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June 23, 2007

『充たされざる者』『さようなら、いままで魚をありがとう』『ほとんど無害』『迷宮パノラマ館』『かくれ里』

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昨夜、NHK「プレミアム10」でユーミンのライブをやっていた。
音楽プロデューサーの寺岡呼人が企画したもので
ゆず、桜井和寿も参加していた。
何だかんだ20代の頃、一番よく聴いていたのはユーミンなので
ライブを見ているうちに、その頃の自分がよみがえってきて
ユーミンの歌ではないが「あの日に帰りたい」と思ってしまった。
しかし、ゆずファンの方が「ユーミンという人がよかった」と
ネットに書いていらして
「もう若い人にとってユーミンは“ユーミンという人”なんだなあ」と
寂しい気持ちになった。
一方で私にとってもゆずは“ゆずという人”だったりするわけだが…
どうして人は、今の音楽でなく、若い頃に聴いた音楽に
強くひきつけられるのだろう?
その直後が「爆笑問題のニッポンの教養」という番組で、
爆笑問題が東京理科大学薬学部の田沼靖一教授と
「ヒトはなぜ死ぬのか?」をテーマに語っていた。
田沼教授「遺伝子にはあらかじめ死がプログラムされている」
太田「では、遺伝子を操作すれば不死も不可能ではない?」
田沼教授「できたとして不死に何の意味があるのか?」
ちょうどユーミンの番組を見て「若い頃にもどりたい」と
思ったところだったので考えさせられる内容だった。

●今週読んだ本
『充たされざる者』byカズオ・イシグロ
充たされざる者

世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。
「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、
日程や演目さえ彼には定かでない。
ライダーはそれとなく詳細を探るが、
奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り……。

帯に「イシグロがカフカを超える」とあるが
それはあまりにも不遜なキャッチコピーじゃないか?
確かにカフカの『城』に似ている。
が、それも前半まで。
町の人々がみな人間的過ぎるし、ストーリーも明確で、
作品説明にある「悪夢のような不条理」は感じない。
一方、『城』の主人公Kは最後まで外来者であり続ける。
村人は人間であって人間でないようなまさに悪夢のような存在。
と、カフカファンである私は帯のキャッチコピーにカチンとして
カフカと比較して読んでしまったが
そうじゃない読み方ももちろんあると思う。
ネットで検索したらボリス、シュテファン、クリストフ、ブロッキーを
それぞれライダーの少年期、青年期、壮年期、老年期ととらえた感想があった。
え、そうなの?
私はこの4人はまったく別のキャラクターに思えたのだけれど…(・∀・;)

『さようなら、いままで魚をありがとう』byダグラス・アダムス
『ほとんど無害』byダグラス・アダムス
さようなら、いままで魚をありがとうほとんど無害

銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。
どこをとっても平凡な英国人、アーサー・デントは
最後の生き残りとなる。
アーサーはたまたま地球にいた宇宙人フォードと
宇宙でヒッチハイクをするはめに。

というストーリーの『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズ第4弾&第5弾。
これでシリーズをすべて読み終えたことになる。
シリーズが後半になるに連れて、コメディからシリアスな内容に移行し、
熟成されていく感じがよかった。
作者の年齢とも関係があるのかもしれない。
ファンは1~3巻を正篇、4&5巻は「三部作の4番目と5番目」と呼び
分離して考えるようだが、
私は4&5巻あっての『銀河ヒッチハイクガイド』なんじゃないかと思う。
4巻ではアーサーが恋をして、5巻でその恋を失ったアーサーが
サンドイッチ職人として幸せそうに暮らしているところ、じーんとした。
ラストの評判が悪いようだが、私は嫌いじゃない。
映画も近いうちに見たい。

『迷宮パノラマ館』by芦辺拓
迷宮パノラマ館
著者が若い時に書いた短編と最近の作品であるショート・ショート、
講談・ラジオ台本を集めた作品集。
帯には
「ミステリ、SF、ホラー、講談…奇才・芦辺拓が贈るひとり雑誌」
と書いてある。
「太平天国の乱」と「クトゥルー神話」を組み合わせた
『太平天国の邪神』がよかった。
ショート・ショートはやはり短すぎて物足りなかった。
芦辺拓が好きという方以外にはオススメできないかも…

