June 23, 2007

『充たされざる者』『さようなら、いままで魚をありがとう』『ほとんど無害』『迷宮パノラマ館』『かくれ里』

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昨夜、NHK「プレミアム10」でユーミンのライブをやっていた。
音楽プロデューサーの寺岡呼人が企画したもので
ゆず、桜井和寿も参加していた。
何だかんだ20代の頃、一番よく聴いていたのはユーミンなので
ライブを見ているうちに、その頃の自分がよみがえってきて
ユーミンの歌ではないが「あの日に帰りたい」と思ってしまった。
しかし、ゆずファンの方が「ユーミンという人がよかった」と
ネットに書いていらして
「もう若い人にとってユーミンは“ユーミンという人”なんだなあ」と
寂しい気持ちになった。
一方で私にとってもゆずは“ゆずという人”だったりするわけだが…
どうして人は、今の音楽でなく、若い頃に聴いた音楽に
強くひきつけられるのだろう?
その直後が「爆笑問題のニッポンの教養」という番組で、
爆笑問題が東京理科大学薬学部の田沼靖一教授と
「ヒトはなぜ死ぬのか?」をテーマに語っていた。
田沼教授「遺伝子にはあらかじめ死がプログラムされている」
太田「では、遺伝子を操作すれば不死も不可能ではない?」
田沼教授「できたとして不死に何の意味があるのか?」
ちょうどユーミンの番組を見て「若い頃にもどりたい」と
思ったところだったので考えさせられる内容だった。

●今週読んだ本
『充たされざる者』byカズオ・イシグロ
充たされざる者

世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。
「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、
日程や演目さえ彼には定かでない。
ライダーはそれとなく詳細を探るが、
奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り……。

帯に「イシグロがカフカを超える」とあるが
それはあまりにも不遜なキャッチコピーじゃないか?
確かにカフカの『城』に似ている。
が、それも前半まで。
町の人々がみな人間的過ぎるし、ストーリーも明確で、
作品説明にある「悪夢のような不条理」は感じない。
一方、『城』の主人公Kは最後まで外来者であり続ける。
村人は人間であって人間でないようなまさに悪夢のような存在。
と、カフカファンである私は帯のキャッチコピーにカチンとして
カフカと比較して読んでしまったが
そうじゃない読み方ももちろんあると思う。
ネットで検索したらボリス、シュテファン、クリストフ、ブロッキーを
それぞれライダーの少年期、青年期、壮年期、老年期ととらえた感想があった。
え、そうなの?
私はこの4人はまったく別のキャラクターに思えたのだけれど…(・∀・;)

『さようなら、いままで魚をありがとう』byダグラス・アダムス
『ほとんど無害』byダグラス・アダムス
さようなら、いままで魚をありがとうほとんど無害

銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。
どこをとっても平凡な英国人、アーサー・デントは
最後の生き残りとなる。
アーサーはたまたま地球にいた宇宙人フォードと
宇宙でヒッチハイクをするはめに。

というストーリーの『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズ第4弾&第5弾。
これでシリーズをすべて読み終えたことになる。
シリーズが後半になるに連れて、コメディからシリアスな内容に移行し、
熟成されていく感じがよかった。
作者の年齢とも関係があるのかもしれない。
ファンは1~3巻を正篇、4&5巻は「三部作の4番目と5番目」と呼び
分離して考えるようだが、
私は4&5巻あっての『銀河ヒッチハイクガイド』なんじゃないかと思う。
4巻ではアーサーが恋をして、5巻でその恋を失ったアーサーが
サンドイッチ職人として幸せそうに暮らしているところ、じーんとした。
ラストの評判が悪いようだが、私は嫌いじゃない。
映画も近いうちに見たい。

『迷宮パノラマ館』by芦辺拓
迷宮パノラマ館
著者が若い時に書いた短編と最近の作品であるショート・ショート、
講談・ラジオ台本を集めた作品集。
帯には
「ミステリ、SF、ホラー、講談…奇才・芦辺拓が贈るひとり雑誌」
と書いてある。
「太平天国の乱」と「クトゥルー神話」を組み合わせた
『太平天国の邪神』がよかった。
ショート・ショートはやはり短すぎて物足りなかった。
芦辺拓が好きという方以外にはオススメできないかも…

