July 07, 2007

『悪党芭蕉』『古都』『伝奇集』『Self-Reference ENGINE』『気になる部分』「銀河ヒッチハイク・ガイド」「8人の女たち」「宋家の三姉妹」

渡辺満里奈 ピラティス道渡辺満里奈 ピラティス道
渡辺満里奈

ポニーキャニオン 2007-05-16
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2年前、書籍として発売された渡辺満里奈の「ピラティス道」。
DVD化されたら買おうと思っていたら、
いつの間にかDVD化されていたので買ってみました。
激しいビリーズ・ブート・キャンプは真夏にはちょっとしんどいですからね。

●今週読んだ本
『悪党芭蕉』by嵐山光三郎

悪党芭蕉悪党芭蕉
嵐山 光三郎

新潮社 2006-04-22
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芭蕉は「三百年前の大山師」だった!(by芥川龍之介)
弟子は犯罪者、熾烈な派閥闘争、句作にこめられた危険な秘密……。
神格化され、〈宗教〉となった芭蕉の真実の姿を描く、
今まで誰も書けなかった画期的芭蕉論。

俳句にはまったく興味がなかったのだが楽しく読めた。
芭蕉の弟子たちが、それぞれ個性豊か。
二大弟子である東の其角、西の去来。
其角は天才肌であり、去来は誠実そのもの。
芭蕉と衆道関係にあったと思われる美男の誉れ高い杜国。
他にも衆道関係にあった弟子がぞろぞろ。
弟子たちが芭蕉を取り合う様子がおかしい。
といっても、芭蕉を思う気持ちからではない。
誰が後継人になるかが関心の対象だった。
当時、俳句はビジネスだったからだ。
俳句が、芸術である前にビジネスであり、
お金になったということは驚きだ。
興行と呼ばれており今でいうライブのようなものか?
芭蕉はこんな風に詠んでいる。
詩商人年を貪る酒債かな(P.151)

<自分用MEMO>
P.10
百五十年忌の天保14年(1843)には、
二条家より「花の本大明神」の神号を下され、
芭蕉は名実ともに神となった。
芭蕉は宗教と化したのである。

P.184
文芸で名を高めるには、作品もさることながら、死に方の工夫が腕の見せどころ

『古都』by川端康成
「本を読む人々。」というSNSの「古今東西の名作を読もう」トピックの
7月の課題本。
まず、会話が全部、京ことばなのに違和感があった。
京ことばは好きなのだけれど、それが小説となるとふざけてるみたいで…(^^;
「ふた子どすもん?」「いややわ」「どうどした?」「そうでんな」ですよ?
ただ、最初は違和感があったものの、
後半はストーリーもぐぐっともりあがり、楽しく読めた。
平安神宮、植物園、祇園祭、時代祭と京都ならではの描写が続き、
京都ガイドブックのような趣もある。

『伝奇集』byJ.L.ボルヘス

伝奇集伝奇集
J.L. ボルヘス 鼓 直

岩波書店 1993-11
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ネットに各作品について一行で紹介してある文章があったので貼っておく。
<八岐の園 1941年>
プロローグ 以下8篇への前書き。
トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス 
事典をめぐる奇妙な研究論文。
アル・ムターシムを求めて
寓意詩と探偵小説の融合を指摘した書評。
『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール 未完の作品の解説。
円環の廃墟 一人の人間を夢見、生み出す話。
バビロニアのくじ 非在のくじのお話。
ハーバート・クエインの作品の検討 小説家の作品の話。
バベルの図書館 無限であり周期的な図書館の話。
八岐の園 探偵小説的情報戦。

<工匠集 1944年>
プロローグ 以下9篇への前書き。
記憶の人、フネス 完全知覚の言語化。
刀の形 独立運動の自意識の結末。
裏切り者と英雄のテーマ 反転する革命劇。
死とコンパス 四角殺人事件。
隠れた奇跡 ゼノンのパラドックス的詩作。
ユダについての三つの解釈 逆説的弁護人。
結末 人格転移の殺人。
フェニックス宗 継続する秘儀。
南部 手術と決闘。

