August 31, 2007

『桜庭一樹読書日記』『去年ルノアールで』『ハイペリオンの没落』『陸行水行』「沢木耕太郎 真夏の夜の夢」

●今週、読んだ本
『桜庭一樹読書日記』by桜庭一樹
桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。

桜庭一樹が縦横無尽に読んで過ごした、疾風怒濤の1年間。
「Webミステリーズ!」で大好評を博した読書エッセイ。
本文への注釈や書誌データなどを盛り込んで単行本化。
冒頭部分と続編をコチラで読むことができます。

彼女の作品は『赤朽葉家の伝説』しか読んだことがなくて、
正直、イマイチだったのだが、
この本を読み、桜庭さん自身はすごく好きだと思った。
まず生活していくうえにおいて、何よりも読書に重点を置いていることに
好感が持てた。
(作家の日記なので、どこまで本当かはわからないが、
少なくとも桜庭さんに関しては真実なんじゃないかと思う)
桜庭さんの読書量は尋常じゃない。
読むスピードもかなり早い。
読書日記だからかもしれないが、本屋ばかり行っている。
そして桜庭さんの文章には本への愛情が溢れている。
ここで紹介されている本、すべてを読みたくなってしまう。
そんな1冊だった。
昨年出版された『桜庭一樹日記』も読んでみようかなあ。

『去年ルノアールで』byせきしろ
去年ルノアールで

私は今日もルノアールにいた。
客や店員の様子を眺めるうちに、「私」は妄想を暴走させ、
無益な1日を過ごしてしまう…。
無気力派文士の初エッセイ集。
『relax』連載に加筆・修正し、書き下ろしを足して書籍化。
現在、ドラマ化され、TV東京で放送中
秋にはDVD化も予定されている。

街から喫茶店がどんどん消えていっている。
代わりに増殖しているのが○ターバックスや○トールのような
コーヒーショップだ。
それらの店にいるのは、オシャレを気取る若者ばかりで
この本に登場する
“でかでかと黒豹がプリントされたトレーナーを着たおばさん”や
“昼寝するサラリーマン”や“競馬新聞を赤ペンでチェックするオヤジ”はいない。
コーヒーショップでは、みな、コーヒーを飲むとそそくさと立ち上がり、
次の目的地へと向かう。
あくまでも一時的な休憩だ。
しかし、喫茶店の客に次の目的地なんてない。
何の仕事をしているのかもわからない怪しげな常連が、
昼過ぎになると集まりだし、だらだらと株やゴルフの話をし続ける。
そういう場である喫茶店が消えつつあるということは、
日本という国が余裕のない国になりつつあるということだ。
私はコーヒーショップに、オシャレや日常の効率を強要するファシズムさえ感じる。
そういう意味で、ルノアールは「余裕のある国、日本」の最後の砦なのだ。
ルノアールには世間の流れに負けずがんばってもらいたいと思う。

『ハイペリオンの没落』byダン・シモンズ
ハイペリオンの没落〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)ハイペリオンの没落〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

先週、読んだ『ハイペリオン』の続き。
正直、イマイチ…。
『ハイペリオン』は文学の匂いがする作品だったのだが、
『ハイペリオンの没落』は巡礼者VSシュライク、
連邦政府VS宇宙の蛮族アウスター、双方の戦闘シーンの連続であり、
スペースオペラそのもので娯楽作品としての要素が強い。
これは小説を読むより映画で見る方が楽しめるのでは?
(『ハイペリオン』は映画化の話が出ているようですが…)
連邦政府CEOであるグラッドストーンにお抱え画家として招かれた
M・セヴァーンが唯一、文学的な存在に感じた。
しかし、そもそも私が文学的、非文学的と感じる差異は何なんだろう?