『かくれ里』by白洲正子
かくれ里

白洲正子が朽木谷、菅浦、久々利といった
知る人ぞ知るかくれ里を訪ねる紀行エッセイ。
深い木立にかこまれた神社に残されている古面、
政変で都を追われた天皇たちの悲しいエピソード、
山奥に残る古代信仰のあと。
しかしこの作品が発表されたのは1971年。
もうこれらの土地も観光客によって荒されてしまっているだろうか。
日本書紀、万葉集、太平記といった日本の古典をもっと読み、
京都周辺の詳細な地図を手元に置いて再度、読みたい。

P.11
バスから押し出される観光客は、信仰とも鑑賞とも、
いや単なる見物からも程遠い人種に違いない。
ただ隣の人が行くから行く…(中略)
仏像や古美術も…(中略)不断の尊敬と愛情によって
磨かれ、育ち、輝きを増す。

P.16
伎楽はおそらくギリシャから西域を経て、中国に渡り、
朝鮮経由で、七世紀の頃、日本に将来された芸能だが、
外国では滅びてしまったその伝統が、日本の片田舎に
こうして生き残っていることに…(中略)
日本の国そのものが、世界のかくれ里的存在といえるのでは
ないだろうか。

P.42
明け行く空と、落ちる月影に、軽の皇子への希望と、
草壁の皇子への追慕を見るのは行きすぎで、
歌はそのままの姿で味わうのが一番いいのである。

P.232
天然記念物に指定されてから急にはやり出したと聞くが、
やたらに指定するのも考えものである。
指定されたために、全滅した植物や鉱物は多い。

P.279
現代人はとかく形式というものを軽蔑するが、
精神は形の上にしか現れない。
私たちは何らかのものを通じてしか、
自己を見出すことも、語ることもできない。
そういう自明なことが忘れられたから、
宗教も芸術も堕落したのである。

P.298
あえて言えば、古事記も、日本書紀も、神話を総括し、
伝説を整頓しただけで、作り話は一つもない。
神話とフィクションのちがいを、私たちはもっとはっきり
心得ておくべきだと思う。

●読書中
『ユリシーズⅠ』byジェイムズ・ジョイス
ユリシーズ〈1〉
スティーヴンがブルームの新聞社にやってきたところ。
英語の修辞学がわからないので、そのあたりが楽しめないのが
ちょっと悔しい。

『古代からの伝言~日出づる国~』by八木荘司
古代からの伝言 日出づる国
「日本書紀」の世界を小説化した作品。

●新たに注文した本
読む本がたまっているので今週はショッピングなし。

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June 09, 2007

『エムズワース卿の受難録』『黒猫・黄金虫』『奇術師』『パンプルムース氏のおすすめ料理』「マーズ・アタック」「情婦」

●今週読んだ本
エムズワース卿の受難録―P.G.ウッドハウス選集〈2〉
エムズワース卿の受難録―P.G.ウッドハウス選集〈2〉

ブランディング城城主であるエムズワース伯爵。
大好きな花をながめ豚を愛し、のんびり暮らしたいのに
周囲の人間が、次々と問題を引き起こす。
それに巻き込まれてしまう伯爵。
城主なのだから、一番偉いはずなのに、
妹に怒鳴られては、しゅんとして、
庭師に「やめる」とおどかされてはおろおろする。
何と愛らしい!
私はこういうおっとりした男に弱い。
後半3分の1にあたる「フレディの航海日記」と
「天翔けるフレッド叔父さん」に伯爵が登場しないのが残念。
これは「文藝春秋のP・G・ウッドハウス選集シリーズ2」なのだが
シリーズ3となる『マリナー氏の冒険記(仮)』は来月、刊行予定。

『黒猫・黄金虫』byエドガー・アラン・ポー
黒猫・黄金虫

「黒猫」と「メールストロムの旋渦」は既に読んでいたので
残りの作品を読んだ。
「アッシャー家の崩壊」がすごくよかった。
足元から寒々としてきた。
「黄金虫」もおもしろかった。
世界初の暗号小説らしい。
積んである創元推理文庫のポー全集も読まねば。

〈プラチナファンタジイ〉 奇術師
〈プラチナファンタジイ〉 奇術師

『双生児』に続きプリースト2作品目。
私はこの著者の作品の楽しみ方がわからないかもしれない。
著者がトリックのために、登場人物を好きなように
動かしているようにしか見えず、心に響いてこないのだ。
そして最後にわかる双方のトリックもイマイチ…
のような気がする。
何か読みのがしているのか?

