩(文語体)を用いていたのではないか。
それを思えば、メルビンの口説き方は本来の形といえる。

ダロウェイ夫人
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ヴァージニア・ウルフの同名小説を映画化。
第一次世界大戦終結から5年後のロンドン。
国会議員夫人のダロウェイは、ある日30年前の輝くような青春の日々を思い返す。
ロマンティックなピーターとの波乱に富んだ人生ではなく、
政治家リチャードとの平穏な生活を選んだ現在の人生。
やがて彼女はその選択が正しかったのか自問してゆく。

原作を読んでから見た方がいいかも。
原作もよかったけれど、この映画を見てますます原作が好きになった。
ちょうど私自身も青春の日々を思い返す時期にあるからかもしれない。
この作品を見て「詩は美しい」と気づいた。
詩はやっぱり英語だと思った。
DVD化(日本語版)されていないのが残念。

ドラマ・エリザベス1世~愛と陰謀の王宮~

16世紀、ヨーロッパの覇権を握り、
大英帝国の基礎を築いたイングランド女王エリザベス1世は、
死ぬまで独身を通して、バージン・クイーンと呼ばれた。
そんな女王に取り入ろうとする男たち。
そして、背後に渦巻く陰謀。
愛と陰謀に揺れたエリザベス1世の半生を、王宮を舞台に描く。
番組紹介はコチラ

先ごろ、NHKで放送されたものは吹き替えだったのが残念だ。
主演は映画「QUEEN」でエリザベス2世を演じたヘレン・ミレン。
エリザベス1世の愛人としてレスター伯とエセックス卿が登場するのだが
私はレスター伯との日々が好き。
愛があったように見えるから。
30才も離れた年下男エセックス卿に夢中になるのは
正直、理解できない。
私は昔も今も年上男好きでそれはこれからも変わらない。
きんさんぎんさんのように100才になっても
「好みの男?年上がいいねえ」といいたい。

恋に落ちたシェイクスピア コレクターズ・エディション恋に落ちたシェイクスピア コレクターズ・エディション
グウィネス・パルトロウ ジョン・マッデン ジョセフ・ファインズ

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2003-11-21
売り上げランキング : 3028

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16世紀末のロンドン。
スランプに陥っていた劇作家シェイクスピアは
オーディションにやって来た一人の若者トマス・ケントを追って
とある屋敷へたどり着く。
そこには以前、芝居の最中に目を留めた
美しい女性ヴァイオラの姿があった。
シェイクスピアと彼を信奉するヴァイオラはたちまち恋におちてしまう。

もっと重厚な映画を想像していたが、軽いタッチのコメディ映画だった。
衣装や舞台が中世風というだけであって、
物語そのものは現代の恋愛映画だといっていい。
シェイクスピアとヴァイオラも、苦悩もなく簡単に寝ちゃうし
そんなところも現代風。
タイトルにだまされた感じ。
コメディ映画として見る分には悪くない。

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June 23, 2007

『充たされざる者』『さようなら、いままで魚をありがとう』『ほとんど無害』『迷宮パノラマ館』『かくれ里』

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昨夜、NHK「プレミアム10」でユーミンのライブをやっていた。
音楽プロデューサーの寺岡呼人が企画したもので
ゆず、桜井和寿も参加していた。
何だかんだ20代の頃、一番よく聴いていたのはユーミンなので
ライブを見ているうちに、その頃の自分がよみがえってきて
ユーミンの歌ではないが「あの日に帰りたい」と思ってしまった。
しかし、ゆずファンの方が「ユーミンという人がよかった」と
ネットに書いていらして
「もう若い人にとってユーミンは“ユーミンという人”なんだなあ」と
寂しい気持ちになった。
一方で私にとってもゆずは“ゆずという人”だったりするわけだが…
どうして人は、今の音楽でなく、若い頃に聴いた音楽に
強くひきつけられるのだろう?
その直後が「爆笑問題のニッポンの教養」という番組で、
爆笑問題が東京理科大学薬学部の田沼靖一教授と
「ヒトはなぜ死ぬのか?」をテーマに語っていた。
田沼教授「遺伝子にはあらかじめ死がプログラムされている」
太田「では、遺伝子を操作すれば不死も不可能ではない?」
田沼教授「できたとして不死に何の意味があるのか?」
ちょうどユーミンの番組を見て「若い頃にもどりたい」と
思ったところだったので考えさせられる内容だった。