何度か挫折してきたのだが、今回、やっと全部、読めた。
といっても、全部、理解できたわけではない。
「八岐の園」より「工匠集」の方がいくらか理解しやすかった。
主人公と、対峙していた相手とが逆転したり、
一度は死を逃れるものの、その間にひとときの夢を見て結局死ぬ
といった物語が多いように思う。
「死とコンパス」「ユダについての三つの解釈」「南部」がよかった。

『Self-Reference ENGINE』by円城塔

Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
円城 塔

早川書房 2007-05
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SF連作短編集
著者は今回、「オブ・ザ・ベースボール」で芥川賞候補になった人。
恋愛小説風の話があるかと思えば、巨大人工知能が登場したり、
落語調の話もあれば、SFには不似合いな“トメ”なんて名前も出てくる。
ネットを見ると、この作品について言及する際、
ヴォネガット、ボルヘス、カルヴィーノ、グレッグ・イーガン、舞城王太郎などが
引き合いに出されている。
私の大好きな『銀河ヒッチハイクガイド』における
「生命と宇宙と万物に関する究極の答え」である“42”もちらっと出てくる。
私がこの作品を紹介するとしたら、
「恩田陸の『光の帝国』をもっと理屈っぽくした感じ」だろうか。
帯に推薦文を書いている飛浩隆の『グラン・ヴァカンス』ともちょっと重なるような。
まあ、あらゆるSF作品のごった煮ってことかもしれない。
でも結局、私はこの作品が何がいいたいかよくわからなかったけどね。

『気になる部分』 by岸本佐知子

気になる部分気になる部分
岸本 佐知子

白水社 2006-05
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スティーヴン・ミルハウザー、ニコルソン・ベイカーなどの翻訳家によるエッセイ。
最初はおもしろくてげらげら笑っていたのだけれど、
そのうち、著者の妄想ぶりがだんだん怖くなってくる。
石鹸で手を洗い続けたら手が消えるんじゃないかと思い執拗に洗い続ける著者。
祖母の家の枕の中には日本兵がいるという著者。
前半に書いてあった、壁一面にきのこグッズがずらっと飾ってあり
食事や浴衣、大浴場にいたるまで、すべてきのこづくしという「国際きのこ会館」も
彼女の妄想なんじゃないかという気がして調べてみたがこれはちゃんと実在していて、
今は「ホテルきのこの森」という名前だった。
この妄想っぷりなら、小説を書いてもいいものが書けるんじゃないかなあ。

●読書中
『銃・病原菌・鉄』byジャレド・ダイアモンド

●新たに購入した本
『ちょっと本気な千夜千冊虎の巻』by松岡正剛
『白の民俗学へ』by前田速夫
『読書の腕前』by岡崎 武志
『贅沢な読書』by福田 和也

●今週見た映画
銀河ヒッチハイク・ガイド

銀河ヒッチハイク・ガイド銀河ヒッチハイク・ガイド
サム・ロックウェル ダグラス・アダムス ガース・ジェニングス

ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2006-03-17
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予想通り。期待通り。
原作がそのまま映像化されていた。
ただ、ゼイフォードの頭の処理がちょっとずるいような…
(ゼイフォードの頭は双頭なのに、
映画版だともうひとつの頭は首にあり、普段は隠れている)
BBCのTVシリーズのゼイフォードの方が正しい。
BBCの方のDVDも買っておくべきか。

8人の女たち

8人の女たち デラックス版8人の女たち デラックス版
カトリーヌ・ドヌーヴ フランソワ・オゾン エマニュエル・ベアール

ジェネオン エンタテインメント 2003-07-21
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1950年代のフランス。
クリスマス・イブの朝、雪に閉ざされた大邸宅で一家の主が殺された。
集まっていた家族は一転、全員が容疑者に…
お互いが疑心暗鬼に陥るなか、
怪しくも美しき8人の女たちの秘密がつぎつぎと明かされる。
犯人は、誰…?