『かくれ里』by白洲正子
かくれ里

白洲正子が朽木谷、菅浦、久々利といった
知る人ぞ知るかくれ里を訪ねる紀行エッセイ。
深い木立にかこまれた神社に残されている古面、
政変で都を追われた天皇たちの悲しいエピソード、
山奥に残る古代信仰のあと。
しかしこの作品が発表されたのは1971年。
もうこれらの土地も観光客によって荒されてしまっているだろうか。
日本書紀、万葉集、太平記といった日本の古典をもっと読み、
京都周辺の詳細な地図を手元に置いて再度、読みたい。

P.11
バスから押し出される観光客は、信仰とも鑑賞とも、
いや単なる見物からも程遠い人種に違いない。
ただ隣の人が行くから行く…(中略)
仏像や古美術も…(中略)不断の尊敬と愛情によって
磨かれ、育ち、輝きを増す。

P.16
伎楽はおそらくギリシャから西域を経て、中国に渡り、
朝鮮経由で、七世紀の頃、日本に将来された芸能だが、
外国では滅びてしまったその伝統が、日本の片田舎に
こうして生き残っていることに…(中略)
日本の国そのものが、世界のかくれ里的存在といえるのでは
ないだろうか。

P.42
明け行く空と、落ちる月影に、軽の皇子への希望と、
草壁の皇子への追慕を見るのは行きすぎで、
歌はそのままの姿で味わうのが一番いいのである。

P.232
天然記念物に指定されてから急にはやり出したと聞くが、
やたらに指定するのも考えものである。
指定されたために、全滅した植物や鉱物は多い。

P.279
現代人はとかく形式というものを軽蔑するが、
精神は形の上にしか現れない。
私たちは何らかのものを通じてしか、
自己を見出すことも、語ることもできない。
そういう自明なことが忘れられたから、
宗教も芸術も堕落したのである。

P.298
あえて言えば、古事記も、日本書紀も、神話を総括し、
伝説を整頓しただけで、作り話は一つもない。
神話とフィクションのちがいを、私たちはもっとはっきり
心得ておくべきだと思う。

●読書中
『ユリシーズⅠ』byジェイムズ・ジョイス
ユリシーズ〈1〉
スティーヴンがブルームの新聞社にやってきたところ。
英語の修辞学がわからないので、そのあたりが楽しめないのが
ちょっと悔しい。

『古代からの伝言~日出づる国~』by八木荘司
古代からの伝言 日出づる国
「日本書紀」の世界を小説化した作品。

●新たに注文した本
読む本がたまっているので今週はショッピングなし。

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Comments

こんにちは。
この番組、昨夜私もちらちら見てました。今さらですが、ユーミンいいですね。

「不死が実現したとして、それに何の意味があるのか」
うーん、坊さんの私としては、それを聞くと「何て仏教的なんだ」と思ってしまいます(笑)
人が不死なら、文化も芸術も、もちろん文学も意味がなくなりますよね。ブログもネットも、やる意味ない・・。

私も、中高からせいぜい20歳くらいまでに聴いた音楽が、今の根っこになっている・・という感覚は強くあります。
LPで持っていたものをCDで買い直したりとか、エアチェック(笑)してたテープの曲が収録されたCD買いあさったりとか・・してます。

Posted by: shosen | June 23, 2007 at 14:22

>shosenさん
先日は、手紙の宛先についてお教えいただきありがとうございました。
ユーミンは、音楽としてのすばらしさもさることながら、
20代の頃の思い出が走馬灯のようによみがえるのがたまらないです。
「不死に何の意味があるのか?」という教授のおことばは
実はわかったようなわからないような…なんです。
不死とはいわないまでも、300才くらいまで生きられたら、
もう少しのんびり自分の人生を送れるんじゃないかなあと思ったり。
20代の頃は自分が年を取るなんて考えたこともなかったですが
この年になると「人生ってあっという間だわ(涙)」と感じます。
修行が足りませんね。
『正法眼蔵』を読まねば!
>中高からせいぜい20歳くらいまでに聴いた音楽が、今の根っこになっている
いいなあ。
そういえるのってうらやましいです。
私の10代は受験、受験でした。
そのくせ大した大学には行ってないし大した人生も送っていない(笑)
>CDで買い直したり
ああ、わかります。
俗にいう大人買いってやつですね。
結構、CDも廃盤になるのが早いですから、老後のために、
今のうちに青春の思い出を買いだめしておかなくちゃですね♪