●今週読んだ本
『充たされざる者』byカズオ・イシグロ
充たされざる者

世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。
「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、
日程や演目さえ彼には定かでない。
ライダーはそれとなく詳細を探るが、
奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り……。

帯に「イシグロがカフカを超える」とあるが
それはあまりにも不遜なキャッチコピーじゃないか?
確かにカフカの『城』に似ている。
が、それも前半まで。
町の人々がみな人間的過ぎるし、ストーリーも明確で、
作品説明にある「悪夢のような不条理」は感じない。
一方、『城』の主人公Kは最後まで外来者であり続ける。
村人は人間であって人間でないようなまさに悪夢のような存在。
と、カフカファンである私は帯のキャッチコピーにカチンとして
カフカと比較して読んでしまったが
そうじゃない読み方ももちろんあると思う。
ネットで検索したらボリス、シュテファン、クリストフ、ブロッキーを
それぞれライダーの少年期、青年期、壮年期、老年期ととらえた感想があった。
え、そうなの?
私はこの4人はまったく別のキャラクターに思えたのだけれど…(・∀・;)

『さようなら、いままで魚をありがとう』byダグラス・アダムス
『ほとんど無害』byダグラス・アダムス
さようなら、いままで魚をありがとうほとんど無害

銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。
どこをとっても平凡な英国人、アーサー・デントは
最後の生き残りとなる。
アーサーはたまたま地球にいた宇宙人フォードと
宇宙でヒッチハイクをするはめに。

というストーリーの『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズ第4弾&第5弾。
これでシリーズをすべて読み終えたことになる。
シリーズが後半になるに連れて、コメディからシリアスな内容に移行し、
熟成されていく感じがよかった。
作者の年齢とも関係があるのかもしれない。
ファンは1~3巻を正篇、4&5巻は「三部作の4番目と5番目」と呼び
分離して考えるようだが、
私は4&5巻あっての『銀河ヒッチハイクガイド』なんじゃないかと思う。
4巻ではアーサーが恋をして、5巻でその恋を失ったアーサーが
サンドイッチ職人として幸せそうに暮らしているところ、じーんとした。
ラストの評判が悪いようだが、私は嫌いじゃない。
映画も近いうちに見たい。

『迷宮パノラマ館』by芦辺拓
迷宮パノラマ館
著者が若い時に書いた短編と最近の作品であるショート・ショート、
講談・ラジオ台本を集めた作品集。
帯には
「ミステリ、SF、ホラー、講談…奇才・芦辺拓が贈るひとり雑誌」
と書いてある。
「太平天国の乱」と「クトゥルー神話」を組み合わせた
『太平天国の邪神』がよかった。
ショート・ショートはやはり短すぎて物足りなかった。
芦辺拓が好きという方以外にはオススメできないかも…

『かくれ里』by白洲正子
かくれ里

白洲正子が朽木谷、菅浦、久々利といった
知る人ぞ知るかくれ里を訪ねる紀行エッセイ。
深い木立にかこまれた神社に残されている古面、
政変で都を追われた天皇たちの悲しいエピソード、
山奥に残る古代信仰のあと。
しかしこの作品が発表されたのは1971年。
もうこれらの土地も観光客によって荒されてしまっているだろうか。
日本書紀、万葉集、太平記といった日本の古典をもっと読み、
京都周辺の詳細な地図を手元に置いて再度、読みたい。