パンプルムース氏のおすすめ料理
パンプルムース氏のおすすめ料理

パンプルムース氏は元パリ警視庁刑事で
現在はグルメ・ガイドブックの覆面調査員。
お供は、元警察犬のポムフリット。
あるホテル・レストランの味をチェックに来たパンプルムース氏。
なんと出てきた料理の皿の上には首が!
ミステリーとしてはどうってことないんだけど、
パ氏とポムフリットのコンビが魅力的。
シリーズものなので続きも読むつもり。

ユリシーズ〈1〉
ユリシーズ〈1〉

これらの本の合間に、『ユリシーズ』もゆるゆると読み進めている。

●新たに注文した本
ハイペリオン〈上〉
ハイペリオン〈上〉

後述する「長門有希の100冊」に『エンディミオン』があったので
まずはシリーズ1作目から。

さようなら、いままで魚をありがとう
さようなら、いままで魚をありがとう

シリーズ4作目。
3作目である『宇宙クリケット大戦争』をただいま、読書中。

『漱石の夏やすみ』by高島 俊男
漱石の夏やすみ

明治22年、学生だった漱石が23歳の夏やすみに友人4人と房総旅行に出掛け、
その見聞をしるした漢文紀行『木屑録(ぼくせつろく)』について解説した本。
今月、文庫化されました。

パンプルムース家の犬
パンプルムース家の犬

シリーズ2作目の『パンプルムース氏の秘密任務』が到着まで4日かかるみたいなので
とりあえず、即日発送の3作目を注文。

テヘランでロリータを読む
テヘランでロリータを読む

イスラム革命後のイラン。
抑圧的な大学当局に嫌気がさして辞職した著者。
みずから選んだ女子学生7人とともに、
ひそかに自宅で西洋文学を読む読書会をはじめる。
読書会でチョイスされたナボコフもギャツビーもジェイムズもオースティンも未読の私。
果たしてこの本を楽しめるのか?

●今週見た映画
マーズ・アタック!
マーズ・アタック!


監督はティム・バートン。
火星人も宇宙船もマンガに出てくるようなチープさなのだけれど
なぜかはまってしまう。
次々と著名な俳優が登場するのもその魅力のひとつか。
合衆国大統領はジャック・ニコルソン。
007のピアース・ブロスナン、マイケル・J・フォックス、
サラ・ジェシカ・パーカーも登場する。
テーマ曲はトム・ジョーンズの「よくあることさ」で
トム・ジョーンズ本人も出演している。

情婦 [スタジオ・クラシック・シリーズ]
情婦 [スタジオ・クラシック・シリーズ]

弁護士役のチャールズ・ロートンがチャーミングでよかった。
原作である『検察側の証人』を読んでしまっているせいか、
本筋である裁判の動向よりも、病後のロバーツ卿と
彼を心配する周囲の人々とのやりとりの方がおもしろかった。

今日は録画してある『2001年宇宙の旅』を見る予定。

●Amazonの新サービス
Amazonが年会費3900円で
「お急ぎ便」使い放題、
注文金額に関係なく送料無料という新サービスを始めたが、
別に「お急ぎ便」にしなくても通常、3日もあれば届くし、
いつも注文する時は送料無料になる1500円以上は
必ず購入するので、関係ないや。

●長門有希の100冊
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『涼宮ハルヒ』に登場する長門有希が読んでいるという
「長門有希の100冊」というリストが興味深かったのでメモ。

