August 04, 2007

『ヘンリ・ライクロフトの手記』『夜の来訪者』『海からの贈物』『円朝芝居噺 夫婦幽霊』

●今週、気づいたこと
・今さらながら、味噌汁の具は2種類より3種類の方がうまい。
めんどうでも、料理は、いろいろな素材をちょっとずつ入れた方が
味が複雑になっておいしくなる。

・賞味期限の長い食品はまずい。

●今週読んだ本
『ヘンリ・ライクロフトの手記』byギッシング
ヘンリ・ライクロフトの私記

「およそ読書人と呼ばれる人の本棚にこれがないことはありえない」
と岡崎武志著『読書の腕前』には書いてある。
自分を“読書人”だとは思わないし、
そもそも何冊読めば“読書人”なの?という反発も感じるが、
好奇心に勝てず、読んでみた。
この本は、長い貧困生活ののち偶然知人の遺産を得て、
老境に至り初めて安息の日々を送ることが可能となった
ギッシングの友人であるヘンリ・ライクロフトという作家の手記
という体裁になっているが、ギッシングの創作である。
貧しく不遇な作家という意味で、ギッシング自身の人生と重なるわけだが、
ライクロフトと違うのは、ギッシングは遺産を手に入れることもなく、
貧困のまま死んでいったということだ。
作品の前半は、自然への賛歌、本を読む喜びに溢れている。
が、後半では、自分がかつてお金がなかった時の苦しみが繰り返され、
社会への批判が増える。
また自分は幸せだと無理に納得させようとしているようにも思える。
結局、ギッシングは作品の中でライクロフトにはなりきれなかったのではないか?
この本の訳者である平井氏は
「作者が自らの描く虚構の人物にいわば乗りうつっている」と解説に書いているが
私にはライクロフトが亡霊のように見える。
結局、読み終えてみると、私にはライクロフトの喜びよりも
ギッシングの哀しみの方が身に沁みた。

『夜の来訪者』byプリーストリー
夜の来訪者

戯曲。
舞台はある裕福な実業家の家庭。
娘の婚約を祝う一家団欒の夜に警部を名乗る男が訪れ、
ある貧しい若い女性が自殺したことを告げ、
全員がそのことに深く関わっていることを暴いていく。

短いので、2時間もあれば読める。
ラストはぞぞっとくる。
ミステリーでもあり、社会派小説でもある。
二重どんでん返しということで、クリスティの『検察側の証人』を
思い出させる。

『海からの贈物』byアン・モロウ・リンドバーグ
海からの贈物

女はいつも自分をこぼしている。
そして、子供、男、また社会を養うために与え続けるのが
女の役目であるならば、女はどうすれば満たされるのだろうか。
有名飛行家の妻として、そして自らも女性飛行家の草分けとして
活躍した著者が、離島に滞在し、女の幸せについて考える。

20代の時、仕事の関係で参加しなければならなかったある読書会で
この本を読んだことがある。
若くて傲慢で夜遊びばかりしていた私はこの本に書いてあることが
さっぱりわからなかった。
しかし、今は心にしみる。
「そうそう」とうなずいたり、「そうだったのか!」と得心したり。
男性が読んでも生きていくうえでのヒントになると思う。

本当の自分というものは、
「自分自身の領分で自分を知ること」によってしか得られない。
(本文中より)

『円朝芝居噺 夫婦幽霊』by辻原登
円朝芝居噺 夫婦幽霊
怪談ものを得意とし江戸から明治にかけて活躍した落語家、三遊亭円朝。
作者は、ふとしたことからその円朝の口演速記録を手に入れる。
解読してみると未発表作品である。
この本はそのいきさつと、その作品が掲載されているが…。

辛口の感想になる。
私の中では円朝といえば「芝浜」である。
元落研ではあるが、正直、怪談噺はよく知らない。
しかし、この「夫婦幽霊」はいかがなものか。
円朝の作品ということになっているが、
この本の中では最終的に
有名作家○○○○○と円朝の関係者○○○の創作であろうと
結論づけられている。
そうはいっても、夢を壊すようだが、著者である辻原さんの作であろう。
私はあまりデキのいい噺ではないと思う。
強欲な夫婦が3組、登場する。
多すぎである。
悪役ばかりだと悪役がひきたたない。
誰一人、同情できる人間がいないので、ぐっと来ない。
ホームズ役の佐久間さまがちょっとステキというくらいだろうか。
オチもきっちり作っていただきたかった。
また「円朝の作としてはイマイチではないか…」といわれた時の
保険なのか、「いやいや実は○○○○○と○○○の共作なんですよ」
としてあるあたりがずるい。

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July 28, 2007

『風の払暁 満州国演義1』『漱石の夏やすみ』『古代からの伝言 水漬くかばね』『パンプルムース家の犬』「ツイン・ピークス」

Dostoevsky
「本を読む人々。」というSNSで
私が管理人をしております「古今東西の名作を読もう」コミュの中に
「『カラマーゾフの兄弟』を読む!」というトピができました。
読みやすいと話題の光文社古典新訳文庫『カラマーゾフの兄弟』を、
この夏、みんなで読もうという企画です。
「この機会に私も」という方は是非、ご参加ください。
みんなでわいわい楽しみましょう。
カラマーゾフの兄弟1

●今週読んだ本
『風の払暁 満州国演義1』by船戸与一
風の払暁

麻布の名家に生まれながら、それぞれに異なる生き方を選んだ
敷島四兄弟。
奉天日本領事館の参事官を務める長男・太郎。
日本を捨てて満蒙の地で馬賊の長となった次郎。
奉天独立守備隊員として愛国心ゆえに
関東軍の策謀に関わってゆく三郎。
学生という立場に甘んじながら無政府主義に傾倒していく四郎。
未曾有のスケールで描かれる満州クロニクル。

今回は2巻までしか出版されていないが、全8巻になるという噂。
船戸与一の作品は初めて読んだ。
歴史背景の説明も細かいし文章も重厚で、私好みなのだが何か足りない。
登場人物の個性が弱いのではないだろうか。
小説というのは、リアリティを出そうとすると、
登場人物が現実に近づき過ぎてしまい、個性が弱くなるんだと思う。
だからといって、個性を出すために、大袈裟なキャラクター設定にすると
漫画のようになってしまう。
引き続き、2巻を読むかどうか迷うところ。