『陸行水行』by松本清張
陸行水行 新装版 (文春文庫 ま 1-110 別冊黒い画集 2)

「形」「陸行水行」「寝敷き」「断線」の4作を収録
表題作である邪馬台国について書かれた「陸行水行」が読みたくて
買ったのだが、私が記憶している作品と違った。
邪馬台国について書かれたこれではない短編を読んだ記憶があるのだが…

●今週、聴いたラジオ
沢木耕太郎の「真夏の夜の夢」
TBSで8月19日の深夜1時~4時に放送された。
生放送。
私は録音しておいたものを今週、聴いた。
番組のメインは対談。(ただしこちらは録音)
ゲストは井上陽水と瀬戸内寂聴。
沢木さんの声を初めて聞いた。
語り口が優しく、すっと耳にはいってくる声である。
音楽もJAZZありPOPSありでとてもよかったのだけど、
曲目がわからなかったのが残念。
沢木さんの代表作『深夜特急』を映像化した「劇的紀行深夜特急」の主題歌である
陽水さんの「積み荷のない船」(いい曲です!)がかかってました。

●たら本
Tara37
たら本、第37回が始まっています。
どなたでも参加できるTB企画。
テーマに沿った本を紹介する記事を書き、
主催者さんや他の参加者にトラックバックやコメントをするという趣旨です。
詳細はコチラ
今回の主催は「本を読む女。」のざれこさん
お題は「犬にかまけて」です。
私は今回、紹介のみでお休みします。

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August 25, 2007

『ハイペリオン』『虐殺器官』「“虞美人草”殺人事件 漱石 百年の恋物語」

SFがマイブーム。
現代を表現するのには純文学よりSFの方が適しているのではないかと
最近、思う。

●今週、読んだ本
『ハイペリオン』byダン・シモンズ
ハイペリオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)ハイペリオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

時は28世紀、人類社会の辺境に位置する惑星ハイペリオン――
今まさに、この星にある謎の遺跡「時間の墓標」に封じられた、
時を超越する怪物シュライクが解きはなたれようとしていた。
その謎を解明すべく送りだされた7人の巡礼者が、
旅の途上で語る数奇な人生の物語とは……

巡礼者たちが語る7つのエピソードが、枠物語になっているのだが、
そのひとつひとつが1冊の本になるくらい、濃い。
この枠物語の中にシモンズはありとあらゆるスタイルとジャンルを
詰めこんでいる。
一人称、三人称、日記体、回想、夢想、仮想、カットバック…。
それらを駆使して描かれる年代記、一代記、戦記、叙事詩、宗教物語、
秘境探検、ホラー、ミステリー、ハードボイルド、アクション、ラブストーリー。
そしてすべての物語に共通するキーワード、「ハイペリオン」。
SFというよりは文学の匂いがする作品。
好きな順番は
1位 「司祭の物語」
何度か投げ出しそうになったのだが、ピクラ族を見つけたあたりから
ぐぐっとひきこまれた。
2位 「探偵の物語」
ハードボイルドは好きじゃないが、サイブリッドのジョニィがステキ♪
3位 「学者の物語」
ソルが連れていた赤ちゃんはそういうことだったかと納得。
4位 「領事の物語」
恋人と再会するたびに、○○している自分を見せるのは切ないだろうなあ。
5位 「詩人の物語」
詩人サイリーナスに一番、同情できないんだよねえ。
6位「兵士の物語」
戦闘シーンを文字で読むのってめんどくさい。

みなさんはどの巡礼者のエピソードが好きですか?

『虐殺器官』by伊藤計劃
虐殺器官

9・11以降、後進諸国では内戦や民族虐殺が凄まじい勢いで増加していた。
その背後でつねに囁かれる謎の米国人ジョン・ポールの存在。
はたしてジョン・ポールの目的とは?
そして大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?