1 ギリシア棺の謎 エラリー・クイーン
2 エンディミオン ダン・シモンズ
3 ウロボロスの偽者 竹本健治
4 双頭の悪魔 有栖川有栖
5 魍魎の匣 京極夏彦
6 ぬかるんでから 佐藤哲也
7 クレープを二度食えば 自選短編集 とり・みき
8 誰彼 法月綸太郎
9 夏と冬の奏鳴曲 麻耶雄嵩
10 猶予の月 神林長平
11 世界のSF全集12 R・A・ハインライン
12 バブリング創世記 筒井康隆
13 〔完本〕黒衣伝説 朝松健
14 パスカルの鼻は長かった 小峰元
15 時間衝突 バリントン・J・ベイリー
16 3つの棺 J・D・カー
17 エイリアン妖山記 菊地秀行
18 順列都市 グレッグ・イーガン
19 ターミナル・エクスペリメント ロバート・J・ソウヤー
20 復活祭のためのレクイエム 新井千裕
21 精神現象学 G・W・F・ヘーゲル
22 伯母殺し リチャード・ハル
23 ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論 高橋昌一郎
24 赤い館の秘密 A・A・ミルン
25 十角館の殺人 綾辻行人
26 ヴィーナスの命題 真木武志
27 五百光年 草上 仁
28 暗号解読 ロゼッタストーンから量子学まで サイモン・シン
29 デュマレスト・サーガ E・C・タブ
30 名探偵の掟 東野圭吾
31 有限と微小のパン 森博嗣
32 魔術の歴史 エリファス・レヴィ
33 オイディプス症候群 笹井潔
34 ダンス・ダンス・ダンス 村上春樹
35 ジョーカー 清涼院流水
36 抱朴子 葛洪
37 殺人喜劇の13人 芦辺拓
38 世界魔法大全〔英国篇〕4 心的自己防衛 ダイアン・フォーチュン
39 妄想自然科学入門 菊川涼音
40 鋼鉄都市 アイザック・アシモフ
41 法の書 アレイスター・クロウリー
42 イーリアス ホメーロス
43 真ク・リトル・リトル神話大系 H・P・ラヴクラフト
44 僧正殺人事件 ヴァン・ダイン
45 衣裳戸棚の女 ピーター・アントニイ
46 殺意 フランシス・アイルズ
47 トンデモ本の世界 と学会
48 ガダラの豚 中島らも
49 悪霊の館 二階堂黎人
50 知性化戦争 デイヴィット・ブリン
51 タウ・ゼロ ポール・アンダースン
52 月に呼ばれて海より如来る 夢枕獏
53 イメージシンボル事典 アト・ド・フリース
54 椿姫を見ませんか 森雅裕
55 呪われし者の書 チャールズ・フォート
56 トリフィド時代 食人植物の恐怖 ジョン・ウィンダム
57 盗まれた街 ジャック・フィニィ
58 デッドソルジャーズ・ライヴ 山田正紀
59 暗闇の中で子供 The Childish Darkness 舞城王太郎
60 失われた時を求めて マルセル・プリースト
61 カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー
62 吉里吉里人 井上ひさし
63 サード・コンタクト 小林一夫
64 吸血鬼伝承「生ける死体」の民俗学 平賀英一郎
65 エイアリン刑事 大原まり子
66 落着かぬ赤毛 E・S・ガードナー
67 ブラウン神父の童心 G・K・チェスタトン
68 昭和歌謡大全集 村上龍
69 地球の長い午後 ブライアン・W・オールディス
70 リング・ワールド ラリイ・ニーヴン
71 エンダーのゲーム オースン・スコット・カード
72 たったひとつの冴えたやりかた ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア
73 奇想、天を動かす 島田荘司
74 最上階の殺人 アントニイ・バークリー
75 夢の樹が接げたなら 森岡浩之
76 スターダスト・シティ 笹本祐一
77 陸橋殺人事件 ロナルド・A・ノックス
78 金なら返せん! 大川豊
79 海を見る人 小林泰三
80 ホッグ連続殺人 ウィリアム・L・デアンドリア
81 思考する物語 SFの原理・歴史・主題 森下一仁
82 ドグラ・マグラ 夢野久作
83 たそがれに還る 光瀬龍
84 ダーコーヴァ年代記 M・Z・ブラッドリー
85 ―――― ---(未知の媒体に記録されているため探知不能)
86 少年エスパー戦隊 豊田有恒
87 ECCENTRICS 吉野朔実
88 太陽の簒奪者 野尻抱介
89 悪魔の系譜 J・B・ラッセル
90 底抜け超大作 映画秘宝編集部編
91 猫たちの聖夜 アキフ・ピリンチ
92 虎よ、虎よ! アルフレッド・ベスター
93 サード・コンタクト 小林一夫
94 五番目のサリー ダニエル・キイス
95 赤と黒 スタンダール
96 百舌の叫ぶ夜 逢坂剛
97 星を継ぐもの J・P・ホーガン
98 できるかなリターンズ 西原理恵子
99 海がきこえる 氷室冴子
100 ―― -(未知の言語で記述されているため解読不能)

