September 08, 2007

『あじあ号、吼えろ』『カラマーゾフの兄弟』

●今週、読んだ本
『あじあ号、吼えろ』by辻真先
あじあ号、吼えろ!

あじあ号とは昭和9年から昭和18年にかけて満州で運行していた
特急列車である。
この小説は、ソ連参戦が噂される昭和20年8月の満州が舞台。
国策映画撮影のため、満鉄が誇る超特急あじあ号がハルピンを出発した。
乗客は、東邦映画のスターとその付き人、ハルピンの高級料亭の芸者、
満映の女優とその付き人、満州日日の記者、関東軍中尉。
そして貨車には謎の積み荷。
果たして列車はどこへ向かうのか?

著者自身が鉄道ファンということで、鉄道冒険小説を書きたかったのだとか。
実際、鉄道マニアにはたまらない作品だと思う。
が、鉄道マニアでない私でも楽しめた。
先が気になり、一気に読んでしまう。
しかし、戦争がテーマであるにも関わらず、全体的に作品が軽いのが気になった。
登場人物もみな爽やかで、悲壮感がない。
それでいて後半、ばたばたと人が死んで(←ネタばれOKの方のみドラッグしてね)
後味が悪い。

『カラマーゾフの兄弟』byドストエフスキー
カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

話題の亀山訳で再読中。
(一度目は原卓也訳で読みました)
今週は2巻を読了。

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August 31, 2007

『桜庭一樹読書日記』『去年ルノアールで』『ハイペリオンの没落』『陸行水行』「沢木耕太郎 真夏の夜の夢」

●今週、読んだ本
『桜庭一樹読書日記』by桜庭一樹
桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。

桜庭一樹が縦横無尽に読んで過ごした、疾風怒濤の1年間。
「Webミステリーズ!」で大好評を博した読書エッセイ。
本文への注釈や書誌データなどを盛り込んで単行本化。
冒頭部分と続編をコチラで読むことができます。

彼女の作品は『赤朽葉家の伝説』しか読んだことがなくて、
正直、イマイチだったのだが、
この本を読み、桜庭さん自身はすごく好きだと思った。
まず生活していくうえにおいて、何よりも読書に重点を置いていることに
好感が持てた。
(作家の日記なので、どこまで本当かはわからないが、
少なくとも桜庭さんに関しては真実なんじゃないかと思う)
桜庭さんの読書量は尋常じゃない。
読むスピードもかなり早い。
読書日記だからかもしれないが、本屋ばかり行っている。
そして桜庭さんの文章には本への愛情が溢れている。
ここで紹介されている本、すべてを読みたくなってしまう。
そんな1冊だった。
昨年出版された『桜庭一樹日記』も読んでみようかなあ。

『去年ルノアールで』byせきしろ
去年ルノアールで

私は今日もルノアールにいた。
客や店員の様子を眺めるうちに、「私」は妄想を暴走させ、
無益な1日を過ごしてしまう…。
無気力派文士の初エッセイ集。
『relax』連載に加筆・修正し、書き下ろしを足して書籍化。
現在、ドラマ化され、TV東京で放送中
秋にはDVD化も予定されている。

街から喫茶店がどんどん消えていっている。
代わりに増殖しているのが○ターバックスや○トールのような
コーヒーショップだ。
それらの店にいるのは、オシャレを気取る若者ばかりで
この本に登場する
“でかでかと黒豹がプリントされたトレーナーを着たおばさん”や
“昼寝するサラリーマン”や“競馬新聞を赤ペンでチェックするオヤジ”はいない。
コーヒーショップでは、みな、コーヒーを飲むとそそくさと立ち上がり、
次の目的地へと向かう。
あくまでも一時的な休憩だ。
しかし、喫茶店の客に次の目的地なんてない。
何の仕事をしているのかもわからない怪しげな常連が、
昼過ぎになると集まりだし、だらだらと株やゴルフの話をし続ける。
そういう場である喫茶店が消えつつあるということは、
日本という国が余裕のない国になりつつあるということだ。
私はコーヒーショップに、オシャレや日常の効率を強要するファシズムさえ感じる。
そういう意味で、ルノアールは「余裕のある国、日本」の最後の砦なのだ。
ルノアールには世間の流れに負けずがんばってもらいたいと思う。