『漱石の夏やすみ』by高島俊男
漱石の夏やすみ (ちくま文庫 た 37-5)
先月、文庫化されました。
夏目漱石が23歳のときに作った漢文紀行「木屑録」を解説した書。
「木屑録」自体は22ページの短いものだが、
この本には「木屑録」の訳と解説以外に、
“漱石と子規”“「漢文」について”“日本人と文章”の3つのエッセイも
収録されている。
そもそも「木屑録」は正岡子規ひとりに見せるために書いたもので、
一種の手紙である。
漱石と子規は東京大学予備門の同級生であった。
「木屑録」では二人がふざけあう様(それも知的なふざけあい)が
垣間見え興味深い。
また、「漢文」について書かれたエッセイは目からウロコであった。
もともと漢詩は音読されていた。
しかし、9世紀の末に遣唐使が廃止されて以後、
音読できる人がいなくなってしまった。
つまりHere is a dogを「ヒア イズ ア ドッグ」と読めなくなった。
しかし暗誦はしなくてはならない。
そこで「ココニヒトツノイヌアリ」と声に出しながら
Here is a dogという原文を見て、おぼえる。
「ココニヒトツノイヌアリ」は日本語訳でもなければ、本来の発音でもない。
あくまでも漢詩を暗誦するための符牒である。
それが、私たちが授業で習った漢文ってやつなのである。
しかし、現代においては、漢詩を覚えたいなら、
中国語の発音がわかるのだから、中国語で覚えればいいわけで、
漢文で覚えるのは意味がないのである。
また、漢詩には複雑なルールがたくさんあることがわかった
この本で解説しているのは、ほんのさわりだけなので
漢詩について解説した本を買ってみようと思う。

『古代からの伝言 水漬くかばね』by八木荘司
古代からの伝言 水漬くかばね
1999年~2004年まで、産経新聞で連載されていたもので
「日本書紀」の世界をリアルに再現したシリーズ。
全7冊。
この巻では中臣鎌足と中大兄皇子の出会いから始まり、
大化の改新、白村江の戦いを経て、二人の死までを描く。
同じ歴史ものでも、上述の『風の払暁 満州国演義1』の登場人物が
あまり生き生きしてないのに対し
この作品は、中臣鎌足らが目の前にいるかのようである。
特に白村江の戦いでの秦田来津(はたのたくつ)の最期が泣ける。
白村江の戦いについては名前しか知らなかったのだが、
この作品を読んで、詳細がよくわかった。
このシリーズは引き続き、読んでいきます。

『パンプルムース家の犬』byマイケル・ボンド
パンプルムース家の犬
元パリ警視庁刑事で現在はグルメ・ガイドブックの覆面調査員の
パンプルムース氏と元警察犬のポムフリットを主人公にした
ミステリーシリーズ。
正直、そんなにおもしろいわけではないのだが、
なぜか何となく読んでしまう。

●今週見た映画
ツイン・ピークス

ツイン・ピークス  ゴールド・ボックス【10枚組】【初回限定生産】

アメリカ北西部の田舎町ツイン・ピークス。 犯罪とはおよそ無縁なこの町で学園祭の女王で町一番の人気者だった 17歳の少女ローラ・パーマーの遺体が、ビニールに包まれ湖畔で発見される。 同じ頃、州境を越えた線路の上で、別の少女ロネット・ポラスキーが 極度の緊張状態で歩いているところを保護される。 州をまたがる犯罪のおそれがあるためFBIが介入、 特別捜査官デイル・クーパーが町を訪れる。

11月にDVD-BOXが発売されるので、キャンペーンの一環なのか、
先週からLaLaTVで再放送が始まった。
私は、日本で初放送された1991年当時は一度も見ていない。
今回、初めて見る。
今週は、序章と1章を見た。
カイル・マクラクラン(SATCのトレイだ!)演じるデイル・クーパーが
ICレコーダーを使って、秘書のダイアンに何でもかんでも報告するのがツボ。
たとえば、クーパーが初めて、ツイン・ピークスにやってきた時の報告がこれ。

ダイアン 2月24日 11時半
カナダ国境から南に8キロ
木が実にたくさんある
かなりの田舎町だ
12度 曇り 予報では雨
6割も外れるのに給料を取るとはな
走行距離12万8千キロ
町で満タンにする
金額は後で報告
昼食はランプライター・インで6ドル31セント
ルイス・フォークの近くだ
ツナサンド チェリーパイ コーヒー
うまかった
特にパイは最高だった
これから会うのは──
トルーマン保安官
覚えやすい名だ
病院で待っている
線路で見つかった娘に会いに行く
保安官にいいモーテルを紹介してもらう
清潔で安いモーテルだ
もう一つ
木の名前を調べよう

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July 14, 2007

『暗号解読』『読書の腕前』『水に埋もれる墓』「めぐりあう時間たち」「アンナ・カレーニナ」

●タイトル一覧機能
ココを参考にして、記事をタイトル一覧表示する機能をつけた。
右サイドバーのテンプレートでないと機能しないようなのですが、
長いこと左サイドバーだったので、すごい違和感…
重い腰をあげてMovableTypeでオリジナルデザインのテンプレートを
作るべきか?

●岩波文庫創刊80年
明日の週刊ブックレビューで、岡崎武志さんが“岩波文庫80年”をテーマに
お話されます。
最近、岩波文庫のすばらしさに開眼。
近日発売予定の「80年版 岩波文庫解説総目録 1927~2006」もほしい。

●今週読んだ本
『銃・病原菌・鉄』byジャレド・ダイアモンド
人類はなぜ異なった大陸で異なった発展をしたのか?
それは銃・病原菌・鉄が要因だった!
最近、上下巻ものは万が一つまらなかった時のため、
いっぺんに買わないようにしている。
これもとりあえず上巻のみ読んだ。
同じ著者の『文明崩壊』はとてもおもしろく読んだが
この本はいまひとつおもしろみに欠けるような…
現在、世界にこれだけの地域間格差があるのは、
民族の能力に優劣があったのではなく環境が原因だったと
著者はいってるわけだが、そんなこと、いまさらのような気がする。
ただ、アメリカはいまだに「欧米人は他の民族より優れている」
といった考えが残っているようで、そういう社会においては
この本は衝撃的だったのかもしれない。

この本を映像化したものがナショナル・ジオグラフィック社から
発売されたようだ。

DVD-BOX 銃・病原菌・鉄(DVD3巻セット)DVD-BOX 銃・病原菌・鉄(DVD3巻セット)
ナショナル ジオグラフィック

日経BP出版センター 2007-06-28
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『暗号解読(上)』byサイモン・シン
これもまずは上巻のみ読んだ。
暗号について書かれたノンフィクション。
パズルが大好きなので「頻度解析」などの解説もわくわくしたし、
暗号にまつわる歴史、スコットランド女王メアリーやエニグマのエピソードも
すごくおもしろかった。
もちろん下巻も買う。
エニグマ最大の弱点を突き止めたアラン・チューリングの最期があまりに悲しい。