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June 02, 2007

『オデュッセイア』『双生児』『夏の夜の夢・あらし』『黒い時計の旅』『ロボット』

●今週読んだ本

ホメロス オデュッセイア〈下〉
ホメロス オデュッセイア〈下〉
先週に引き続き下巻を。
トロイア戦争にまつわる伝説は、
全部で8編の叙事詩で構成されており
順序は
『キュプリア』→『イリアス』→『アイティオピス』→『小イリアス』
→『イリオス落城』→『帰国談(イストイ)』→『オデュッセイア』
→『テレゴニア』となっている。
『イリアス』も読むべきなのだろうけれど、戦闘シーンが多くて退屈そう…
それに有名なトロイの木馬のエピソードは『イリアス』じゃなくて
『イリオス落城』に書いてあるみたいだし。
いうなれば外伝である『アガメムノーン』も読みたい。
今まで気にもしなかったけれど、こういった古典を出版し続ける
岩波文庫の存在は貴重。

双生児
双生児
「プレステージ」の公開間近なプリーストの話題作。
純粋にトリックを楽しめばいいのか。
それとももっと深い何かがひそんでいるのか。
読んでいるうちに、自分の読み方が正しいのかどうか
わからなくなってきて、足元がぐらつく。
これとかカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』とか
文学としてのSFがきてる?

夏の夜の夢・あらし
夏の夜の夢・あらし
再読。
でも10代の頃に読んだきりなので、ほとんど忘れてた。
これを機にシェイクスピアをもっと読んでいきたいのだけれど
慣れていないせいか、どうも戯曲は読みにくい。


黒い時計の旅
黒い時計の旅
たら本第25回「ドイツの文学」で、
ne_sanさん
が紹介してくださった本。
歴史改変SF。
最初は話にのれなかったのだけれど、
途中から俄然、おもしろくなってきて、徹夜しかけた。
今年のベストかもしれない。
島のホテルに暮らす白人の母子。
本土と島の間を渡す船の老船長。
ヒトラー専属の私設ポルノグラファー。
彼らが大きな歴史の渦に巻き込まれていくのか
はたまた彼らが歴史を飲みこむのか。
傑作です。
是非、読んでみて。

ロボット
ロボット
“ロボット”という言葉はこの本から生み出されたもの。
しかし、私たちが頭に思い浮かべる“ロボット”と
この本に登場する“ロボット”は見た目からして
まったく違うものである。
ロボットというよりクローンの考え方に近いのではないか?
しかしソニーの二足歩行ロボットなんか見ている限りでは
のろのろしていてロボットの実用化はまだまだ先ですな。

●新たに注文した本

『ユリシーズ(2)』ジェイムズ・ジョイス
今は1巻をゆるゆる読んでいる。
この本をおもしろく読むコツは、
その都度、訳注をていねいに読むことじゃないかと思う。
多分、さーっと読み流してしまったら、
何が何だかわからないまま終わる可能性がある。

『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル
突然、再読したくなったので。

『奇術師』クリストファー・プリースト
プリースト検証プロジェクト第2弾。

『充たされざる者』カズオ・イシグロ
カフカっぽいらしい。

『エムズワース卿の受難録』P.G. ウッドハウス
来月、文春ウッドハウス選集第三巻『マリナー氏の冒険記(仮)』が
発売されるので、その前に第二巻であるこれを読んでおく。

『パンプルムース氏のおすすめ料理』マイケル・ボンド
東京創元社の新刊案内に『パンプルムース氏とホテルの秘密』が
あったので、まずはシリーズ第1作を読んでみることにする。

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October 07, 2006

『わたしの名は紅』byオルハン・パムク

わたしの名は「紅」
わたしの名は「紅」

今年のノーベル文学賞予想オッズで1番人気の作家の作品。
「わたしは屍」「わたしの名はカラ」「あたしの名はエステル」…
章のタイトル通り、章ごとに語り手が変わる。
全部で59章、600ページ、長かった_| ̄|○