『ハイペリオンの没落』byダン・シモンズ
ハイペリオンの没落〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)ハイペリオンの没落〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

先週、読んだ『ハイペリオン』の続き。
正直、イマイチ…。
『ハイペリオン』は文学の匂いがする作品だったのだが、
『ハイペリオンの没落』は巡礼者VSシュライク、
連邦政府VS宇宙の蛮族アウスター、双方の戦闘シーンの連続であり、
スペースオペラそのもので娯楽作品としての要素が強い。
これは小説を読むより映画で見る方が楽しめるのでは?
(『ハイペリオン』は映画化の話が出ているようですが…)
連邦政府CEOであるグラッドストーンにお抱え画家として招かれた
M・セヴァーンが唯一、文学的な存在に感じた。
しかし、そもそも私が文学的、非文学的と感じる差異は何なんだろう?

『陸行水行』by松本清張
陸行水行 新装版 (文春文庫 ま 1-110 別冊黒い画集 2)

「形」「陸行水行」「寝敷き」「断線」の4作を収録
表題作である邪馬台国について書かれた「陸行水行」が読みたくて
買ったのだが、私が記憶している作品と違った。
邪馬台国について書かれたこれではない短編を読んだ記憶があるのだが…

●今週、聴いたラジオ
沢木耕太郎の「真夏の夜の夢」
TBSで8月19日の深夜1時~4時に放送された。
生放送。
私は録音しておいたものを今週、聴いた。
番組のメインは対談。(ただしこちらは録音)
ゲストは井上陽水と瀬戸内寂聴。
沢木さんの声を初めて聞いた。
語り口が優しく、すっと耳にはいってくる声である。
音楽もJAZZありPOPSありでとてもよかったのだけど、
曲目がわからなかったのが残念。
沢木さんの代表作『深夜特急』を映像化した「劇的紀行深夜特急」の主題歌である
陽水さんの「積み荷のない船」(いい曲です!)がかかってました。

●たら本
Tara37
たら本、第37回が始まっています。
どなたでも参加できるTB企画。
テーマに沿った本を紹介する記事を書き、
主催者さんや他の参加者にトラックバックやコメントをするという趣旨です。
詳細はコチラ
今回の主催は「本を読む女。」のざれこさん
お題は「犬にかまけて」です。
私は今回、紹介のみでお休みします。

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June 23, 2007

『充たされざる者』『さようなら、いままで魚をありがとう』『ほとんど無害』『迷宮パノラマ館』『かくれ里』

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昨夜、NHK「プレミアム10」でユーミンのライブをやっていた。
音楽プロデューサーの寺岡呼人が企画したもので
ゆず、桜井和寿も参加していた。
何だかんだ20代の頃、一番よく聴いていたのはユーミンなので
ライブを見ているうちに、その頃の自分がよみがえってきて
ユーミンの歌ではないが「あの日に帰りたい」と思ってしまった。
しかし、ゆずファンの方が「ユーミンという人がよかった」と
ネットに書いていらして
「もう若い人にとってユーミンは“ユーミンという人”なんだなあ」と
寂しい気持ちになった。
一方で私にとってもゆずは“ゆずという人”だったりするわけだが…
どうして人は、今の音楽でなく、若い頃に聴いた音楽に
強くひきつけられるのだろう?
その直後が「爆笑問題のニッポンの教養」という番組で、
爆笑問題が東京理科大学薬学部の田沼靖一教授と
「ヒトはなぜ死ぬのか?」をテーマに語っていた。
田沼教授「遺伝子にはあらかじめ死がプログラムされている」
太田「では、遺伝子を操作すれば不死も不可能ではない?」
田沼教授「できたとして不死に何の意味があるのか?」
ちょうどユーミンの番組を見て「若い頃にもどりたい」と
思ったところだったので考えさせられる内容だった。