P.11
バスから押し出される観光客は、信仰とも鑑賞とも、
いや単なる見物からも程遠い人種に違いない。
ただ隣の人が行くから行く…(中略)
仏像や古美術も…(中略)不断の尊敬と愛情によって
磨かれ、育ち、輝きを増す。

P.16
伎楽はおそらくギリシャから西域を経て、中国に渡り、
朝鮮経由で、七世紀の頃、日本に将来された芸能だが、
外国では滅びてしまったその伝統が、日本の片田舎に
こうして生き残っていることに…(中略)
日本の国そのものが、世界のかくれ里的存在といえるのでは
ないだろうか。

P.42
明け行く空と、落ちる月影に、軽の皇子への希望と、
草壁の皇子への追慕を見るのは行きすぎで、
歌はそのままの姿で味わうのが一番いいのである。

P.232
天然記念物に指定されてから急にはやり出したと聞くが、
やたらに指定するのも考えものである。
指定されたために、全滅した植物や鉱物は多い。

P.279
現代人はとかく形式というものを軽蔑するが、
精神は形の上にしか現れない。
私たちは何らかのものを通じてしか、
自己を見出すことも、語ることもできない。
そういう自明なことが忘れられたから、
宗教も芸術も堕落したのである。

P.298
あえて言えば、古事記も、日本書紀も、神話を総括し、
伝説を整頓しただけで、作り話は一つもない。
神話とフィクションのちがいを、私たちはもっとはっきり
心得ておくべきだと思う。

●読書中
『ユリシーズⅠ』byジェイムズ・ジョイス
ユリシーズ〈1〉
スティーヴンがブルームの新聞社にやってきたところ。
英語の修辞学がわからないので、そのあたりが楽しめないのが
ちょっと悔しい。

『古代からの伝言~日出づる国~』by八木荘司
古代からの伝言 日出づる国
「日本書紀」の世界を小説化した作品。

●新たに注文した本
読む本がたまっているので今週はショッピングなし。

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June 16, 2007

『宇宙クリケット大戦争』『村田エフェンディ滞土録』『テヘランでロリータを読む』

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今日はブルームズ・デイである。
ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』という小説が
1904年6月16日のダブリンでの出来事を描いているので、
この日を主人公ブルームの名を取って、ブルームズ・デイと呼んでいる。
その『ユリシーズ』は、他の本に浮気ばかりしているので、まだ1巻…
ブルームたちが墓地に着いたところ。

●今週読んだ本
『宇宙クリケット大戦争』byダグラス・アダムス
宇宙クリケット大戦争

銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。
どこをとっても平凡な英国人、アーサー・デントは
最後の生き残りとなる。
アーサーはたまたま地球にいた宇宙人フォードと
宇宙でヒッチハイクをするはめに。

というストーリーの『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズ第3弾。
今度はクリキット軍の侵略により銀河系が全滅の危機。
有無をいわさないクリキット軍による殺戮は、
まるで先週見た映画「マーズ・アタック」みたいだ。
ロボットのマーヴィンは相変わらずのウツっぷりでかわいいが
今回は何といってもワウバッガーとアグラジャッグがいい。
ワウバッガーはうっかり不死性を獲得してしまい、
最初のうちは人生を楽しんでいたがそのうち退屈してきて、
ついにアルファベット順にすべての生命体を侮辱することを
生きる目的とする。
アグラジャッグは生まれ変わるたびにアーサー・デントに
“全くの偶然”で殺害される運命を持つ。
ウサギの時は毛皮の袋にされ、ハエの時は叩き殺され、
イモリの時は踏みつぶされた。
「どんな惑星、どんな肉体、どんな時代に生まれても
やっと落ち着きかけたころにアーサー・デントがやってきて――
ボカン、で一巻の終わりさ」(P.174)