舞台は中世のオスマン・トルコ帝国の都市、イスタンブル。
「飛んでイスタンブ~ル♪by庄野真代」ですね。(古っ)
冒頭で一人の細密画師が殺される。
その犯人さがしをしつつ、
「絵画はアラーのためにある」というイスラムの考えを守ろうとする保守派と
西洋絵画の様式を取り入れようとする革新派の争いについて描く。
また、そこに、12年ぶりにイスタンブルにもどってきたカラと
人妻シェキュレとの恋の行方もからんでいく。

宗教をテーマにしたミステリーということでは
ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』を思い起こすし、
延々と細密画の物語が語られるあたりは
タロットカードを題材にして物語を語る
カルヴィーノの『宿命の交わる城』を思い出す。

前半はおもしろくてどんどん読み進むのだが
後半はやや、だれる。
いよいよ、犯人さがしが佳境にはいってきた時に
名人オスマンが、また、延々と細密画の説明をする箇所は
どうなのだろうか。
絵の説明ばかり、延々と2ページも3ページもやられても…

もっとトルコの歴史や、ヒュスレヴとシリンの物語に代表される
中近東の有名な挿話について知り
ここに書かれていた細密画を見たうえで、再読してみたい。

この本の出版社、藤原書店のHPにおける解説

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August 22, 2005

『コカイン・ナイト』byJ.G.バラード

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J.G.バラード

新潮社 2005-06
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放火殺人容疑で逮捕された弟を助けるために
スペインはジブラルタルにある地中海沿岸の最高級リゾート地
エストレージャ・デ・マルにやってきた主人公。
弟はそのリゾート地にあるスポーツクラブの支配人だった。
他のリゾート地では、人々は人生に退屈し街は眠っているかのようなのに
なぜかエストレージャ・デ・マルだけは活気づいていた。
主人公は早速、調査を始めるが、だんだん街の裏側が見えてきて…

前半は、主人公が関係者に話を聞いたり、事件現場を調査したり
アメリカのサスペンスドラマにありそうなフツーの展開。
描写がうまいので、余計に本を読んでいるというより
ドラマを見ているような気分になる。
バラードはSF作家ということでもっと異世界の話かと思っていたこともあり
だんだんフツーの感じに飽きてくる。
そして中盤にさしかかったあたり…
「私たちの行く手に広がっているのは、この海岸地域で見られるとおりの
余暇社会です。
(中略)
それだけの人たちにどうやってエネルギーを与えるのですか?
何らかのコミュニティの意識を与えるにはどうしたらいいのですか?」

このあたりからやっとバラードが何を描きたいかがわかってくる。

日本も2007年に団塊の世代の定年退職が始まるということで
社会問題となっている。
しかし問題とされているのは、人材不足や経済だったりするのだが
暇になってしまった当人たちがどうなるかについては
あまり考えられていない。
日本にもクロフォードのような人が現れるかもしれない。
(クロフォードはこの作品の中で退屈している人々を
ある方法によって活気づかせます)
お年寄りをねらったリフォーム詐欺も、ある意味、
クロフォード的かもしれないなあ。
あとがきで高橋源一郎氏がこの本で行われる犯罪が
戦争に似ていると書いているが
私もそう感じた。
退屈した人々の前にある種のカリスマ性を持った人間が
現れた時、人は流されるのである。

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July 19, 2005

『ホワイト・ティース』byゼイディー・スミス

4105900234ホワイト・ティース(上)
ゼイディー スミス 小竹 由美子
新潮社 2001-06-29

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物語はロンドンの下町育ちで、優柔不断きわまりないが
底ぬけに人のいいアーチーと
バングラデシュ出身のムスリムで誇り高い教養人サマードとの
半世紀に渡る友情を軸に
地理的にはヨーロッパ大陸からインド、そしてジャマイカ、
時間的にはセポイの乱(1857)にジャマイカ大地震(1907)
第二次大戦から現代へと自在に行き来しながら進んでいく。
登場人物もまた一筋縄ではいかない面々ばかりだ。
イスラム原理主義の若者たち、生真面目なエホバの証人、
過激な動物愛護主義者、
リベラルなインテリを気取る遺伝子工学者と園芸家の夫妻、
フェミニストのレズビアン。
複雑で不安定な現代のありさまを鮮やかにすくいとった本書には、
宗教、人種間の軋轢、世代の断絶、移民のアイデンティティー、
遺伝子工学の倫理と多様なテーマが盛り込まれている。