『読書の腕前』by岡崎武志

読書の腕前読書の腕前
岡崎 武志

光文社 2007-03
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書評家であり古本に関する著書も多い作者が読書について書いたエッセイ。
アンダーラインひきまくっちゃった。
(『ちょっと本気な千夜千冊虎の巻』に「本はノートだと思ってどんどん書き込め」
と書いてあった)
以下、気になった箇所。

『桟橋で読書する女』byマーサ・グライムズの1シーン。
ウェートレスである主人公は、仕事を終え夜になると
湖に突き出した桟橋にテーブルと椅子を持ち出し、
コードを引っ張ってきて電気スタンドの灯りの下で本を読むのが習慣。
そこでマティーニをつくり、ウォレス・スティーヴンスの
『キーウェストにおける秩序の観念』なんていう硬めの本を手に、
難しい詩の意味を理解しようとする。
湖を時おり、高速でモーターボートが通り過ぎ、
対岸の別荘地では夜ごとパーティーが繰り広げられ、
風に乗って、客たちの笑い声とともに、古いコール・ポーターの曲が流れてくる。

「あらかじめ用意された場所や装置がないと、時間がつぶせないというのでは、
楽しみ方が下手と言われても仕方がないだろう」(著者)

『教養』とはつまるところ「自分ひとりでも時間をつぶせる」ということだ。
(中島らも)

『ヘンリ・ライクロフトの私記』byギッシング
「私は散歩の途中出会うすべての花の一つ一つ名ざして呼べるようになりたい。
それも特にそのもの固有の名前で呼んでやりたいのだ」

「読んでない本を残して、読んだ本を売るのは間違いで、読んだ本こそ残すべきだ」
(出久根達郎)

『海炭市叙景』by佐藤泰志
著者は芥川賞5回ノミネートされ、1990年国分寺の自宅近くで縊死した。
現在はなかなか手に入りにくい本らしいのだが、
この夏、クレインから発売されるようだ。

『水に埋もれる墓』小野正嗣

にぎやかな湾に背負われた船にぎやかな湾に背負われた船
小野 正嗣

朝日新聞社 2005-10-13
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表題作である『にぎやかな湾に背負われた船』は過去に読了済
こちらも『にぎやかな湾~』と同じ“浦”の物語。
よかった。
カヅコ婆が泣ける。
といってもこの作品が泣けるというのではなく、
私が勝手に亡くなった祖母とカヅコ婆を重ね合わせて泣いているだけだが。
「色の黒い小さな人」とカヅコ婆の漫才のかけあいのような会話が笑える。
読み終えた後もいくつか謎が残ったままなのもいい。
最新作は異国の森が舞台のようだけれど、“浦”の物語の続きを書いてほしい。

●新たに購入した本
『ヘンリ・ライクロフトの私記』ギッシング
『灯台へ』ヴァージニア ウルフ
『海からの贈物』アン・モロウ・リンドバーグ
『アンナ・カレーニナ (上)』トルストイ
『暗号解読 (下)』サイモン・シン

●今週見た映画
めぐりあう時間たち

めぐりあう時間たちめぐりあう時間たち
ニコール・キッドマン マイケル・カニンガム スティーヴン・ダルドリー

角川エンタテインメント 2005-11-25
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1923年、イギリス、ロンドン郊外のリッチモンド。
作家であるヴァージニア・ウルフの病気療養のためウルフ夫妻はこの町に移り住んできた。
物静かだが優しい夫レナードの気遣いをよそに、彼女は書斎で煙草を吸いながらゆっくりと呟く。
「……ミセス・ダロウェイは言った、花は私が買ってくるわ」
1951年、ロサンジェルス。
閑静な住宅地に住む妊娠中の主婦ローラ・ブラウンは、ベッドの中で一冊の本を手にしている。
「……ミセス・ダロウェイは言った、花は私が買ってくるわ」
2001年、ニューヨーク。
編集者クラリッサ・ヴォーンは、同居している恋人サリーに言う。
「サリー、花は私が買ってくるわ」。
三つの時代の、三人の女たちの、それぞれの一日が始まろうとしていた……。

映画のモチーフとなった『ダロウェイ夫人』を絶対に読んでおくべき。
でないと、3人のセリフ「花は私が買ってくるわ」が効いてこない。
3人が精神的に追いこまれている様子がひしひしと伝わってきた。
二コール・キッドマンはヴァージニア・ウルフに似せるためつけ鼻をつけたとか。
実際、よく似ていた。
エイズに冒された詩人の友、リチャードのセリフ。
「始まりに比べ終りは虚しすぎる」

アンナ・カレーニナ

アンナ・カレーニナアンナ・カレーニナ
ソフィー・マルソー ショーン・ビーン アルフレッド・モリーナ

ジェネオン エンタテインメント 2002-01-25
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1880年、モスクワ。
レヴィンは令嬢キティに求婚。
キティは若き軍人、ヴロンスキー伯爵に夢中だったが、
彼はロシア高官カレーニン夫人のアンナ・カレーニナに一目惚れ。
一度はヴロンスキーの愛を拒否したアンナだったが、
やがて自らも情熱的な恋のとりこになった。

トルストイは『戦争と平和』がそれほどでもなかったので、
『アンナ・カレーニナ』を読む予定は当分なかったのだが、
この映画を見て読む気になった。
映画では脇役扱いだったレヴィンについてもっと知りたい。
映画は全編、英語なのがちょっと…。
DVDがほしいけれど、生産中止。

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July 07, 2007

『悪党芭蕉』『古都』『伝奇集』『Self-Reference ENGINE』『気になる部分』「銀河ヒッチハイク・ガイド」「8人の女たち」「宋家の三姉妹」

渡辺満里奈 ピラティス道渡辺満里奈 ピラティス道
渡辺満里奈

ポニーキャニオン 2007-05-16
売り上げランキング : 72

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2年前、書籍として発売された渡辺満里奈の「ピラティス道」。
DVD化されたら買おうと思っていたら、
いつの間にかDVD化されていたので買ってみました。
激しいビリーズ・ブート・キャンプは真夏にはちょっとしんどいですからね。