本格ミステリー風。
オゾン監督はパロディで作ったのだろうか?
というかパロディにしか見えない。
何度も登場するミュージカルシーンは、私はいらなかったな。
ラストはちょっとびっくりのような、強引のような…

宋家の三姉妹

宋家の三姉妹宋家の三姉妹
マギー・チャン メイベル・チャン ミシェール・ヨー

ポニーキャニオン 2005-03-02
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今世紀初頭の中国。
古い因習にとらわれずに育てられてきた宋家の三姉妹。
アメリカ留学から帰国した彼女たちは、
それぞれに全く異なる結婚相手を選ぶ。
長女の靄齢は財閥の御曹司と結婚し、
中国経済を左右する大財閥を築く。
次女の慶齢は革命家・孫文と恋をし、
彼とともに情熱のすべてを革命に捧げる。
そして、三女の美齢は野心あふれる若き軍司令官、蒋介石と結婚する。

「かつて中国に三人の姉妹がいた。
一人は富を愛し、一人は権力を愛し、一人は国を愛した。」
映画のオープニングにこんなテロップが流れるが、
この順番でいくと、次女の慶齢が権力を愛したことになるが、
権力を愛したのは三女の美齢であり、
慶齢は国を愛したのではないのだろうか?
この映画を見るまで、孫文なんて名前くらいしか知らなかった。
このあたりの中国の歴史って
学校であまり詳しく習わなかったような気がする…。
中国の歴史を扱った小説をもっと読みたい。

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June 02, 2007

『オデュッセイア』『双生児』『夏の夜の夢・あらし』『黒い時計の旅』『ロボット』

●今週読んだ本

ホメロス オデュッセイア〈下〉
ホメロス オデュッセイア〈下〉
先週に引き続き下巻を。
トロイア戦争にまつわる伝説は、
全部で8編の叙事詩で構成されており
順序は
『キュプリア』→『イリアス』→『アイティオピス』→『小イリアス』
→『イリオス落城』→『帰国談(イストイ)』→『オデュッセイア』
→『テレゴニア』となっている。
『イリアス』も読むべきなのだろうけれど、戦闘シーンが多くて退屈そう…
それに有名なトロイの木馬のエピソードは『イリアス』じゃなくて
『イリオス落城』に書いてあるみたいだし。
いうなれば外伝である『アガメムノーン』も読みたい。
今まで気にもしなかったけれど、こういった古典を出版し続ける
岩波文庫の存在は貴重。

双生児
双生児
「プレステージ」の公開間近なプリーストの話題作。
純粋にトリックを楽しめばいいのか。
それとももっと深い何かがひそんでいるのか。
読んでいるうちに、自分の読み方が正しいのかどうか
わからなくなってきて、足元がぐらつく。
これとかカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』とか
文学としてのSFがきてる?

夏の夜の夢・あらし
夏の夜の夢・あらし
再読。
でも10代の頃に読んだきりなので、ほとんど忘れてた。
これを機にシェイクスピアをもっと読んでいきたいのだけれど
慣れていないせいか、どうも戯曲は読みにくい。


黒い時計の旅
黒い時計の旅
たら本第25回「ドイツの文学」で、
ne_sanさん
が紹介してくださった本。
歴史改変SF。
最初は話にのれなかったのだけれど、
途中から俄然、おもしろくなってきて、徹夜しかけた。
今年のベストかもしれない。
島のホテルに暮らす白人の母子。
本土と島の間を渡す船の老船長。
ヒトラー専属の私設ポルノグラファー。
彼らが大きな歴史の渦に巻き込まれていくのか
はたまた彼らが歴史を飲みこむのか。
傑作です。
是非、読んでみて。