(あとがきより)

日本にいると日本人という人種について考えていれば済んでしまうところがあるが
世界にはたくさんの人種がいる。
それを知るにはよい一冊だと思う。
といっても、タイム紙がこの本を評して「お説教も垂れず、どちらの味方にもつかない」と
書いているように、決して説教臭くなくむしろコミカルでさえある作品だ。
著者が24才の時に書いたこの作品は2000年のベストセラーとなり
数々の賞を受賞した。
日本では翌年、『世界の中心で愛を叫ぶ』が発売されベストセラーとなった。
この違いって…(以下略)

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April 01, 2005

『クムラン』byエリエット・アベカシス

クムラン
エリエット アベカシス Eliette Ab´ecassis 鈴木 敏弘

角川書店 2000-02
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1947年、クムランの洞窟で発見された死海文書をテーマにした神学ミステリー。
正直、ミステリーとしては×。

ユダヤ教敬虔派である主人公が、クムランで発見された古文書のうち
盗まれた巻物を探すというストーリー。
その先々で、殺人事件が起きる。
ラストは結構、突拍子もない。

とにかく死海文書、エッセネ派、キリスト教の説明が長い。
それは私としては望むところなので、読みにくかったけれどがんばって読んだ。
しかし、結局、よくわからず_| ̄|○
フランスではベストセラーになったらしいので、
クリスチャンには簡単に理解できる内容なのかもしれない。

小説を読んで知識を得ようという一石二鳥的な考えが甘かった。
今度はちゃんと死海文書に関する専門書を読もう…

最後にあとがきから一部抜粋。

宗教を知らないで世界の文化を深く味わうことは出来ない。
その意味で、宗教に関心のない日本人は大きな損をしている。
世界が狭くなっているいま、大事なのは、世界共通の価値観を
何らかの形で共有することだ。
クリスチャンは19億人、イスラム教は11億人、ユダヤ教は1400万人、仏教徒は3億人
といわれる。
無宗教も、宗教を知らないで語っては無意味だ。

語学もいいけれど、相手の文化を知るって大事よね♪

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January 15, 2005

『ペンギンの憂鬱』byアンドレイ・クルコフ

ペンギンの憂鬱
アンドレイ・クルコフ 沼野 恭子

新潮社 2004-09-29
売り上げランキング 1,399

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この著者はずるい。
CMは子供や動物を使えば必ずヒットするといわれている。
「憂鬱症のペンギン」が出てくる本だなんて、売れるに決まってるじゃないか!
ちなみにロシア語タイトルは『氷上のピクニック』なのですが
日本語タイトルの『ペンギンの憂鬱』の方が断然、いいですね!

恋人に去られた孤独なヴィクトルは、憂鬱症のペンギンと暮らす売れない小説家
生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたが、
そのうちまだ生きている大物政治家や財界人や軍人たちの「追悼記事」を
あらかじめ書いておく仕事を頼まれ、やがてその大物たちが次々と死んでいく。
舞台はソ連崩壊後の新生国家ウクライナの首都キエフ。
ヴィクトルの身辺にも不穏な影がちらつく。

ペンギンのミーシャは、もちろんペンギンなのでしゃべりません。
しかし、人間と同じ2本足のせいか、その存在感は半端じゃありません。
猫や犬ではこの雰囲気は出せなかったと思います。

そうそう、著者がこの作品を書くヒントを得た「警官とペンギンの古い一口話」を
ご紹介しておきましょう。

警部が車で街をまわっていると、警官のペトレンコがペンギンを連れて歩いているのに
気がついた。
警部は車を止めて言った。
「何をしてるんだね。すぐにペンギンを動物園に連れていきたまえ」
「わかりました」とペトレンコ。
こうしていったん別れたが、二時間ほどすると、別の場所でまたペトレンコとペンギンに
出くわした。
警部は怒って、どなりつけた。
「さっき、ペンギンを動物園に連れていけって言っただろ!?」
すると警官のペトレンコはこう答えた。
「動物園にはもう連れていきました。映画にも行きました。
これからサーカスに行くところです」