●今週読んだ本
『悪党芭蕉』by嵐山光三郎

悪党芭蕉悪党芭蕉
嵐山 光三郎

新潮社 2006-04-22
売り上げランキング : 12122

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芭蕉は「三百年前の大山師」だった!(by芥川龍之介)
弟子は犯罪者、熾烈な派閥闘争、句作にこめられた危険な秘密……。
神格化され、〈宗教〉となった芭蕉の真実の姿を描く、
今まで誰も書けなかった画期的芭蕉論。

俳句にはまったく興味がなかったのだが楽しく読めた。
芭蕉の弟子たちが、それぞれ個性豊か。
二大弟子である東の其角、西の去来。
其角は天才肌であり、去来は誠実そのもの。
芭蕉と衆道関係にあったと思われる美男の誉れ高い杜国。
他にも衆道関係にあった弟子がぞろぞろ。
弟子たちが芭蕉を取り合う様子がおかしい。
といっても、芭蕉を思う気持ちからではない。
誰が後継人になるかが関心の対象だった。
当時、俳句はビジネスだったからだ。
俳句が、芸術である前にビジネスであり、
お金になったということは驚きだ。
興行と呼ばれており今でいうライブのようなものか?
芭蕉はこんな風に詠んでいる。
詩商人年を貪る酒債かな(P.151)

<自分用MEMO>
P.10
百五十年忌の天保14年(1843)には、
二条家より「花の本大明神」の神号を下され、
芭蕉は名実ともに神となった。
芭蕉は宗教と化したのである。

P.184
文芸で名を高めるには、作品もさることながら、死に方の工夫が腕の見せどころ

『古都』by川端康成
「本を読む人々。」というSNSの「古今東西の名作を読もう」トピックの
7月の課題本。
まず、会話が全部、京ことばなのに違和感があった。
京ことばは好きなのだけれど、それが小説となるとふざけてるみたいで…(^^;
「ふた子どすもん?」「いややわ」「どうどした?」「そうでんな」ですよ?
ただ、最初は違和感があったものの、
後半はストーリーもぐぐっともりあがり、楽しく読めた。
平安神宮、植物園、祇園祭、時代祭と京都ならではの描写が続き、
京都ガイドブックのような趣もある。

『伝奇集』byJ.L.ボルヘス

伝奇集伝奇集
J.L. ボルヘス 鼓 直

岩波書店 1993-11
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ネットに各作品について一行で紹介してある文章があったので貼っておく。
<八岐の園 1941年>
プロローグ 以下8篇への前書き。
トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス 
事典をめぐる奇妙な研究論文。
アル・ムターシムを求めて
寓意詩と探偵小説の融合を指摘した書評。
『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール 未完の作品の解説。
円環の廃墟 一人の人間を夢見、生み出す話。
バビロニアのくじ 非在のくじのお話。
ハーバート・クエインの作品の検討 小説家の作品の話。
バベルの図書館 無限であり周期的な図書館の話。
八岐の園 探偵小説的情報戦。

<工匠集 1944年>
プロローグ 以下9篇への前書き。
記憶の人、フネス 完全知覚の言語化。
刀の形 独立運動の自意識の結末。
裏切り者と英雄のテーマ 反転する革命劇。
死とコンパス 四角殺人事件。
隠れた奇跡 ゼノンのパラドックス的詩作。
ユダについての三つの解釈 逆説的弁護人。
結末 人格転移の殺人。
フェニックス宗 継続する秘儀。
南部 手術と決闘。

何度か挫折してきたのだが、今回、やっと全部、読めた。
といっても、全部、理解できたわけではない。
「八岐の園」より「工匠集」の方がいくらか理解しやすかった。
主人公と、対峙していた相手とが逆転したり、
一度は死を逃れるものの、その間にひとときの夢を見て結局死ぬ
といった物語が多いように思う。
「死とコンパス」「ユダについての三つの解釈」「南部」がよかった。

『Self-Reference ENGINE』by円城塔

Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
円城 塔

早川書房 2007-05
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SF連作短編集
著者は今回、「オブ・ザ・ベースボール」で芥川賞候補になった人。
恋愛小説風の話があるかと思えば、巨大人工知能が登場したり、
落語調の話もあれば、SFには不似合いな“トメ”なんて名前も出てくる。
ネットを見ると、この作品について言及する際、
ヴォネガット、ボルヘス、カルヴィーノ、グレッグ・イーガン、舞城王太郎などが
引き合いに出されている。
私の大好きな『銀河ヒッチハイクガイド』における
「生命と宇宙と万物に関する究極の答え」である“42”もちらっと出てくる。
私がこの作品を紹介するとしたら、
「恩田陸の『光の帝国』をもっと理屈っぽくした感じ」だろうか。
帯に推薦文を書いている飛浩隆の『グラン・ヴァカンス』ともちょっと重なるような。
まあ、あらゆるSF作品のごった煮ってことかもしれない。
でも結局、私はこの作品が何がいいたいかよくわからなかったけどね。

『気になる部分』 by岸本佐知子

気になる部分気になる部分
岸本 佐知子

白水社 2006-05
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スティーヴン・ミルハウザー、ニコルソン・ベイカーなどの翻訳家によるエッセイ。
最初はおもしろくてげらげら笑っていたのだけれど、
そのうち、著者の妄想ぶりがだんだん怖くなってくる。
石鹸で手を洗い続けたら手が消えるんじゃないかと思い執拗に洗い続ける著者。
祖母の家の枕の中には日本兵がいるという著者。
前半に書いてあった、壁一面にきのこグッズがずらっと飾ってあり
食事や浴衣、大浴場にいたるまで、すべてきのこづくしという「国際きのこ会館」も
彼女の妄想なんじゃないかという気がして調べてみたがこれはちゃんと実在していて、
今は「ホテルきのこの森」という名前だった。
この妄想っぷりなら、小説を書いてもいいものが書けるんじゃないかなあ。

●読書中
『銃・病原菌・鉄』byジャレド・ダイアモンド

●新たに購入した本
『ちょっと本気な千夜千冊虎の巻』by松岡正剛
『白の民俗学へ』by前田速夫
『読書の腕前』by岡崎 武志
『贅沢な読書』by福田 和也

●今週見た映画
銀河ヒッチハイク・ガイド

銀河ヒッチハイク・ガイド銀河ヒッチハイク・ガイド
サム・ロックウェル ダグラス・アダムス ガース・ジェニングス

ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2006-03-17
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予想通り。期待通り。
原作がそのまま映像化されていた。
ただ、ゼイフォードの頭の処理がちょっとずるいような…
(ゼイフォードの頭は双頭なのに、
映画版だともうひとつの頭は首にあり、普段は隠れている)
BBCのTVシリーズのゼイフォードの方が正しい。
BBCの方のDVDも買っておくべきか。

8人の女たち

8人の女たち デラックス版8人の女たち デラックス版
カトリーヌ・ドヌーヴ フランソワ・オゾン エマニュエル・ベアール

ジェネオン エンタテインメント 2003-07-21
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1950年代のフランス。
クリスマス・イブの朝、雪に閉ざされた大邸宅で一家の主が殺された。
集まっていた家族は一転、全員が容疑者に…
お互いが疑心暗鬼に陥るなか、
怪しくも美しき8人の女たちの秘密がつぎつぎと明かされる。
犯人は、誰…?