●今週読んだ本
『充たされざる者』byカズオ・イシグロ
充たされざる者

世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。
「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、
日程や演目さえ彼には定かでない。
ライダーはそれとなく詳細を探るが、
奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り……。

帯に「イシグロがカフカを超える」とあるが
それはあまりにも不遜なキャッチコピーじゃないか?
確かにカフカの『城』に似ている。
が、それも前半まで。
町の人々がみな人間的過ぎるし、ストーリーも明確で、
作品説明にある「悪夢のような不条理」は感じない。
一方、『城』の主人公Kは最後まで外来者であり続ける。
村人は人間であって人間でないようなまさに悪夢のような存在。
と、カフカファンである私は帯のキャッチコピーにカチンとして
カフカと比較して読んでしまったが
そうじゃない読み方ももちろんあると思う。
ネットで検索したらボリス、シュテファン、クリストフ、ブロッキーを
それぞれライダーの少年期、青年期、壮年期、老年期ととらえた感想があった。
え、そうなの?
私はこの4人はまったく別のキャラクターに思えたのだけれど…(・∀・;)

『さようなら、いままで魚をありがとう』byダグラス・アダムス
『ほとんど無害』byダグラス・アダムス
さようなら、いままで魚をありがとうほとんど無害

銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。
どこをとっても平凡な英国人、アーサー・デントは
最後の生き残りとなる。
アーサーはたまたま地球にいた宇宙人フォードと
宇宙でヒッチハイクをするはめに。

というストーリーの『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズ第4弾&第5弾。
これでシリーズをすべて読み終えたことになる。
シリーズが後半になるに連れて、コメディからシリアスな内容に移行し、
熟成されていく感じがよかった。
作者の年齢とも関係があるのかもしれない。
ファンは1~3巻を正篇、4&5巻は「三部作の4番目と5番目」と呼び
分離して考えるようだが、
私は4&5巻あっての『銀河ヒッチハイクガイド』なんじゃないかと思う。
4巻ではアーサーが恋をして、5巻でその恋を失ったアーサーが
サンドイッチ職人として幸せそうに暮らしているところ、じーんとした。
ラストの評判が悪いようだが、私は嫌いじゃない。
映画も近いうちに見たい。

『迷宮パノラマ館』by芦辺拓
迷宮パノラマ館
著者が若い時に書いた短編と最近の作品であるショート・ショート、
講談・ラジオ台本を集めた作品集。
帯には
「ミステリ、SF、ホラー、講談…奇才・芦辺拓が贈るひとり雑誌」
と書いてある。
「太平天国の乱」と「クトゥルー神話」を組み合わせた
『太平天国の邪神』がよかった。
ショート・ショートはやはり短すぎて物足りなかった。
芦辺拓が好きという方以外にはオススメできないかも…

『かくれ里』by白洲正子
かくれ里

白洲正子が朽木谷、菅浦、久々利といった
知る人ぞ知るかくれ里を訪ねる紀行エッセイ。
深い木立にかこまれた神社に残されている古面、
政変で都を追われた天皇たちの悲しいエピソード、
山奥に残る古代信仰のあと。
しかしこの作品が発表されたのは1971年。
もうこれらの土地も観光客によって荒されてしまっているだろうか。
日本書紀、万葉集、太平記といった日本の古典をもっと読み、
京都周辺の詳細な地図を手元に置いて再度、読みたい。

P.11
バスから押し出される観光客は、信仰とも鑑賞とも、
いや単なる見物からも程遠い人種に違いない。
ただ隣の人が行くから行く…(中略)
仏像や古美術も…(中略)不断の尊敬と愛情によって
磨かれ、育ち、輝きを増す。

P.16
伎楽はおそらくギリシャから西域を経て、中国に渡り、
朝鮮経由で、七世紀の頃、日本に将来された芸能だが、
外国では滅びてしまったその伝統が、日本の片田舎に
こうして生き残っていることに…(中略)
日本の国そのものが、世界のかくれ里的存在といえるのでは
ないだろうか。