わはは。おもしろいでしょう?
ペンギンの話ばかりしてしまいましたが、サスペンスとしても楽しめます。

ところで読んでいるうちに「何だか村上春樹の作品に似てるな」と思っていたら
翻訳者の沼野さんも同じように感じていらして、実際、著者のクルコフさんは
『羊をめぐる冒険』がお気に入りなのだそうです。
そんなわけで村上春樹ファンにもオススメ♪

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September 17, 2004

『日の名残り』byカズオ・イシグロ

日の名残り
カズオ イシグロ, Kazuo Ishiguro, 土屋 政雄

発売日 2001/05
売り上げランキング 8,045

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すばらしい小説だという噂は耳にしていた。
そして、最初の5ページを読んだあたりで、私はもうこの本に夢中になってしまっていた。

<ストーリー>
主人公のスティーブンスはダーリントン・ホールという屋敷の執事である。
現在、仕えている主人から旅行を勧められ、7日間の旅に出る。
旅の間、スティーブンスは、自分の執事としての歴史、
ダーリントン・ホールで起きた様々な事件、
かつての主人だったダーリントン卿の思い出を振り返る。

何しろスティーブンスがすばらしい。
あまりの生真面目さに笑ってしまうほど、職務に忠実で、完璧な執事であろうと努力してきた。
しかし、彼が真剣であれば真剣であるほど、読者の笑いを誘う。

ダーリントン・ホールでは二つの大戦の間に重要な国際会議が開かれた。
その会議においてダーリントン卿は大事な役割を担った。
スティーブンスはそれを誇りに思っている。
しかし、戦後、ダーリントン卿はその名誉を奪われる事になる。
このあたりのくだりでは、戦時中のイギリスとドイツの関係が描かれており、興味深い。

そして旅の終わりにスティーブンスは日が暮れる景色を眺めながら、
その風景を自分の人生と重ねあわせる。
そしてスティーブンスが出した結論は・・・

最後、ぐっときます。
泣けます!
映画化もされているようなので、本を読む時間の無い方はそちらで是非!

<追記>
最近、ホテルやレストランにおける従業員の質が明らかに下がっているように
感じます。
と、同時に客の質も悪い。
スティーブンスがその人生で何より重んじたのが「品格」。
一体、どこに行ってしまったのでしょう?

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September 14, 2004

『停電の夜に』byジュンパ・ラヒリ

停電の夜に
ジュンパ ラヒリ, Jhumpa Lahiri, 小川 高義

発売日 2003/02
売り上げランキング 807

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登場人物はインド系アメリカ人もしくはインド人がほとんどである。
しかし、それがアメリカ人や日本人であっても違和感なく読むことができる。
どれも日常によくありそうな話なのである。
だからといって凡庸なわけではない。
9つの短編はどれもみな、せつない。

あとがきに
「たいした大事件を起こすわけではなく、
また民族性を振りかざしてドラマを盛り上げることもしない。
それでいて何らかの意味でアメリカとインドの狭間に身を置いた人々の
いつもの暮らしの中に生じた悲劇や喜劇をじっくり味わわせてくれる」とある。

まさにその通りの作品であった。
その中のひとつ「セクシー」にこんなシーンがある。

目下、不倫中のミランダは7才の男の子を半日、預かる羽目になる。
その男の子ロヒンがクローゼットから銀色のカクテルドレスを見つけ、ミランダに着ろという。
実はそのドレスは不倫相手との食事のために買ったものなのだが、
理由あっていまだに着る機会にめぐまれない。
ミランダは渋々、ロヒンにいわれるままにその銀色のカクテルドレスを身につける。
そしてロヒンはこういう。
「セクシーだ」

実は「セクシーだ」といったロヒンもせつないし、そういわれたミランダもせつないのである。
何故かは読んでからのお楽しみ。

先月、このジュンパ・ラヒリによる長編『その名にちなんで』が出版された。
評判もいいようである。
近いうちに是非、読みたいと思う。

追記
〜『停電の夜に』を読み終えられた方へ〜
あなたはどの作品がお好きですか?

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