本格ミステリー風。
オゾン監督はパロディで作ったのだろうか?
というかパロディにしか見えない。
何度も登場するミュージカルシーンは、私はいらなかったな。
ラストはちょっとびっくりのような、強引のような…

宋家の三姉妹

宋家の三姉妹宋家の三姉妹
マギー・チャン メイベル・チャン ミシェール・ヨー

ポニーキャニオン 2005-03-02
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今世紀初頭の中国。
古い因習にとらわれずに育てられてきた宋家の三姉妹。
アメリカ留学から帰国した彼女たちは、
それぞれに全く異なる結婚相手を選ぶ。
長女の靄齢は財閥の御曹司と結婚し、
中国経済を左右する大財閥を築く。
次女の慶齢は革命家・孫文と恋をし、
彼とともに情熱のすべてを革命に捧げる。
そして、三女の美齢は野心あふれる若き軍司令官、蒋介石と結婚する。

「かつて中国に三人の姉妹がいた。
一人は富を愛し、一人は権力を愛し、一人は国を愛した。」
映画のオープニングにこんなテロップが流れるが、
この順番でいくと、次女の慶齢が権力を愛したことになるが、
権力を愛したのは三女の美齢であり、
慶齢は国を愛したのではないのだろうか?
この映画を見るまで、孫文なんて名前くらいしか知らなかった。
このあたりの中国の歴史って
学校であまり詳しく習わなかったような気がする…。
中国の歴史を扱った小説をもっと読みたい。

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June 30, 2007

『古代からの伝言 日出づる国』『時の娘』「恋愛小説家」「ダロウェイ夫人」「ドラマ・エリザベス1世」「恋に落ちたシェイクスピア」

Lin

脳内メーカー
によると私の頭の中はこうなっているらしい。
ちなみに本名だとこうなる↓
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●今週読んだ本

古代からの伝言 日出づる国古代からの伝言 日出づる国
八木 荘司

角川書店 2006-09-22
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1999年~2004年まで、産経新聞で連載されていたもので
「日本書紀」の世界をリアルに再現したシリーズ。
全7冊。
この巻では、崇峻帝弑逆から推古天皇の死までを描く。
崇峻帝弑逆の実行犯である駒と河上娘との悲恋物語がよかった。
駒は自分のことを「やつがれ」というので、
同じく「やつがれ」という巷説百物語、又一役の渡部篤郎の顔が
浮かんだ。
この時代の朝鮮半島における高句麗、百済、新羅、任那の関係が
とてもよくわかった。

『時の娘』byジョセフィン・ティ

英国史上最も悪名高い王、リチャード三世――
彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか?
退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに
歴史書をひもとき、純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。
歴史ミステリの名作と知られ、
高木彬光の『成吉思汗の秘密』や『邪馬台国の秘密』に影響を与えた。

すばらしい作品だと思うが、
そもそもリチャード三世が悪人扱いされていることを
知らなかったので、それほどラストに衝撃は受けなかった。
しかし、つくづく歴史というのは
勝者によって書き換えられてしまうものなんだと思った。
「歴史=真実」だと簡単に思ってはいけない。

●読書中

悪党芭蕉悪党芭蕉
嵐山 光三郎

新潮社 2006-04-22
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芭蕉は「三百年前の大山師」だった!(by芥川龍之介)
弟子は犯罪者、熾烈な派閥闘争、句作にこめられた危険な秘密……。
神格化され、〈宗教〉となった芭蕉の真実の姿を描く、
今まで誰も書けなかった画期的芭蕉論。

ココで立ち読みできます。
今、半分、読み終わったところだけれど、おもしろい!

『ユリシーズⅡ』byジェイムズ・ジョイス
他の本に浮気しつつも、ちょっとずつ読んでいる。
今は、スティーヴンスが図書館で滔々とシェイクスピア論を
述べているところ。

●新たに購入した本
『古代からの伝言 水漬くかばね』by八木 荘司
今週、読んだ『古代からの伝言 日出づる国』の続き。

『ユリシーズⅢ』byジェイムズ ジョイス

『古都』by川端 康成
「本を読む人々。」というSNSの「古今東西の名作を読もう」トピックの
7月の課題本。

『気になる部分』by岸本 佐知子
名翻訳家によるデビューエッセイ集。

『Self-Reference ENGINE』by円城 塔
書評家、大森望氏が「今年の日本SFベストワンは
これか伊藤計劃『虐殺器官』」と絶賛している。
『虐殺器官』も気になるが、タイトルからして苦手だ。

『芭蕉 おくのほそ道―付・曾良旅日記、奥細道菅菰抄』by松尾 芭蕉
今、嵐山光三郎の『悪人芭蕉』を読んでいるので。

『湘南の暮らしと家―ビーチサイドスタイル』by湘南スタイルマガジン編集部
いつかは海のそばで暮らしたい。
と、思っている。

『夜の来訪者』byプリーストリー
kotaさんのブログ週刊ブックレビューで紹介されたいたので。
ある裕福な実業家の家庭で娘の婚約を祝う一家団欒の夜に
警部を名乗る男が訪れ、ある貧しい若い女性が自殺したことを告げ、
全員がそのことに深く関わっていることを暴いていく。

『暗号解読 上』byサイモン・シン
今月、文庫化されました。
ぎんこさんオススメ。

●今週見た映画

恋愛小説家恋愛小説家
ジャック・ニコルソン

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2007-05-30
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甘く切ない女心を描き、書いた本はすべてベストセラーという恋愛小説家メルビン。
しかし実際の本人は、異常なまでに潔癖性で神経質の嫌われ者。
周囲に毒舌をまき散らし、友人は誰もいない。
そんな彼がある日、ウェイトレスのキャロルに淡い恋心を抱くが・・・。