『村田エフェンディ滞土録』by梨木香歩
村田エフェンディ滞土録
『家守綺譚』の主人公、綿貫の友人である村田のトルコ留学記。
登場人物がみな魅力的で、
当時、トルコがおかれていた国際的状況なども興味深く
ただ、「『家守綺譚』とどちらが好き?」といわれれば、
より幻想的である『家守綺譚』かなあと思ってた。
が、ラストで号泣。
あまりにつらい。
オウムが村田のところへきたのがせめてものなぐさめ。

『テヘランでロリータを読む』byアーザル ナフィーシー
テヘランでロリータを読む
「ノンフィクションは苦手、小説が好き」という人にも読んでほしい作品。

本書はイラン出身の女性英文学者アーザル・ナフィーシーが、
1979年のイスラーム革命から18年間、激動のイランで暮らした経験を
英語で綴った文学的回想録の全訳である。
テヘランの大学で英文学を講じていたナフィーシーは、
1995年、抑圧的な大学当局に嫌気がさして辞職し、
みずから選んだ優秀な女子学生7人とともに、毎週木曜日、
ひそかに自宅で西洋文学を読む研究会をはじめた。
とりあげた小説は主としてナボコフ、フロベール、ジェイムズ、
オースティン、ベロウなど、イランでは禁じられた西洋文学の数々だった。
イスラーム革命後のイランは、生活の隅々まで当局の看視の目が光る
一種の全体主義社会となり、とりわけ女性は自由を奪われ、
厳しい道徳や規制を強制されて苦しんでいた。
秘密の読書会は、圧制の下に生きる女たちにとって、
ささやかながら、かけがえのない自由の場となり、
ナフィーシーがアメリカに移住する1997年までつづいた。
(あとがきより)

ナボコフ、ギャツビー、ジェイムズ、オースティンの
4つの章に分かれており、
これらの作家の文学論にもなっている。
女子学生たちの読書会を中心に話が進むのかと思ったが、
読書会に関する記述は1章と4章のみで
著者自身がイスラム革命後のイランでどう生きたかが
物語のメインである。
まるで自分もその場にいるかのようななまなましさで
当時のイランの様子が伝わってくる。
チャドルの着用を義務付けられ、海外の本や映画は禁止、
こんな風に国が個人を抑圧するという事態はあってはならないと思う。
ただ、この本で取り上げられている作品は、
『ロリータ』や『高慢と偏見』を初め男女の関係をテーマとした小説が多い。
著者はいう。
「小説入門講座で私が強調したかった点は、小説とは新たに誕生した物語形式が、
いかに人間のもっとも重要な関係をめぐる基本的な通念を根底から変え、
ひいては人間と社会、仕事、義務との関係に対する伝統的な姿勢を
変化させたかにあった。
こうした変化がどこよりもはっきり見られるのは男女の関係である。」
この箇所のように時々、著者の考え方に「ん?」と思うことがあった。
あとがきで訳者が著者の文学観について「古風」と書いている。
私が感じた違和感はそれだろうか。
もうひとつ。
昨年、ノーベル文学賞を受賞したオルハン・パムクにしてもこの著者にしても
欧米は反イスラム的なものを好む傾向にないか?ということもちょっと思った。

●読書中
『充たされざる者』byカズオ・イシグロ
充たされざる者
とにかく長い。(全部で939ページ)
帯に「イシグロがカフカを超える」と書いてある。
確かに最初の方は町の人々の意図がわからず謎めいていて
カフカの『城』を思い起こさせるのだが、
後半は、いろいろなことがはっきりしてきて、
カフカのような幻想さはすっかり消えてしまう。
今、P.646なのだけれど、もう読むのやめたい…

●新たに注文した本
『三等旅行記』林芙美子
昭和6年に著者が下関~パリをシベリア鉄道で旅した様子を書いたもの。
私が購入したのは昭和8年発行の初版本。
戦争を生き抜いてきた本だと思うと感動。
旧かなだから読みにくいかと思ったけどそうでもない。