Posted by: LIN | June 23, 2007 at 23:46

ご無沙汰していますが、一応生きております。
blogは放置状態が続いているんですけどね…

最近はニュース程度しかテレビ見てなかったんですが、
ユーミンの番組は偶然にも見てました。
俺はそんなに思い入れがある訳でもないですけども、
世代的には、懐かしかったです。

やっぱ若い頃に聴いた音楽って、単に音楽ってだけでなくて、
その人それぞれの思い出とか詰まっているんですよねー
俺にもそんな曲が沢山あります。

そういや、まっさんの恒例の生放送、次回は
8月8日ぐらいに広島からあるみたいですよ。
前回の大型連休のは不覚にも寝てしまい見逃して
しまいました…
LINさんは御覧になられましたか?

8月9日の「夏・広島から」にも参戦したかったんですが、
こちらは参加券争奪戦に敗れ去ってしまいました…

Posted by: 夢屋 | June 24, 2007 at 11:09

>夢屋さん
おひさしぶりです~。
mixiの日記は更新されているようでしたのでお元気なんだなとは
思っておりましたが。
私にとってのユーミンは夢屋さんにとってのハマショーのようなものかもしれません。
もうイントロが流れてくるだけで、自分の若かりし日々がわーっとよみがえってきます。
>その人それぞれの思い出とか詰まっているんですよねー
そうなんですよ!
「過去を振り返るような人生は送るまい。現在がベストでなくては!」
と思い続けてきましたが、やっぱり振り返っちゃいますよね(笑)
>前回の大型連休
松山のですよね?
見ましたよー。
あー、録画しておいてさしあげたらよかったですね。
次回は8月ですか。
すっかりレギュラー化したようですね(笑)
あの手作り感がたまらないです。
でもね、やっぱりあの番組を見ると「さださんも年取ったなあ」って
つい思っちゃうんです(笑)

Posted by: LIN | June 24, 2007 at 11:24

ユーミン!
私も蘇りますね~あれやこれやとそれはもういろいろな思い出とともに。

何年か前にアースデー・コンサートというのに行ったんですが、そのときのメンバーがとにかくものすごく豪華で。
ユーミン、矢野顕子、佐野元春、大貫妙子、CHARA、BIRD、森山良子、今井美樹などなど…もうなんじゃそりゃ?!なメンツ。

ユーミンは死ぬ前に一度は観たいと思っていたので、それはもう感動でございました。弾き語りで「ベルベットイースター」。思い出しても鳥肌が…。

実は同じように死ぬ前に一度…と思っていたBilly Joelのコンサートもこの間行けたので、その後しばらく「老後の楽しみにとっておこう」と思っていた、私にとってのナツメロに浸る日々が続きました。
やっぱり若い頃に聞いた音楽って特別ですよね。感受性が今とは違うのかしらん…。

Posted by: りつこ | June 24, 2007 at 23:04

こんにちは。
私もむか~しユーミン好きでした。
コンサートにも行ったなあ。

「銀河ヒッチハイク・ガイド」シリーズは、
私は第3作まで読んで止まっていたのですが、
続きも読んでみることにします。

Posted by: 木曽のあばら屋 | June 25, 2007 at 07:05

こんにちは。
こちらはじめましてです。
ユーミンのは見逃してしまいました(泣)。
見たかったなぁ・・・。
でも、甲斐よしひろのライブとスタジオパークは見ました。
親父ギャグをとばしたりなんかして、随分まるくなったんだと思いましたね。
ライブでは他の人の曲も歌ってましたが、どれもしっかり甲斐よしひろの世界になっていて、さすが!と唸ってしまいました。

図書館本を優先して、積んである『銀河ヒッチハイク・ガイド』読んでみます。
苦手のSFとあってなかなか手が出ません(汗)。

Posted by: dumpty | June 25, 2007 at 08:59

ほぼ、同じ流れでテレビ観てました(笑)。
私もユーミンのファンです。「ひこうきぐも」から聞いてます(歳、ばればれですね)。

先日は、「シャングリラ」のドキュメンタリーまで見て、ああ、がんばってるんだ、と勇気づけられました。若い!前向き!
一時期、自然派方向に行きそうな時がありましたが、やはり、ユーミンには人工的な物が似合います。