メルビンを演じるジャック・ニコルソンが優しい雰囲気なので、
嫌われ者という役が似合っていない。
『恋愛適齢期』でも遊び人の実業家という役どころだったが
あれも似合っていなかった。
ジャック・ニコルソンは映画後半のメルビンのような
誠実な役柄が似合う。
メルビンが小説家ゆえ、日常会話はうまく話せないのに、
書き言葉でならうまく話せるところがおもしろかった。
日本における短歌のように、
欧米ではそもそも女性を口説く時は
詩(文語体)を用いていたのではないか。
それを思えば、メルビンの口説き方は本来の形といえる。

ダロウェイ夫人
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ヴァージニア・ウルフの同名小説を映画化。
第一次世界大戦終結から5年後のロンドン。
国会議員夫人のダロウェイは、ある日30年前の輝くような青春の日々を思い返す。
ロマンティックなピーターとの波乱に富んだ人生ではなく、
政治家リチャードとの平穏な生活を選んだ現在の人生。
やがて彼女はその選択が正しかったのか自問してゆく。

原作を読んでから見た方がいいかも。
原作もよかったけれど、この映画を見てますます原作が好きになった。
ちょうど私自身も青春の日々を思い返す時期にあるからかもしれない。
この作品を見て「詩は美しい」と気づいた。
詩はやっぱり英語だと思った。
DVD化(日本語版)されていないのが残念。

ドラマ・エリザベス1世~愛と陰謀の王宮~

16世紀、ヨーロッパの覇権を握り、
大英帝国の基礎を築いたイングランド女王エリザベス1世は、
死ぬまで独身を通して、バージン・クイーンと呼ばれた。
そんな女王に取り入ろうとする男たち。
そして、背後に渦巻く陰謀。
愛と陰謀に揺れたエリザベス1世の半生を、王宮を舞台に描く。
番組紹介はコチラ

先ごろ、NHKで放送されたものは吹き替えだったのが残念だ。
主演は映画「QUEEN」でエリザベス2世を演じたヘレン・ミレン。
エリザベス1世の愛人としてレスター伯とエセックス卿が登場するのだが
私はレスター伯との日々が好き。
愛があったように見えるから。
30才も離れた年下男エセックス卿に夢中になるのは
正直、理解できない。
私は昔も今も年上男好きでそれはこれからも変わらない。
きんさんぎんさんのように100才になっても
「好みの男?年上がいいねえ」といいたい。

恋に落ちたシェイクスピア コレクターズ・エディション恋に落ちたシェイクスピア コレクターズ・エディション
グウィネス・パルトロウ ジョン・マッデン ジョセフ・ファインズ

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2003-11-21
売り上げランキング : 3028

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16世紀末のロンドン。
スランプに陥っていた劇作家シェイクスピアは
オーディションにやって来た一人の若者トマス・ケントを追って
とある屋敷へたどり着く。
そこには以前、芝居の最中に目を留めた
美しい女性ヴァイオラの姿があった。
シェイクスピアと彼を信奉するヴァイオラはたちまち恋におちてしまう。

もっと重厚な映画を想像していたが、軽いタッチのコメディ映画だった。
衣装や舞台が中世風というだけであって、
物語そのものは現代の恋愛映画だといっていい。
シェイクスピアとヴァイオラも、苦悩もなく簡単に寝ちゃうし
そんなところも現代風。
タイトルにだまされた感じ。
コメディ映画として見る分には悪くない。

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June 16, 2007

『宇宙クリケット大戦争』『村田エフェンディ滞土録』『テヘランでロリータを読む』

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今日はブルームズ・デイである。
ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』という小説が
1904年6月16日のダブリンでの出来事を描いているので、
この日を主人公ブルームの名を取って、ブルームズ・デイと呼んでいる。
その『ユリシーズ』は、他の本に浮気ばかりしているので、まだ1巻…
ブルームたちが墓地に着いたところ。

●今週読んだ本
『宇宙クリケット大戦争』byダグラス・アダムス
宇宙クリケット大戦争

銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。
どこをとっても平凡な英国人、アーサー・デントは
最後の生き残りとなる。
アーサーはたまたま地球にいた宇宙人フォードと
宇宙でヒッチハイクをするはめに。

というストーリーの『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズ第3弾。
今度はクリキット軍の侵略により銀河系が全滅の危機。
有無をいわさないクリキット軍による殺戮は、
まるで先週見た映画「マーズ・アタック」みたいだ。
ロボットのマーヴィンは相変わらずのウツっぷりでかわいいが
今回は何といってもワウバッガーとアグラジャッグがいい。
ワウバッガーはうっかり不死性を獲得してしまい、
最初のうちは人生を楽しんでいたがそのうち退屈してきて、
ついにアルファベット順にすべての生命体を侮辱することを
生きる目的とする。
アグラジャッグは生まれ変わるたびにアーサー・デントに
“全くの偶然”で殺害される運命を持つ。
ウサギの時は毛皮の袋にされ、ハエの時は叩き殺され、
イモリの時は踏みつぶされた。
「どんな惑星、どんな肉体、どんな時代に生まれても
やっと落ち着きかけたころにアーサー・デントがやってきて――
ボカン、で一巻の終わりさ」(P.174)

『村田エフェンディ滞土録』by梨木香歩
村田エフェンディ滞土録
『家守綺譚』の主人公、綿貫の友人である村田のトルコ留学記。
登場人物がみな魅力的で、
当時、トルコがおかれていた国際的状況なども興味深く
ただ、「『家守綺譚』とどちらが好き?」といわれれば、
より幻想的である『家守綺譚』かなあと思ってた。
が、ラストで号泣。
あまりにつらい。
オウムが村田のところへきたのがせめてものなぐさめ。

『テヘランでロリータを読む』byアーザル ナフィーシー
テヘランでロリータを読む
「ノンフィクションは苦手、小説が好き」という人にも読んでほしい作品。

本書はイラン出身の女性英文学者アーザル・ナフィーシーが、
1979年のイスラーム革命から18年間、激動のイランで暮らした経験を
英語で綴った文学的回想録の全訳である。
テヘランの大学で英文学を講じていたナフィーシーは、
1995年、抑圧的な大学当局に嫌気がさして辞職し、
みずから選んだ優秀な女子学生7人とともに、毎週木曜日、
ひそかに自宅で西洋文学を読む研究会をはじめた。
とりあげた小説は主としてナボコフ、フロベール、ジェイムズ、
オースティン、ベロウなど、イランでは禁じられた西洋文学の数々だった。
イスラーム革命後のイランは、生活の隅々まで当局の看視の目が光る
一種の全体主義社会となり、とりわけ女性は自由を奪われ、
厳しい道徳や規制を強制されて苦しんでいた。
秘密の読書会は、圧制の下に生きる女たちにとって、
ささやかながら、かけがえのない自由の場となり、
ナフィーシーがアメリカに移住する1997年までつづいた。
(あとがきより)