ロボット
ロボット
“ロボット”という言葉はこの本から生み出されたもの。
しかし、私たちが頭に思い浮かべる“ロボット”と
この本に登場する“ロボット”は見た目からして
まったく違うものである。
ロボットというよりクローンの考え方に近いのではないか?
しかしソニーの二足歩行ロボットなんか見ている限りでは
のろのろしていてロボットの実用化はまだまだ先ですな。

●新たに注文した本

『ユリシーズ(2)』ジェイムズ・ジョイス
今は1巻をゆるゆる読んでいる。
この本をおもしろく読むコツは、
その都度、訳注をていねいに読むことじゃないかと思う。
多分、さーっと読み流してしまったら、
何が何だかわからないまま終わる可能性がある。

『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル
突然、再読したくなったので。

『奇術師』クリストファー・プリースト
プリースト検証プロジェクト第2弾。

『充たされざる者』カズオ・イシグロ
カフカっぽいらしい。

『エムズワース卿の受難録』P.G. ウッドハウス
来月、文春ウッドハウス選集第三巻『マリナー氏の冒険記(仮)』が
発売されるので、その前に第二巻であるこれを読んでおく。

『パンプルムース氏のおすすめ料理』マイケル・ボンド
東京創元社の新刊案内に『パンプルムース氏とホテルの秘密』が
あったので、まずはシリーズ第1作を読んでみることにする。

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May 11, 2007

『リヴァイアサン号殺人事件』『新釈走れメロス』『夢十夜他二編』

リヴァイアサン号殺人事件『リヴァイアサン号殺人事件』はロシアの作家ボリス・アクーニンが書いた
“ファンドーリンの捜査ファイル”シリーズ第3作である。
(ちなみにアクーニンは日本語の“悪人”にちなんでいる)
豪華客船、消えた秘宝の謎、いわくありげな乗客たち…
と、ポワロものが好きな方たちにはたまらない設定。
また探偵ファンドーリンが最新ファッションに身を包んだ美青年で
さらに紳士的とチャーミングなキャラクターなのである。
日本の文学に造詣が深い著者はアオノ・ギンタローという日本人を登場させ、
作品の中で日本人論を展開している。
翻訳をした沼野恭子さんは沼野充義さんの奥様。

Subaru0127_t_1そのボリス・アクーニンのインタビューが掲載されている
すばる4月号の特集は「21世紀ドストエフスキーがやってくる」。
ドストエフスキーといえば、
昨年9月に創刊された光文社「古典新訳文庫」の
『カラマーゾフの兄弟』が全3巻あわせて7万8千部、売れたらしい。
私は未読だが、この新訳がかなり読みやすいとのこと。

この秋、18年ぶりに河出書房新車から世界文学全集が発売されるという
ニュース
もある。
古典の新訳ブームがきてる感じ。

新釈 走れメロス 他四篇『新釈走れメロス』は『夜は短し歩けよ乙女』が評判の
森見登美彦の最新作。
「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」といった
日本の古典の名作のパロディ。
(パロディっていっちゃっていいのか?)
舞台はすべて京都、登場人物のほとんどが大学生。
何というか森見さんの作品に限らないのだけれど、
1冊2時間で読めちゃう最近の日本文学の傾向はいかがなものか。
私は古い人間ですので、小説に文学的表現なんかを期待するわけで
そんな友達に話すような文体で書かれても…と思うわけです。
「山月記」はまあまあ、よかったかな。
著者の日記はおもしろいです。

夢十夜 他二篇夏目漱石『夢十夜他二編』も読んだ。
これを映画化しちゃいかんでしょう→ユメ十夜公式サイト
映画、見てないけれど、公式サイトを見る限り、
画面が明るすぎるように思います。
夢ってもっと薄暗くてぼんやりとしたものじゃない?