『フィンバーズ・ホテル』byダーモット・ボルジャー他
フィンバーズ・ホテル
アイルランドの首都ダブリンのはずれにある1920年代に建てられた実在のホテル。
間もなく閉鎖されようとするこの古びたホテルを舞台に、
アイルランドの名手六人が匿名で挑戦したオムニバス小説。
それぞれの作品がつながっているのがミソ。

『高い城の男』フィリップ K.ディック
歴史改変小説。
第二次世界大戦が枢軸国側の勝利に終わってから十五年、
世界はいまだに日独二国の支配下にあった。
日本が支配するアメリカ西海岸では連合国側の勝利を描く書物が
密かに読まれていた……

『時の娘』ジョセフィン・テイ
いわゆる安楽椅子探偵もの。
英国史上最も悪名高い王、リチャード三世――
彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか?
退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、
純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。

『ほとんど無害』byダグラス・アダムス
ほとんど無害
これで『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズも完結。

『迷宮パノラマ館』by芦辺拓
迷宮パノラマ館
乱歩風?
ショートショートや短編が収録されていて「ひとり雑誌」という体裁のようだ。

『バートン版 千夜一夜物語 第1巻 シャーラザットの初夜』
バートン版 千夜一夜物語 第1巻 シャーラザットの初夜

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June 09, 2007

『エムズワース卿の受難録』『黒猫・黄金虫』『奇術師』『パンプルムース氏のおすすめ料理』「マーズ・アタック」「情婦」

●今週読んだ本
エムズワース卿の受難録―P.G.ウッドハウス選集〈2〉
エムズワース卿の受難録―P.G.ウッドハウス選集〈2〉

ブランディング城城主であるエムズワース伯爵。
大好きな花をながめ豚を愛し、のんびり暮らしたいのに
周囲の人間が、次々と問題を引き起こす。
それに巻き込まれてしまう伯爵。
城主なのだから、一番偉いはずなのに、
妹に怒鳴られては、しゅんとして、
庭師に「やめる」とおどかされてはおろおろする。
何と愛らしい!
私はこういうおっとりした男に弱い。
後半3分の1にあたる「フレディの航海日記」と
「天翔けるフレッド叔父さん」に伯爵が登場しないのが残念。
これは「文藝春秋のP・G・ウッドハウス選集シリーズ2」なのだが
シリーズ3となる『マリナー氏の冒険記(仮)』は来月、刊行予定。

『黒猫・黄金虫』byエドガー・アラン・ポー
黒猫・黄金虫

「黒猫」と「メールストロムの旋渦」は既に読んでいたので
残りの作品を読んだ。
「アッシャー家の崩壊」がすごくよかった。
足元から寒々としてきた。
「黄金虫」もおもしろかった。
世界初の暗号小説らしい。
積んである創元推理文庫のポー全集も読まねば。

〈プラチナファンタジイ〉 奇術師
〈プラチナファンタジイ〉 奇術師

『双生児』に続きプリースト2作品目。
私はこの著者の作品の楽しみ方がわからないかもしれない。
著者がトリックのために、登場人物を好きなように
動かしているようにしか見えず、心に響いてこないのだ。
そして最後にわかる双方のトリックもイマイチ…
のような気がする。
何か読みのがしているのか?