P.42
明け行く空と、落ちる月影に、軽の皇子への希望と、
草壁の皇子への追慕を見るのは行きすぎで、
歌はそのままの姿で味わうのが一番いいのである。

P.232
天然記念物に指定されてから急にはやり出したと聞くが、
やたらに指定するのも考えものである。
指定されたために、全滅した植物や鉱物は多い。

P.279
現代人はとかく形式というものを軽蔑するが、
精神は形の上にしか現れない。
私たちは何らかのものを通じてしか、
自己を見出すことも、語ることもできない。
そういう自明なことが忘れられたから、
宗教も芸術も堕落したのである。

P.298
あえて言えば、古事記も、日本書紀も、神話を総括し、
伝説を整頓しただけで、作り話は一つもない。
神話とフィクションのちがいを、私たちはもっとはっきり
心得ておくべきだと思う。

●読書中
『ユリシーズⅠ』byジェイムズ・ジョイス
ユリシーズ〈1〉
スティーヴンがブルームの新聞社にやってきたところ。
英語の修辞学がわからないので、そのあたりが楽しめないのが
ちょっと悔しい。

『古代からの伝言~日出づる国~』by八木荘司
古代からの伝言 日出づる国
「日本書紀」の世界を小説化した作品。

●新たに注文した本
読む本がたまっているので今週はショッピングなし。

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May 07, 2007

『百万のマルコ』『邪馬台国はどこですか?』『占星術殺人事件』『明智小五郎対金田一耕助』『猫のゆりかご』

●『百万のマルコ』by柳広司
百万のマルコ

囚人たちが退屈に苦しむジェノヴァの牢。
新入り囚人、マルコ・ポーロは、彼らに不思議な物語を語りはじめる。
いつも肝心なところが不可解なまま終わってしまう彼の物語。
囚人たちは知恵を絞って真相を推理するのだが……。

物語の形式としてはアシモフの『黒後家蜘蛛の会』を
思い浮かべてもらえればいいです。
ただ、謎かけ自体は一休さんの頓知みたいな感じ(笑)

●『邪馬台国はどこですか?』by鯨統一郎
邪馬台国はどこですか?

歴史ミステリ連作集。
カウンター席だけのバーに客が三人。
某私立大学文学部教授、専攻は日本史の三谷敦彦。
同じ大学の文学部助手、専攻は世界史の早乙女静香。
(ちょっと気が強い)
そして歴史研究家、宮田六郎。
宮田の爆弾発言に、静香が食ってかかって始まった歴史検証バトル。
回を追うごとに熱を帯びて……。
テーマは、ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、
光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活。

多分、本物の歴史学者が読んだら噴飯物なんだろうけれど、
こんな歴史の見方もあるってことで。
そもそも2千年前のことなんて、正解を出しようがないのだから
ロマンがあった方がいいよね。

●『占星術殺人事件』by島田荘司
占星術殺人事件

怪事件はひとりの画家の遺書から始まった。
その内容は、六人の処女から肉体各部をとり、星座に合わせて
新しい人体を合成するというもの。
画家は密室で殺された。
そして六人の若い女性の死体が次々と見つかる。

これ、すぐ、トリックがわかっちゃった。
ミステリーの名作といわれているけれど
御手洗が、ホームズやポワロのように天才肌じゃないのがつまんない。
(私は天才肌の探偵が好き)
京都で石岡と別れて、さんざん思わせぶりな行動を取って、
結局、何もつかめてなくて、
最後、石岡のヒントで「あっ!!!」でしょ?
この御手洗シリーズってもしかして石岡が主人公で
御手洗はサブキャラ?