しばらくごぶさたしていた本好きのSNS「本を読む人々。」にはまってます。
現在の参加人数は700人。
作家別コミュ、ジャンル別コミュいろいろあります。
楽しいですよん。

家守綺譚読書中はその「本を読む人々。」で薦めていただいた
梨木香歩『家守綺譚』
名前のイメージで勝手に若い女性作家だと思ってた。
内容もイマドキのペラペラした話なんだろうと。
が、今、半分くらい読んだところだけどすばらしくいい!
感想はまた後日。
今月、文庫化される『村田エフェンディ滞土録』も楽しみ。

しかし、もうちょっとうまく感想を書けないものか、自分。
作家のことをとやかくいうまえに、自分の文章力をもっと磨けっつうの。

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March 17, 2007

西行、西行、西行

Saigyo

“西行”関連の本を3冊、読みました。

西行とは、平安時代の歌人である。
が、もともとは武士で、実家もお金持ちで、
時の天皇、鳥羽院にもかわいがられていたエリート。
しかし、23才の時に出家。
出家の理由は、白河院の愛妾にして鳥羽院の中宮であった
待賢門院璋子への恋に苦しんだゆえともいわれているが、
実際のところは謎。

西行が生涯、愛した待賢門院璋子は鳥羽院との間に崇徳院を産むが
実は、鳥羽院の祖父である白河院の子であるといわれていて
鳥羽院は崇徳院を「叔父子」と呼び忌み嫌う。
後に崇徳院は、同じ待賢門院璋子の子である後白河法皇と対立し
保元の乱が起こるのだが、戦いに敗れ、讃岐に流される。

待賢門院璋子は、白河院が崩御すると、華やかな人生が一転。
夫、鳥羽院は、璋子に代わって藤原得子(美福門院)を寵愛し、
得子が産んだ生後三ヶ月の躰仁親王を立太子させ
崇徳天皇から皇位を譲り受けさせる。
その後、得子を標的にした呪詛事件が相次いで発覚し、
それを裏で引いているのが待賢門院璋子と世間で騒がれ、
結局、璋子は法金剛院において落飾(出家)。

すごい、どろどろっぷり(笑)
西行を主役にして大河ドラマができるんじゃないだろうか。

さて、私が読んだ3冊とは…

西行
白洲さんが西行ゆかりの地を旅しながら、西行について解説する紀行文。
地図や写真も満載で、読んでいて楽しいです。
こういう歴史がからんだ紀行文をもっと読みたい。
何かオススメあったら教えてください。

白道
こちらも西行について書かれたノンフィクションですが
時々、筆が走りすぎて、小説タッチになってしまうところがあり
フィクションとノンフィクションの境が、非常に曖昧です。
また、白洲さんと比べると、寂聴さんの文章は、西行への想いが激しすぎて、
やや暑苦しいです(・∀・;)
西行のエピソードは、白洲さんの『西行』とかなり内容が重複するのですが
在原業平、徐福、安部貞任のことなど、西行とは直接かかわりのない人々の
エピソードがおもしろいです。

西行花伝
こちらは西行の生涯を描いた小説です。
21章に分かれていて、章ごとに語り手が変わります。
いやあ、とにかく、長かった。(707頁)
文章自体は読みやすくて、さらさら読めます。
これを読んで、西行の生涯についてはよくわかったのですが、
どうしてもわからないのが西行の考え方です。
果たして、心を無にする仏教と、心を浮き足立たせる歌は
矛盾しなかったのか。
ところどころに、西行の仏教に対する考え方が書いてあるのですが
どうも、それが私の心にカチッとはまらないんですよねえ…
アミニズムに近い考え方なのかなあ。
西行が熱心に語りつづけた「歌による政治(まつりごと)」というのも
よくわからず…
でもこの『西行花伝』は、いいです。
オススメ。