タイトルがすごいので、読むのをためらっていたのだが、とうとう手を出す。
大森望はこれか『Self Reference Engine』が今年のベストSFといっている。
戦闘シーン、殺戮シーンだらけかと思っていたが、そうでもない。
ただ残酷なシーンはある。
登場人物が事あるごとに哲学的な話をするのだけれど、
今ひとつ、理解できなかった。
カフカやナイルパーチやルワンダの話題など、著者自身も消化しきれないまま、
エピソードを挿入しているような気もする。
でもおもしろい作品ではある。

●今週、見たTV番組
NHKハイビジョン特集 シリーズ恋物語
「“虞美人草”殺人事件 漱石 百年の恋物語」

「“虞美人草”のヒロイン藤尾を殺したのは誰か?」がテーマの対談。
メンバーは、小森陽一(文芸評論家)、小倉千加子(心理学者)、
島田雅彦(作家)、岩井志麻子(作家)、斉藤環(精神科医)。
温泉旅館で、食事をしつつ酒を飲みつつ、半日以上かけての討論が
深夜まで続く。
また、対談の間には「虞美人草」の朗読劇がはさまれる。
藤尾役は黒谷友香。
対談で光っていたのが小倉千加子さん。
島田雅彦がけちょんけちょんにやられていた(笑)。
岩井志麻子はひたすら「NHKだから私の得意なエロ話が披露できない~」と
騒いでいた。
小倉さんの文学論をもっと聞きたいなあと思ったら、
ちょうど「本を読む人々。」でTRKさんに紹介していただいた『男流文学論』が
上野千鶴子さんとの共著だった。
早速、買う。

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August 18, 2007

『国のない男』『高い城の男』「マルホランド・ドライブ」

お盆って何だか落ち着いて本が読めません。
それでも何とか2冊、読了。

●今週、読んだ本
『国のない男』byカート・ヴォネガット
国のない男
今年の4月に亡くなったカート・ヴォネガットの遺作エッセイ。
これを読んでいるうちに、地球からすべての生物がいなくなる可能性が
なくはないんだと気づき(それも人間のせいで)
それ以来、誰もいない地球がカラカラと回る映像が
頭から離れなくて困っている。
爆笑問題のニッポンの教養」という番組で、
井田茂教授が地球外生命がある可能性は10%くらいといっていた。
(ただし、SF映画に出てくるような宇宙人という形ではない)
もし、地球外生命がいなかった場合、地球上の生物がすべて滅んでしまったら、
この広い宇宙は何のために存在しているのだろう?

『高い城の男』byフィリップ・K・ディック
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『国のない男』を読んだら、猛烈にSFが読みたくなって、
とりあえず積んであったこの本を手に取る。

第二次世界大戦でもしドイツと日本が戦争に勝っていたら…という話。
アメリカは、大西洋側はドイツ、太平洋側は日本に占領されていた。
舞台は日本に占領されているサンフランシスコ。
上流階級である日本人を相手に戦前のアメリカの民芸品の店を営んでいる
ロバート・チルダン。
自分がユダヤ人であることを隠して民芸品の贋造を続けるフランク・フリンク。
フランクの元妻、ジュリアナ。
サンフランシスコ最大の貿易公団を代表する田上信輔。
スエーデンからプラスチック事業の交渉で田上のところにやってくるバイネス。
それぞれのエピソードが多視点で語られていく。

最後に全員のエピソードがカチッと合うのだろうと期待していたが
予想に反し、ぐずぐずに…
あの伏線らしきものたちは何だったんだ。
なぜ、これがヒューゴー賞?
占領軍である日本が押しつけたとされる易経(占い)。
その道具を誰もがが持っていて、何か重要事項を決定する際に必ず占い出し
右往左往するのもどうかと…
あとがきによれば、執筆当時、ディック自身が易経を日常の行動指針として
使いだしたらしい。
そういう人が、サイエンスフィクションを書くってどうなの?
サイエンスって科学でしょう?
ディックはもう読まない。