パンプルムース氏のおすすめ料理
パンプルムース氏のおすすめ料理

パンプルムース氏は元パリ警視庁刑事で
現在はグルメ・ガイドブックの覆面調査員。
お供は、元警察犬のポムフリット。
あるホテル・レストランの味をチェックに来たパンプルムース氏。
なんと出てきた料理の皿の上には首が!
ミステリーとしてはどうってことないんだけど、
パ氏とポムフリットのコンビが魅力的。
シリーズものなので続きも読むつもり。

ユリシーズ〈1〉
ユリシーズ〈1〉

これらの本の合間に、『ユリシーズ』もゆるゆると読み進めている。

●新たに注文した本
ハイペリオン〈上〉
ハイペリオン〈上〉

後述する「長門有希の100冊」に『エンディミオン』があったので
まずはシリーズ1作目から。

さようなら、いままで魚をありがとう
さようなら、いままで魚をありがとう

シリーズ4作目。
3作目である『宇宙クリケット大戦争』をただいま、読書中。

『漱石の夏やすみ』by高島 俊男
漱石の夏やすみ

明治22年、学生だった漱石が23歳の夏やすみに友人4人と房総旅行に出掛け、
その見聞をしるした漢文紀行『木屑録(ぼくせつろく)』について解説した本。
今月、文庫化されました。

パンプルムース家の犬
パンプルムース家の犬

シリーズ2作目の『パンプルムース氏の秘密任務』が到着まで4日かかるみたいなので
とりあえず、即日発送の3作目を注文。

テヘランでロリータを読む
テヘランでロリータを読む

イスラム革命後のイラン。
抑圧的な大学当局に嫌気がさして辞職した著者。
みずから選んだ女子学生7人とともに、
ひそかに自宅で西洋文学を読む読書会をはじめる。
読書会でチョイスされたナボコフもギャツビーもジェイムズもオースティンも未読の私。
果たしてこの本を楽しめるのか?

●今週見た映画
マーズ・アタック!
マーズ・アタック!


監督はティム・バートン。
火星人も宇宙船もマンガに出てくるようなチープさなのだけれど
なぜかはまってしまう。
次々と著名な俳優が登場するのもその魅力のひとつか。
合衆国大統領はジャック・ニコルソン。
007のピアース・ブロスナン、マイケル・J・フォックス、
サラ・ジェシカ・パーカーも登場する。
テーマ曲はトム・ジョーンズの「よくあることさ」で
トム・ジョーンズ本人も出演している。

情婦 [スタジオ・クラシック・シリーズ]
情婦 [スタジオ・クラシック・シリーズ]

弁護士役のチャールズ・ロートンがチャーミングでよかった。
原作である『検察側の証人』を読んでしまっているせいか、
本筋である裁判の動向よりも、病後のロバーツ卿と
彼を心配する周囲の人々とのやりとりの方がおもしろかった。

今日は録画してある『2001年宇宙の旅』を見る予定。

●Amazonの新サービス
Amazonが年会費3900円で
「お急ぎ便」使い放題、
注文金額に関係なく送料無料という新サービスを始めたが、
別に「お急ぎ便」にしなくても通常、3日もあれば届くし、
いつも注文する時は送料無料になる1500円以上は
必ず購入するので、関係ないや。