●『明智小五郎対金田一耕助』by芦辺拓
明智小五郎対金田一耕助

古今東西の名探偵、パスティーシュ短編集。
登場するのは、明智小五郎、金田一耕助、フレンチ警部、
ブラウン神父、エラリー・クイーン…
ポワロは登場しないけれど、
「そしてオリエント急行から誰もいなくなった」なんていう作品もある。
『グラン・ギニョール城』もそうだったけれど、
芦辺さんってミステリーの雰囲気作りがとても上手。
昭和12年の大阪駅に明智小五郎が降り立ったシーンなんて
目に浮かぶようでしたよ。
「少年は怪人を夢見る」は両親に捨てられてしまった少年が
危険な目にあって、読者ははらはらさせられるのだけれど、
実はその少年は…
あっ!と驚かされます。
芦辺拓は今後も読んでいきたい作家さんです。

●『猫のゆりかご』byカート・ヴォネガット・ジュニア
猫のゆりかご

主人公のジョーナはライター。
原爆を発明したノーベル賞物理学者のハニカー博士に興味を持ち、
博士の息子に手紙を書く。
博士には娘が一人、息子が二人いたが、
一番目の息子は行方不明だった。
ある日、ジョーナはニューヨーク・サンデイ・タイムズの特別付録に
博士の一番目の息子、フランク・ハニカーの名前を見つける。
なんと、彼はサン・ロレンゾ共和国科学大臣になっていた。

「本を読む人々」というSNSで「励まし合って読書会。」という
みんなで毎月1冊、課題本を読んで語り合うというコミュニティがあり
今月の課題本がこの『猫のゆりかご』なのでした。
同じ著者の『タイタンの妖女』も好きだけど、これもすごくいい。
カート・ヴォネガットとは相性がいいのかも♪
『猫のゆりかご』ってタイトルがよくないなあ。
もっとのんびりしたストーリーを想像しちゃうもの。
英語では、“猫のゆりかご”って“あやとり”という意味なんです。
それにしたって、この物語にはもっとドラマチックなタイトルが似合うと思うな。

読書中はボリス・アクーニンの『リヴァイアサン号殺人事件』
リヴァイアサン号殺人事件
帯を高村薫が書いてますー、きゃー。

貴族の館での大量殺人。謎の財宝。
そして、豪華客船に怪しげな人々と名探偵が揃った。
さて、犯人は誰か─
とくれば、もう欠けているものは何もない。
優雅なグランド・ミステリーが現代ロシアで甦ったことを悦ぼう。
スリルもどんでん返しも、精巧な銀細工のような贅沢さである。

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April 21, 2007

『親指のうずき』『グラン・ギニョール城』

※この記事は、ネタばれになりそうな箇所は、
ドラッグして反転で読むようになってます。

本格ミステリを2冊、読んだ。

親指のうずき

おしどり探偵トミー&タペンスシリーズ。
昨年、「奥さまは名探偵」というタイトルで映画化されました。

トミーとタペンスはおしどり夫婦。
ある時、二人は養老院にいるトミーの叔母さんを見舞いに行く。
タペンスはそこの入居者である老女に
「あの暖炉の奥に埋まっているのはあなたのお子さんなの?」
と聞かれる。
その後、トミーの叔母さんが老人ホームで亡くなる。
遺品を整理していたタペンスは、
その中の一枚の風景画に胸騒ぎを覚えた。
描かれている運河のそばの一軒家に見覚えがあったのだ。
しかもその絵のもとの持ち主はくだんの老女であり、
老女は失踪してしまっていた。
タペンスは絵に描かれた家と老婦人を探す旅に出るが…

読み終わって、ぽか~んとしてしまった。
絵に描かれていた家には思わせぶりのエピソードがたくさんあり、
これがどうつながっていくのかしら?とワクワクしながら読んだのだが…
ミステリーの落ちとして、アリなの?これは?
だって、結局、犯人である(ランカスター夫人)は(惚けている)ってことでしょう?
これはミステリーでよくいう“フェアプレイ”ではあるの?
何だか腑に落ちない作品でした。

グラン・ギニョール城

欧州の古城《グラン・ギニョール城》に招かれた名探偵ナイジェルソープ。
しかし、その閉ざされた城では次々と惨劇が起きる。
一方、帰阪の中途で怪死事件に遭遇した森江春策は、
調査を進めるうちに探偵小説『グラン・ギニョール城』の存在に
行き当たる。
やがて被害者宅に掛かってきた謎の電話の主が、森江にこう囁いた。
「グラン・ギニョール城へ……来たれ」。