ナボコフ、ギャツビー、ジェイムズ、オースティンの
4つの章に分かれており、
これらの作家の文学論にもなっている。
女子学生たちの読書会を中心に話が進むのかと思ったが、
読書会に関する記述は1章と4章のみで
著者自身がイスラム革命後のイランでどう生きたかが
物語のメインである。
まるで自分もその場にいるかのようななまなましさで
当時のイランの様子が伝わってくる。
チャドルの着用を義務付けられ、海外の本や映画は禁止、
こんな風に国が個人を抑圧するという事態はあってはならないと思う。
ただ、この本で取り上げられている作品は、
『ロリータ』や『高慢と偏見』を初め男女の関係をテーマとした小説が多い。
著者はいう。
「小説入門講座で私が強調したかった点は、小説とは新たに誕生した物語形式が、
いかに人間のもっとも重要な関係をめぐる基本的な通念を根底から変え、
ひいては人間と社会、仕事、義務との関係に対する伝統的な姿勢を
変化させたかにあった。
こうした変化がどこよりもはっきり見られるのは男女の関係である。」
この箇所のように時々、著者の考え方に「ん?」と思うことがあった。
あとがきで訳者が著者の文学観について「古風」と書いている。
私が感じた違和感はそれだろうか。
もうひとつ。
昨年、ノーベル文学賞を受賞したオルハン・パムクにしてもこの著者にしても
欧米は反イスラム的なものを好む傾向にないか?ということもちょっと思った。

●読書中
『充たされざる者』byカズオ・イシグロ
充たされざる者
とにかく長い。(全部で939ページ)
帯に「イシグロがカフカを超える」と書いてある。
確かに最初の方は町の人々の意図がわからず謎めいていて
カフカの『城』を思い起こさせるのだが、
後半は、いろいろなことがはっきりしてきて、
カフカのような幻想さはすっかり消えてしまう。
今、P.646なのだけれど、もう読むのやめたい…

●新たに注文した本
『三等旅行記』林芙美子
昭和6年に著者が下関~パリをシベリア鉄道で旅した様子を書いたもの。
私が購入したのは昭和8年発行の初版本。
戦争を生き抜いてきた本だと思うと感動。
旧かなだから読みにくいかと思ったけどそうでもない。

『フィンバーズ・ホテル』byダーモット・ボルジャー他
フィンバーズ・ホテル
アイルランドの首都ダブリンのはずれにある1920年代に建てられた実在のホテル。
間もなく閉鎖されようとするこの古びたホテルを舞台に、
アイルランドの名手六人が匿名で挑戦したオムニバス小説。
それぞれの作品がつながっているのがミソ。

『高い城の男』フィリップ K.ディック
歴史改変小説。
第二次世界大戦が枢軸国側の勝利に終わってから十五年、
世界はいまだに日独二国の支配下にあった。
日本が支配するアメリカ西海岸では連合国側の勝利を描く書物が
密かに読まれていた……

『時の娘』ジョセフィン・テイ
いわゆる安楽椅子探偵もの。
英国史上最も悪名高い王、リチャード三世――
彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか?
退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、
純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。

『ほとんど無害』byダグラス・アダムス
ほとんど無害
これで『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズも完結。

『迷宮パノラマ館』by芦辺拓
迷宮パノラマ館
乱歩風?
ショートショートや短編が収録されていて「ひとり雑誌」という体裁のようだ。

『バートン版 千夜一夜物語 第1巻 シャーラザットの初夜』
バートン版 千夜一夜物語 第1巻 シャーラザットの初夜

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May 11, 2007

『リヴァイアサン号殺人事件』『新釈走れメロス』『夢十夜他二編』

リヴァイアサン号殺人事件『リヴァイアサン号殺人事件』はロシアの作家ボリス・アクーニンが書いた
“ファンドーリンの捜査ファイル”シリーズ第3作である。
(ちなみにアクーニンは日本語の“悪人”にちなんでいる)
豪華客船、消えた秘宝の謎、いわくありげな乗客たち…
と、ポワロものが好きな方たちにはたまらない設定。
また探偵ファンドーリンが最新ファッションに身を包んだ美青年で
さらに紳士的とチャーミングなキャラクターなのである。
日本の文学に造詣が深い著者はアオノ・ギンタローという日本人を登場させ、
作品の中で日本人論を展開している。
翻訳をした沼野恭子さんは沼野充義さんの奥様。

Subaru0127_t_1そのボリス・アクーニンのインタビューが掲載されている
すばる4月号の特集は「21世紀ドストエフスキーがやってくる」。
ドストエフスキーといえば、
昨年9月に創刊された光文社「古典新訳文庫」の
『カラマーゾフの兄弟』が全3巻あわせて7万8千部、売れたらしい。
私は未読だが、この新訳がかなり読みやすいとのこと。

この秋、18年ぶりに河出書房新車から世界文学全集が発売されるという
ニュース
もある。
古典の新訳ブームがきてる感じ。

新釈 走れメロス 他四篇『新釈走れメロス』は『夜は短し歩けよ乙女』が評判の
森見登美彦の最新作。
「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」といった
日本の古典の名作のパロディ。
(パロディっていっちゃっていいのか?)
舞台はすべて京都、登場人物のほとんどが大学生。
何というか森見さんの作品に限らないのだけれど、
1冊2時間で読めちゃう最近の日本文学の傾向はいかがなものか。
私は古い人間ですので、小説に文学的表現なんかを期待するわけで
そんな友達に話すような文体で書かれても…と思うわけです。
「山月記」はまあまあ、よかったかな。
著者の日記はおもしろいです。

夢十夜 他二篇夏目漱石『夢十夜他二編』も読んだ。
これを映画化しちゃいかんでしょう→ユメ十夜公式サイト
映画、見てないけれど、公式サイトを見る限り、
画面が明るすぎるように思います。
夢ってもっと薄暗くてぼんやりとしたものじゃない?