●長門有希の100冊
Nagato_yuki_02_03

『涼宮ハルヒ』に登場する長門有希が読んでいるという
「長門有希の100冊」というリストが興味深かったのでメモ。

1 ギリシア棺の謎 エラリー・クイーン
2 エンディミオン ダン・シモンズ
3 ウロボロスの偽者 竹本健治
4 双頭の悪魔 有栖川有栖
5 魍魎の匣 京極夏彦
6 ぬかるんでから 佐藤哲也
7 クレープを二度食えば 自選短編集 とり・みき
8 誰彼 法月綸太郎
9 夏と冬の奏鳴曲 麻耶雄嵩
10 猶予の月 神林長平
11 世界のSF全集12 R・A・ハインライン
12 バブリング創世記 筒井康隆
13 〔完本〕黒衣伝説 朝松健
14 パスカルの鼻は長かった 小峰元
15 時間衝突 バリントン・J・ベイリー
16 3つの棺 J・D・カー
17 エイリアン妖山記 菊地秀行
18 順列都市 グレッグ・イーガン
19 ターミナル・エクスペリメント ロバート・J・ソウヤー
20 復活祭のためのレクイエム 新井千裕
21 精神現象学 G・W・F・ヘーゲル
22 伯母殺し リチャード・ハル
23 ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論 高橋昌一郎
24 赤い館の秘密 A・A・ミルン
25 十角館の殺人 綾辻行人
26 ヴィーナスの命題 真木武志
27 五百光年 草上 仁
28 暗号解読 ロゼッタストーンから量子学まで サイモン・シン
29 デュマレスト・サーガ E・C・タブ
30 名探偵の掟 東野圭吾
31 有限と微小のパン 森博嗣
32 魔術の歴史 エリファス・レヴィ
33 オイディプス症候群 笹井潔
34 ダンス・ダンス・ダンス 村上春樹
35 ジョーカー 清涼院流水
36 抱朴子 葛洪
37 殺人喜劇の13人 芦辺拓
38 世界魔法大全〔英国篇〕4 心的自己防衛 ダイアン・フォーチュン
39 妄想自然科学入門 菊川涼音
40 鋼鉄都市 アイザック・アシモフ
41 法の書 アレイスター・クロウリー
42 イーリアス ホメーロス
43 真ク・リトル・リトル神話大系 H・P・ラヴクラフト
44 僧正殺人事件 ヴァン・ダイン
45 衣裳戸棚の女 ピーター・アントニイ
46 殺意 フランシス・アイルズ
47 トンデモ本の世界 と学会
48 ガダラの豚 中島らも
49 悪霊の館 二階堂黎人
50 知性化戦争 デイヴィット・ブリン
51 タウ・ゼロ ポール・アンダースン
52 月に呼ばれて海より如来る 夢枕獏
53 イメージシンボル事典 アト・ド・フリース
54 椿姫を見ませんか 森雅裕
55 呪われし者の書 チャールズ・フォート
56 トリフィド時代 食人植物の恐怖 ジョン・ウィンダム
57 盗まれた街 ジャック・フィニィ
58 デッドソルジャーズ・ライヴ 山田正紀
59 暗闇の中で子供 The Childish Darkness 舞城王太郎
60 失われた時を求めて マルセル・プリースト
61 カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー
62 吉里吉里人 井上ひさし
63 サード・コンタクト 小林一夫
64 吸血鬼伝承「生ける死体」の民俗学 平賀英一郎
65 エイアリン刑事 大原まり子
66 落着かぬ赤毛 E・S・ガードナー
67 ブラウン神父の童心 G・K・チェスタトン
68 昭和歌謡大全集 村上龍
69 地球の長い午後 ブライアン・W・オールディス
70 リング・ワールド ラリイ・ニーヴン
71 エンダーのゲーム オースン・スコット・カード
72 たったひとつの冴えたやりかた ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア
73 奇想、天を動かす 島田荘司
74 最上階の殺人 アントニイ・バークリー
75 夢の樹が接げたなら 森岡浩之
76 スターダスト・シティ 笹本祐一
77 陸橋殺人事件 ロナルド・A・ノックス
78 金なら返せん! 大川豊
79 海を見る人 小林泰三
80 ホッグ連続殺人 ウィリアム・L・デアンドリア
81 思考する物語 SFの原理・歴史・主題 森下一仁
82 ドグラ・マグラ 夢野久作
83 たそがれに還る 光瀬龍
84 ダーコーヴァ年代記 M・Z・ブラッドリー
85 ―――― ---(未知の媒体に記録されているため探知不能)
86 少年エスパー戦隊 豊田有恒
87 ECCENTRICS 吉野朔実
88 太陽の簒奪者 野尻抱介
89 悪魔の系譜 J・B・ラッセル
90 底抜け超大作 映画秘宝編集部編
91 猫たちの聖夜 アキフ・ピリンチ
92 虎よ、虎よ! アルフレッド・ベスター
93 サード・コンタクト 小林一夫
94 五番目のサリー ダニエル・キイス
95 赤と黒 スタンダール
96 百舌の叫ぶ夜 逢坂剛
97 星を継ぐもの J・P・ホーガン
98 できるかなリターンズ 西原理恵子
99 海がきこえる 氷室冴子
100 ―― -(未知の言語で記述されているため解読不能)