途中、森江が(現実の世界から小説の世界に入りこんでしまう)のですが
それは(和歌山の山奥にあるホテルで日本人である劇団員たちが
探偵小説『グラン・ギニョール城』を演じている
)という設定なんですね。
それが何だかチープでねえ…。
私はむしろ(そのまま、本当に森江が小説の中に入りこんでしまった
という設定の方がよかったなあ。
たとえ、それによって、ミステリーとしては破綻してしまったとしても。
ラストでわかる犯人と動機もイマイチかなあ。
日下邦彦)がそこまでして(4人を殺したかった)理由がよくわからない。
ノイローゼ)だから?
犯人が(惚けいている)とか(ノイローゼ)だからってのは
やっぱりフェアじゃないと、私は思うんですよ。

私は、本格ミステリが大好きなのですけど、
本格ミステリって、時代に取り残された感がありますよね。
この2作品を読み
本格ミステリが生き残るための道って何だろう?
と、ふと考えてしまいました。

※本格ミステリ=推理小説のうち、謎解き、トリック、頭脳派名探偵の活躍を
主として書かれているもの

新たに6冊、購入。
『占星術殺人事件』島田 荘司 講談社
『論理の蜘蛛の巣の中で』巽 昌章 講談社
『チムニーズ館の秘密』アガサ・クリスティー 早川書房
『邪馬台国はどこですか』鯨 統一郎 東京創元社
『明智小五郎対金田一耕助』芦辺 拓 東京創元社
『アラビアの夜の種族』古川 日出男 角川書店

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April 14, 2007

『陰摩羅鬼の瑕』『邪魅の雫』by京極夏彦

ネタばれしないように書くつもりですが、
未読の方は読まない方がいいと思います。

『陰摩羅鬼の瑕』by京極夏彦
文庫版 陰摩羅鬼の瑕

「おお!そこに人殺しが居る!」
探偵・榎木津礼一郎は、その場に歩み入るなりそう叫んだ―。
嫁いだ花嫁の命を次々と奪っていく、白樺湖畔に聳える洋館「鳥の城」。
その主「伯爵」こと、由良昂允とはいかなる人物か?
一方、京極堂も、呪われた由良家のことを、元刑事・伊庭から耳にする。
シリーズ第八弾。

洋館大好きなので、洋館が舞台なのは嬉しい。
しかし、いつもの妖しさがまったくない、なぜだろう?
妖怪と洋館が合わないからか?
京極堂の妖怪薀蓄も少なかったように思う。
宗教薀蓄も楽しみなのだが、
今回のテーマは儒教とハイデッガーであまりおもしろくなかった。
登場人物が少ないうえに舞台がほとんど一箇所なので変化がない。
ミステリーとしても途中である程度、話が見えてしまう。

『邪魅の雫』by京極夏彦
邪魅の雫

昭和二十八年夏。
江戸川、大磯と相次いで毒殺事件が発生する。
そして──平塚。
被害者の女性は偽名で生活し、身許不明。
彼女に付き纏っていた不審な男、死体の第一発見者、
香具師の破落戸(ごろつき)、殺意に憑かれた男。
夫々の物語が渦巻くなか、増えていく毒殺死体。
連続事件としての捜査は混乱を極め、ついにあの男が登場する!

MouRa特設サイト(プロモーション映像有り)

いつもより京極堂の登場場面が少なくてつまらん。
今回は妖怪薀蓄も宗教薀蓄もない。
ネタ切れか?
今回の京極堂の薀蓄は書評についてと、
伝説と歴史について。
登場人物が多いうえに複雑に入り組んでいるので
それを追うことに必死になってしまい(初めて相関図を作ったよ!)
小説そのものを楽しめない。
途中からナナメ読みした。
(少なくともオンモラキはナナメ読みはしなかった)
あの人がキーマンなんだろうなあというのは途中でわかってしまう。
ただ、今まで、榎木津はそんなに好きじゃなかったのだが、
今回の榎木津はかっこよかった。