しばらくごぶさたしていた本好きのSNS「本を読む人々。」にはまってます。
現在の参加人数は700人。
作家別コミュ、ジャンル別コミュいろいろあります。
楽しいですよん。

家守綺譚読書中はその「本を読む人々。」で薦めていただいた
梨木香歩『家守綺譚』
名前のイメージで勝手に若い女性作家だと思ってた。
内容もイマドキのペラペラした話なんだろうと。
が、今、半分くらい読んだところだけどすばらしくいい!
感想はまた後日。
今月、文庫化される『村田エフェンディ滞土録』も楽しみ。

しかし、もうちょっとうまく感想を書けないものか、自分。
作家のことをとやかくいうまえに、自分の文章力をもっと磨けっつうの。

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April 17, 2007

『赤朽葉家の伝説』by桜庭一樹

赤朽葉家の伝説

サンカの民の末裔である“万葉”は、10歳の時に
紅緑村に置いていかれてしまう。
が、親切な若夫婦に拾われて育てられる。
紅緑村には、古くから製鉄所を営む名家、赤朽葉家があった。
“万葉”がその赤朽葉家に嫁ぐまでが第一部(1953~1975年)
“万葉”の娘、“毛毬”の物語が第二部(1979~1998年)
『毛毬』の娘、“瞳子”の物語が第三部である(2000年~未来)

『ベルカ、吠えないのか』を思い出した。
あちらは、犬を主人公にして描いた20世紀だったけれど、
こちらは鳥取の旧家に生きる3代の女たちを主人公にした
日本の戦後史。
長い歴史をテーマにしているのにもかかわらず、
どちらの作品も薄っぺらなところがよく似ている。

文体が軽いなあと思いつつも、第一部は
“万葉”やその周囲にいる人間がみな個性的で
エピソードに事欠かず、おもしろく読むことができる。
が、第二部になると途端にダメになる。
“毛毬”が暴走族という設定なのだが描き方がステレオタイプで
ぺっらぺらなのである。
私たちが頭に思い描く「暴走族といえばこんな感じ」そのまんまである。
主人公たちの物語と並行して書かれている日本の戦後史もベタ。
石油ショック、バブル景気…手垢にまみれた単語が並ぶ。
作家というのは、読者が知らない歴史を掘り起こすのが仕事であろう。
文体も、第一部はかろうじて文学してたが、第二部はいわゆるラノベ。
ストーリーは悪くない。
ああ、この内容で、もっと重厚な文体の作家が書いてくれたらと思う。

第三部で、“万葉”の孫娘である“瞳子”がいう。
「こうしてようやくたどりついた、現代。
語り手であるわたし、赤朽葉瞳子自身には、語るべき新しい物語はなにもない。
ほんとうに、なにひとつ、ない。」
これは、“瞳子”のセリフであるが、
語るべき新しい物語がないのは“瞳子”ではなく、
現代の文学のような気が私はする。
ネットを見る限り、この作品の評判はいい。
語るべき物語のない作家が書く作品を、語るべき物語のない読者が読む。
そんな時代なのかもしれない。

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October 23, 2006

『グラン・ヴァカンス』by飛浩隆

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉

仮想リゾート<夏の区界>。
南欧の港町を模したそこでは、
ゲストである人間の訪問が途絶えてから1000年、
取り残されたAI(人工知能、ゲームキャラクターのようなもの)たちが
永遠に続く夏を過ごしていた。
だが、それは突如として終焉のときを迎える。

家庭の事情により、田舎の親戚の家へ預けられた主人公の「ぼく」(プレイヤー)が、
夏休みの一ヶ月間、昆虫採集や探検、人々との触れ合いをして行く
というゲームがあるんです。
このゲームにはバグがあって、それが起きると、
日記の日付が8月32日、33日…とありえない日数に進んで行き、
登場人物のグラフィックがおかしくなる、家にも外にも人が誰もいなくなる…
この小説を読んで、それを思い出しましたね。
そのゲーム「ぼくのなつやすみ」+変態エロゲーム+戦闘ゲームって感じ?(笑)
今後の展開を考えると、『指輪物語』的でもある。

そういうわけで、前半は、自分がゲームプレイヤーとなり
ゲーム画面を見ているような気分なので、
ジュールたちが箱庭でうろちょろしているようにしか見えず、
なかなか、はまれなかった。
(読むのをやめようとさえ思った)
そして、中間あたりの、うさぎのスーシーのエピソードが…がーん!!!
不快だ。
小説とはいえ、こういう話は好きじゃない。
私は小説といえども、非倫理的なことが許せない。
そういう理由で、評判がいいカズオ・イシグロの
『わたしを離さないで』が読めなかったりするんですが…
後半も、残虐なストーリーが次から次へと。
そもそも「鉱泉ホテル」の役割が不愉快なわけで。

でもシリーズ第2巻の『ラギッド・ガール』も読んでしまうと思う。
私は相当、不快ではありましたが、でもオススメ。

<関連記事>
『象られた力』by飛浩隆

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October 17, 2006

『ららら科學の子』by矢作俊彦

ららら科學の子

男は殺人未遂に問われ、中国に密航した。
文化大革命、下放をへて帰還した。
「彼」は30年ぶりの日本に何を見たのか。
携帯電話に戸惑い、不思議な女子高生に付きまとわれ、
変貌した街並をひたすら彷徨する。
1968年の「今」から未来世紀の東京へ…。(表紙より)

主人公が、30年ぶりの東京の街を見てまわり、
昔はこうだった、ああだったというのが
ノスタルジックで説教くさい。
バーで酔ったオヤジがいいそうな話。
ホテルの部屋から外出できなくなった主人公が、
借りてきてほしいと頼むビデオが
「博士の異常な愛情」「加山雄三が殺し屋を演じた映画」
「ヤアヤアヤア・ビートルズ」「気狂いピエロ」
だったりする。

乾いた文体は、片岡義男に似ていると思った。
“傑”というベトナム系中国人は、高村薫の『李歐』を思い出させた。

文化大革命の頃、中国がどういう状態だったかというあたりは
おもしろく読めた。
その中国と比較した日本はポリシーのないアホみたいな国に見えた。
いや、著者はわざと、そういう風に書いているのだろう。
この作品は「文学界」で連載されていたものであるが、
著者は米国における同時多発テロの影響で一時執筆を断念したという。
その時はどんな気持ちでいたのだろう?
やはり反米のままだったのだろうか?
帯に「映画化決定」と書いてあるが主演は誰だろう?

主人公が中国に密航する前に、妹にせがまれて買う本が
ケストナーの『点子ちゃんとアントン』である。
それで納得。
『スズキさんの休息と遍歴』が、道理で、ケストナーの『五月三十五日』に
似ているわけだ。
矢作さんはケストナー好きだったのですね。

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