「銀河ヒッチハイクガイド」は、映画、見ました。すごく、軽いノリでしたが、本は、未読ながら、そちらのほうがおもしろそうだと感じました。

Posted by: くまま | June 25, 2007 at 09:18

>りつこさん
りつこさんもユーミン世代でしたか!
なぜか私よりずっと年下だと思ってました(^^;
アースデー・コンサートすごいですね。
一人だけでもコンサートホールを満杯にできるアーティストばかりじゃないですか!
ユーミンほどではないけれど、今井美樹の曲もその時代の自分がよみがえりますー。
>弾き語りで「ベルベットイースター」
いいですよね~。
ユーミンは松任谷由実作品の派手派手さと、荒井由美時代の作品のしっとりさの対比が
いいんですよね。
>Billy Joel
好き好き!
ベタですが、やっぱり『ピアノマン』ですかねー。
>若い頃に聞いた音楽って特別
そうなんです!
自分が若い時は、親たちが昔の曲を懐かしんでいるのを見て
「古っ!」って思ったけれど
結局、自分もやっちゃってるという…(^^;
やはり、その頃の自分がよみがえるというのが大きいのでしょうね。

Posted by: LIN | June 25, 2007 at 09:43

>木曽さん
木曽さんもユーミン、お好きですか!
>コンサートにも行ったなあ。
お、私たちすれ違っているかも?
でも苗場と逗子は未体験。
苗場は今、やってないんでしたっけ?
行っておけばよかった(涙)
>「銀河ヒッチハイク・ガイド」シリーズ
3巻までは、どちらかというドタバタしているイメージですが
4、5巻はしっとりしてます。
SFというよりも普通の小説っぽい感じです。
ただ、ラストが賛否両論なんですよねー(^^;
『銀河ヒッチハイクガイド』はやっぱり楽しくなくちゃ…とお思いでしたら
あまりオススメできないかも。

Posted by: LIN | June 25, 2007 at 09:54

>dumptyさん
こちらへもようこそ~♪
dumptyさんもユーミン、お好きでしたか!
NHKは民放では登場しないアーティストが出演したりするので
(それもドキュメンタリーで)
目がはなせないですよねー。
>甲斐よしひろ
HERO!ヒーローになる時、Ah Haそれは今♪
ですね!
>ライブでは他の人の曲も歌ってました
NHKのHPでセットリストを見ました。
「歌舞伎町の女王」なんか歌ってらっしゃるんですね。
甲斐さんが歌う「歌舞伎町の女王」迫力ありそう~。
>『銀河ヒッチハイク・ガイド』
SFが苦手でいらっしゃるのですね。
でも『銀河~』はコメディタッチなのでSFの中でも読みやすい方だと
思います。
登場人物がすごく人間的だし。(ロボットさえも人間的です)
是非、トライなさってみてください。

Posted by: LIN | June 25, 2007 at 10:12

>くままさん
おお、くままさんもご覧になってましたか。
爆笑問題の番組も?
あれ、考えさせられませんでした?
>「ひこうきぐも」から聞いてます(歳、ばればれですね)。
名曲ですよね!
「ひこうきぐも」をリアルタイムで聞いていらっしゃるとは
すごくうらやましいです~。
私は松任谷由実からはいって、後から荒井由実時代の作品を聴き出したので。
>若い!前向き!
ねー、この間の番組でも、全然、おばさんくさくなかったですよね。
相変わらず、かっこいい。
でもきっとユーミンも体がしんどかったり、いろいろ悩みもあるはずなんですよね。
特に夫婦としてはプロデューサーである松任谷正隆さんとの関係は特殊で
勝手な想像なんですがひんやりしてるんじゃないかなあと思ってしまいました。
(余計なお世話なんですが…汗)
>「銀河ヒッチハイクガイド」
私はまだ映画を見てないのですが、従来の映画と原作の関係を考えると
映画はどうしても薄くなりがちですよね。
それでも「銀河ヒッチハイクガイド」は原作にかなり近いらしいのですが…
機会があったら是非、原作の方もお読みになってみてください。

Posted by: LIN | June 25, 2007 at 10:50

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