これで、京極堂シリーズはすべて、読み終えた。
私は京極堂の薀蓄ファンなので、『百鬼夜行』や『百鬼徒然袋』は
読まなくてもいいかなあと思っている。
過去の京極堂シリーズを読み返したくなった。
この流れで何だか本格ミステリーが読みたくなって3冊注文。

『赤朽葉家の伝説』by桜庭一樹
赤朽葉家の伝説

「山の民」に置き去られた赤ん坊。
この子は村の若夫婦に引き取られ、
のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、
赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。
これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。
千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。
高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、
鳥取の旧家に生きる3代の女たち、
そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を
比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。

『グラン・ギニョール城』by芦辺拓
グラン・ギニョール城

欧州の城グラン・ギニョール城に招かれた名探偵ナイジェルソープ。
客の間には緊張が漂い、嵐の夜を境に惨劇が続く。
一方、弁護士・森江春策は、偶然遭遇した怪死事件の手がかりとなる
探偵小説『グラン・ギニョール城』を探し当てたが、
彼を嘲笑うかのように小説世界は現実を浸食してゆく。
虚実混淆の果てに明らかにされる戦慄の真相とは?

『百万のマルコ』by柳広司
百万のマルコ

囚人たちが退屈に苦しむジェノヴァの牢。
新入り囚人〈百万のマルコ〉ことマルコ・ポーロは、彼らに不思議な物語を語りはじめる。
いつも肝心なところが不可解なまま終わってしまう彼の物語。
囚人たちは知恵を絞って真相を推理するのだが……。

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October 03, 2006

『ラー』by高野史緒

ラー

三浦しをんの『三四郎はそれから門を出た』に

ピラミッドの謎を知りたいがためにタイムマシンを作った
ジェディ(ピラミッドおたくの中年男性)は、
古代エジプトの地で信じられないものを目撃する。
建設途中であるはずのピラミッドが、
なぜか「発掘中」でだったのだ。
古代エジプト人たちは、砂に埋もれたピラミッドを
必死に掘り返しているところである。

と紹介されていて、その設定にひかれ購入。

設定は好みなのですが、登場人物がベタ。
読んでいるうちに、少女漫画の絵が思い浮かんでしまう。
男なのに、おじさんなのに、瞳の中で星がキラキラしている少女漫画。
少女漫画で描かれるおじさんって、本物のおじさんとはかけ離れているでしょう?
主人公のジェディはそんな感じ。
それから、作者が「エジプトはこんなもんだろう」と考えているイメージが貧困。
風景のスケールが小さい。
王位更新の儀式セド祭なんて、町の盆踊りくらいのスケールしかない。
そのくせ、毒には「ウエケドウ」、心理には「マアト」と、冥界には「ドウアト」と
それっぽいふりがなをいっぱいつけているのがうざい。
「そう、判る。
視覚に頼らなくても、瞳を閉じると、その輝く印象は逆転し、
空はどこまでも軽く、遠く、淡い白の印象となり…」
といった、著者自身が自分の文章に酔ってしまっている描写もうざい。
そして、時間跳躍にタイムマシンを使うのがあまりに安易。
時間跳躍をどうやったら読者に不自然さを感じさせないかが
SF作家の腕の見せどころじゃないか!

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May 05, 2006

『リヴィエラを撃て』by高村薫

リヴィエラを撃て〈上〉リヴィエラを撃て〈上〉
高村 薫

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リヴィエラを撃て〈下〉  新潮文庫リヴィエラを撃て〈下〉 新潮文庫
高村 薫

新潮社 1997-06
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私の好きな作家、高村薫は寡作である。
今まで発表した作品はたった12冊。
そんなわけで、ケチケチ、読んできたのであるが
このGWにとうとう、『リヴィエラを撃て』に手を出してしまった。
これで、私に残された作品はあと3作品
『黄金を抱いて翔べ』
『神の火』
『李謳』
になってしまった(つД`)