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June 02, 2007

『オデュッセイア』『双生児』『夏の夜の夢・あらし』『黒い時計の旅』『ロボット』

●今週読んだ本

ホメロス オデュッセイア〈下〉
ホメロス オデュッセイア〈下〉
先週に引き続き下巻を。
トロイア戦争にまつわる伝説は、
全部で8編の叙事詩で構成されており
順序は
『キュプリア』→『イリアス』→『アイティオピス』→『小イリアス』
→『イリオス落城』→『帰国談(イストイ)』→『オデュッセイア』
→『テレゴニア』となっている。
『イリアス』も読むべきなのだろうけれど、戦闘シーンが多くて退屈そう…
それに有名なトロイの木馬のエピソードは『イリアス』じゃなくて
『イリオス落城』に書いてあるみたいだし。
いうなれば外伝である『アガメムノーン』も読みたい。
今まで気にもしなかったけれど、こういった古典を出版し続ける
岩波文庫の存在は貴重。

双生児
双生児
「プレステージ」の公開間近なプリーストの話題作。
純粋にトリックを楽しめばいいのか。
それとももっと深い何かがひそんでいるのか。
読んでいるうちに、自分の読み方が正しいのかどうか
わからなくなってきて、足元がぐらつく。
これとかカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』とか
文学としてのSFがきてる?

夏の夜の夢・あらし
夏の夜の夢・あらし
再読。
でも10代の頃に読んだきりなので、ほとんど忘れてた。
これを機にシェイクスピアをもっと読んでいきたいのだけれど
慣れていないせいか、どうも戯曲は読みにくい。


黒い時計の旅
黒い時計の旅
たら本第25回「ドイツの文学」で、
ne_sanさん
が紹介してくださった本。
歴史改変SF。
最初は話にのれなかったのだけれど、
途中から俄然、おもしろくなってきて、徹夜しかけた。
今年のベストかもしれない。
島のホテルに暮らす白人の母子。
本土と島の間を渡す船の老船長。
ヒトラー専属の私設ポルノグラファー。
彼らが大きな歴史の渦に巻き込まれていくのか
はたまた彼らが歴史を飲みこむのか。
傑作です。
是非、読んでみて。

ロボット
ロボット
“ロボット”という言葉はこの本から生み出されたもの。
しかし、私たちが頭に思い浮かべる“ロボット”と
この本に登場する“ロボット”は見た目からして
まったく違うものである。
ロボットというよりクローンの考え方に近いのではないか?
しかしソニーの二足歩行ロボットなんか見ている限りでは
のろのろしていてロボットの実用化はまだまだ先ですな。

●新たに注文した本

『ユリシーズ(2)』ジェイムズ・ジョイス
今は1巻をゆるゆる読んでいる。
この本をおもしろく読むコツは、
その都度、訳注をていねいに読むことじゃないかと思う。
多分、さーっと読み流してしまったら、
何が何だかわからないまま終わる可能性がある。

『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル
突然、再読したくなったので。

『奇術師』クリストファー・プリースト
プリースト検証プロジェクト第2弾。

『充たされざる者』カズオ・イシグロ
カフカっぽいらしい。

『エムズワース卿の受難録』P.G. ウッドハウス
来月、文春ウッドハウス選集第三巻『マリナー氏の冒険記(仮)』が
発売されるので、その前に第二巻であるこれを読んでおく。

『パンプルムース氏のおすすめ料理』マイケル・ボンド
東京創元社の新刊案内に『パンプルムース氏とホテルの秘密』が
あったので、まずはシリーズ第1作を読んでみることにする。

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