<自分メモ>
P.338
P.516
P.537
P.566

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September 22, 2005

『堕落論』by坂口安吾

4101024022堕落論
坂口 安吾

新潮社 2000-06
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太宰治とセットで語られることの多い人なので
てっきりダメダメちゃんなのかと思ったら
とてもしっかりした内容のエッセイだった。
人生、悟りきっているという感じ。
ブルノー・タウト、宮本武蔵、小林秀雄、太宰治…
ばっさばっさと斬っていきます。
タウトが愛した日本の寺院をふんっといい
小菅刑務所を美しいという安吾。

小菅刑務所とドライアイスの工場と軍艦が、
なぜ、かくも美しいのか。
ここには、美しくするために加工した美しさがいっさいない。

そして、文学についても…

文学も美しく見せるための一行があってはならぬ。
どうしても書かねばならぬこと、書く必要のあること、
ただ、そのやむべからざる必要にのみ応じて
書きつくされなければならぬ。

太宰に関するエッセイでは「人間は生きることが全部である」とも
書いている。
美しくなくてもいいからとにかく生きる。
そうそう、人生なんてそんなに美しいものじゃない。
年とともに容貌も衰えてくる、記憶力も落ちてくる、気力も萎える。
が、そこでもうダメだと思わずに、とにかくじたばたしてみる。
それが「生きる」って事なのではないかと思う。

最近の小説に感じていた違和感も、
安吾のエッセイを読んですっきり。

小説におもしろさは不可欠の要件だ。

しかし単なる読み物のおもしろさのみでは文学ではあり得ない。

読物は文学ではない。

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May 06, 2005

『壁』by安部公房


安部 公房

新潮社 1969-05
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ひさしぶりの安部公房です。
昨年、『砂の女』『燃えつきた地図』『箱男』を読みましたが
この『壁』はさっぱり意味がわかりませんでした。
もう読むのが苦痛で苦痛で。
「安部公房コンプリートするぞ!」という決心も萎え気味です。

これといったストーリーはありません。
名前をなくした男の話『S・カルマ氏の犯罪』
影を盗まれてしまう詩人の話『バベルの塔の狸』
4つの短篇から成る『赤い繭』
の3部作です。

どの話からも、タイトルである「壁」は感じられませんでした。
あとがきでは、名前をなくした男ととゴーゴリ作『鼻』の鼻をなくした主人公が
似ていると書かれていますが、
もちろんゴーゴリの方が断然、よく書けています。

何かを主張したい気持ちはよくわかりますが、
読者に伝わらなければ意味がありません。
「わからない読者がバカなのだ」というのなら“作家などいなくなってしまえ!”です。

ちなみにこれは芥川賞受賞作品。
どうも私は芥川賞受賞作品は苦手だな…ぶつぶつ…

<関連記事>
『砂の女』by安部公房
『燃えつきた地図』by安部公房
『箱男』by安部公房

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October 15, 2004

『痴人の愛』by谷崎潤一郎

痴人の愛
谷崎 潤一郎

発売日 
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<ストーリー>
カフェで見初めた美少女ナオミを妻にした譲治が、彼女の肉体に翻弄され身を滅ぼしていく

感想 → _| ̄|○

当時は画期的な作品だったのかもしれないが、若い女の肉体に翻弄されるという設定がありがちで退屈。

そもそも、昨今の男性は進化してもっと賢くなっている。
自分の生活を脅かさない程度に、バランスよく女性とつきあっている。
ゆえに、女性に溺れたりはしない。
と、私は思っている。

先週のYomiuriWeeklyで「結婚できない男たち 30代男の未婚率急上昇」という特集が
組まれていた。
「責任負いたくないビビリー君、増殖中」だそうで・・・
「負け犬」と開きなおった女たちとビビリー君増殖中の日本は、一体、どうなっていくのであろうか(笑)

ところで、譲治は15才のナオミを見初めたわけで、まあロリコンである。
実は文豪にロリコンは多いらしい。

コウカイニッシ。」さんで見つけた記事である。
エキサイトブックスの今回の特集がなんと「萌える文学ロリロリ篇
ゲーテもドストエフスキーも太宰もみんなロリコン・・・だそうです。
この記事を読んでいたら文豪がみんな変態に見えてきました(笑)