1992年冬の東京。
元IRAテロリスト、ジャック・モーガンが謎の死を遂げる。
その直前、警視庁に
「ジャック・モーガンが捕まった。
<リヴィエラ>に殺される!」という電話がはいる。
果たして、<リヴィエラ>とは誰なのか。
その秘密を巡り、CIAが、M15が、M16が暗闘を繰り広げる。

いやー、よかった~。
高村薫だからあたりまえなんだけれど。
しかし、高村薫の小説に登場する男たちは、
みな、儚げですな。
生きながらにして、死んでいるというか、
死への道を探っているというか。
ジャック・モーガンしかり、合田刑事しかり、彰之しかり。
彰之の息子、秋道はどうなのでしょう?
この夏、新潮で高村さんの連載が始まるとか。
楽しみ~♪

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April 28, 2006

『絡新婦の理』『塗仏の宴』by京極夏彦

立て続けに3冊、読みました。

文庫版 絡新婦の理文庫版 絡新婦の理
京極 夏彦

講談社 2002-09
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巷に横行する殺人鬼「目潰し魔」を捜索する木場修。
一方、千葉の片田舎にある聖ベルナール学院では
学園内に<蜘蛛の僕>なる黒弥撒集団が暗躍。
満月の晩に黒い聖母が出現し呪われた相手が絞殺される。
2つの事件は蜘蛛の巣となり木場を眩惑し、搦め捕る。
中心に陣取るのは誰か?

今までの4冊に比べて妖しさが足りないですかねえ。
学園が舞台だからか?
『鉄鼠』は坊さんがわやわやいましたが、
『絡新婦』はいたるところ、女、女、女ですね。
「あなたが-蜘蛛だったのですね」と京極堂がいうシーンが好きです。

文庫版 塗仏の宴―宴の支度文庫版 塗仏の宴―宴の支度
京極 夏彦

講談社 2003-09
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文庫版 塗仏の宴―宴の始末文庫版 塗仏の宴―宴の始末
京極 夏彦

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「知りたいですか」
郷土史家を名乗る男は囁く。
「知り――たいです」
答えた男女は己を失い、昏き界へと連れ去られた。
非常時下、大量殺戮の果てに伊豆山中の集落が消えたとの奇怪な噂。
敗戦後、簇出した東洋風の胡乱な集団6つ。
15年を経て宴の支度は整い、京極堂を誘い出す計は成る。

オールスター総出演。
華やかでしたねえ。
広げるだけ広げた風呂敷、たためるのかと心配でしたが
たためましたね(笑)
京極堂がやっぱりかっこよかった。くうっ。

このシリーズ、あとは『陰摩羅鬼の瑕』しかないんですね。
さびしい…
『陰摩羅鬼』は『邪魅の雫』が発売になってから一緒に読もうっと。

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March 25, 2006

『鉄鼠の檻』by京極夏彦

文庫版 鉄鼠の檻文庫版 鉄鼠の檻
京極 夏彦

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1359ページ。
凶器になるといわれるほどぶ厚い京極本。
今は軟弱な分冊版なるものが出てますが
ええ、私は今後も、ブロック本を買いますとも!

忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、
埋没した「経蔵」…。
箱根に起きる奇怪な事象に魅入られた者―
骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で
仏弟子たちが次々と無惨に殺されていく。
謎の巨刹=明慧寺に封じ込められた動機と妄執に、
さしもの京極堂が苦闘する、シリーズ第四弾。

ひさびさに小説を読んでいるうちに明け方になってしまった。
後半、もうやめることができなかった。
京極堂が説明する禅の歴史が非常にわかりやすい。
榎木津はやはり好きじゃない。
私が読みたいのは、京極堂の活躍だ。
「この世には不思議なものなど何ひとつないのだよ」
いつものこのセリフは1254ページだった。
今川がもうちょい事件と関わりがあるかと思ったけれど
そうでもなかった。
もしかするとこの後、続くシリーズにまた出てくるのだろうか。
ストーリーはおもしろいのだが、
いつもの妖しさが少し足りなかったように思う。

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