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September 26, 2004

『山椒魚』by井伏鱒二

ibuse.jpg


山椒魚
井伏 鱒二

発売日 
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いつもコメントしてくださる多摩のいずみさんに「井伏鱒二の「へんろう宿」はいいですよ」と薦めていただき、
今回、この短編集を読むことと相成った。
表題作の「山椒魚」を読むのは学生の時、教科書で読んで以来である。

あの頃は「かわいそうな山椒魚」くらいの感想しか持たなかったが、今回は切々と胸に迫るものがあった。
長い年月を経て、私も何度か人生の挫折を経験し、山椒魚の気持ちがやっとわかる年になったのだと思う。

「一生涯ここに閉じ込めてやる!」と息巻いた山椒魚は、最後に蛙にこう尋ねる。

「お前は今どういうことを考えているようなのだろうか?」
相手は極めて遠慮がちに答えた。
「今でもべつにお前のことを怒ってはいないのだ」

井伏作品は最後の一行がずしんとくる。
どの短編も淡々と終わるのだが、そこには人生の悲哀のようなものが残る。
あまりの淡々とした終わり方に物足りなさを感じる方もいるかもしれない。
しかし、年を重ねるとともにその良さがわかる時がくると思う。

(*゜ロ゜)ハッ!!
って事は私も年を取ったって事なのね_| ̄|○

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September 02, 2004

『ドグラ・マグラ』by夢野久作

ドグラ・マグラ (上)
夢野 久作

発売日 1976/10
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長かった・・・_| ̄|○ 
後半は退屈して斜め読みした。

冒頭の「・・・お兄様、お兄様、あたしです」あたりはゾクゾクして、
これからの展開に大いに期待したのだが・・・

「あれっ?」と思い出したのは阿呆陀羅経の歌で「チャコポコ、チャカポコ」が始まったあたりだ。
「チャカポコ」を初め、教授の遺言書やら論文が長ったらしすぎる。
輪廻転生、精神医学、心理遺伝などおもしろいテーマのはずなのに、何しろ冗長。
シーンがほとんど教授室のまま変化がないというのも退屈の原因。

テーマとしては好きなテーマなんですけどねえ・・・

そんな時、volbiccoのemiさんが、同じ著者の「人間腸詰」と「あやかしの鼓」が
オススメと書いていらっしゃった。
機会を見て、読んでみたい。

はっ!これを退屈だと思う私は、もしかして狂人なのか!?
・・・ブウウ・・・・・・・ンンン

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July 20, 2004

『金閣寺』by三島由紀夫

金閣寺
三島 由紀夫

発売日 1960/09
売り上げランキング 6,042

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これは実際に起きた「金閣寺放火事件」がもとになっている。

しかし、三島の『金閣寺』を読んでも、いまひとつ主人公の気持ちがわからない。
例によってゴテゴテした彼の文章からは主人公がなぜ、放火にいたったのか切実に伝わってこない。
エウリュディケーなんて舌をかみそうなギリシア神話の登場人物なんか
出してこなくてもいいだろうと思わずツッコミたくなる。

この主人公と実際に放火した犯人は似ていないという話もある。
むしろ、やたら「美」を意識する主人公に私は三島を見る。

空襲で腸の露出した工員を見た主人公はこう思う。

なぜ露出した腸が凄惨なのであろう。
何故人間の内側を見て、悄然として、目を覆ったりしなければならないのであろう。
何故血の流出が、人に衝撃を与えるのだろう。
何故人間の内臓が醜いのだろう。
それはつやつやした若々しい皮膚の美しさと全く同質のものではないか

このあたりのくだりなど、まさに三島自身を感じさせると思うのだが・・・

この事件を取り扱ったノンフィクションに水上勉の『金閣炎上』がある。
こちらはかなり事件に忠実な内容だという事なので機会を見て、読んでみたい。

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