●今週、見た映画
「マルホランド・ドライブ」
マルホランド・ドライブ

ある真夜中、マルホランド・ドライブで車の衝突事故が発生。
ただ独り助かった黒髪の女は、ハリウッドの街までなんとか辿り着き、
留守宅へ忍び込む。
すると、そこは有名女優ルースの家だった。
そして、直後にやってきたルースの姪ベティに見つかってしまう。
ベティは、とっさにリタと名乗ったこの女を叔母の友人と思い込むが、
すぐに見知らぬ他人であることを知った。
何も思い出せないと打ち明けるリタ。
手掛かりは大金と謎の青い鍵が入った彼女のバッグ。
ベティは同情と好奇心から、リタの記憶を取り戻す手助けを
買って出るのだが…。

好き好き。
特にクラブ・シレンシオのシーンがいい。
レストラン・ウインキーズの裏で、突然、何かが出てきたシーンとか、
ベティとダイアンが17号室にはいったシーンでは
心臓、止まりそうだったけど。
「シレンシオ!お静かに。楽団はいません。オーケストラも…
これは全部テープです。これらは何もかもまやかしです。」

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June 23, 2007

『充たされざる者』『さようなら、いままで魚をありがとう』『ほとんど無害』『迷宮パノラマ館』『かくれ里』

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昨夜、NHK「プレミアム10」でユーミンのライブをやっていた。
音楽プロデューサーの寺岡呼人が企画したもので
ゆず、桜井和寿も参加していた。
何だかんだ20代の頃、一番よく聴いていたのはユーミンなので
ライブを見ているうちに、その頃の自分がよみがえってきて
ユーミンの歌ではないが「あの日に帰りたい」と思ってしまった。
しかし、ゆずファンの方が「ユーミンという人がよかった」と
ネットに書いていらして
「もう若い人にとってユーミンは“ユーミンという人”なんだなあ」と
寂しい気持ちになった。
一方で私にとってもゆずは“ゆずという人”だったりするわけだが…
どうして人は、今の音楽でなく、若い頃に聴いた音楽に
強くひきつけられるのだろう?
その直後が「爆笑問題のニッポンの教養」という番組で、
爆笑問題が東京理科大学薬学部の田沼靖一教授と
「ヒトはなぜ死ぬのか?」をテーマに語っていた。
田沼教授「遺伝子にはあらかじめ死がプログラムされている」
太田「では、遺伝子を操作すれば不死も不可能ではない?」
田沼教授「できたとして不死に何の意味があるのか?」
ちょうどユーミンの番組を見て「若い頃にもどりたい」と
思ったところだったので考えさせられる内容だった。

●今週読んだ本
『充たされざる者』byカズオ・イシグロ
充たされざる者

世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。
「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、
日程や演目さえ彼には定かでない。
ライダーはそれとなく詳細を探るが、
奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り……。

帯に「イシグロがカフカを超える」とあるが
それはあまりにも不遜なキャッチコピーじゃないか?
確かにカフカの『城』に似ている。
が、それも前半まで。
町の人々がみな人間的過ぎるし、ストーリーも明確で、
作品説明にある「悪夢のような不条理」は感じない。
一方、『城』の主人公Kは最後まで外来者であり続ける。
村人は人間であって人間でないようなまさに悪夢のような存在。
と、カフカファンである私は帯のキャッチコピーにカチンとして
カフカと比較して読んでしまったが
そうじゃない読み方ももちろんあると思う。
ネットで検索したらボリス、シュテファン、クリストフ、ブロッキーを
それぞれライダーの少年期、青年期、壮年期、老年期ととらえた感想があった。
え、そうなの?
私はこの4人はまったく別のキャラクターに思えたのだけれど…(・∀・;)

『さようなら、いままで魚をありがとう』byダグラス・アダムス
『ほとんど無害』byダグラス・アダムス
さようなら、いままで魚をありがとうほとんど無害

銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。
どこをとっても平凡な英国人、アーサー・デントは
最後の生き残りとなる。
アーサーはたまたま地球にいた宇宙人フォードと
宇宙でヒッチハイクをするはめに。

というストーリーの『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズ第4弾&第5弾。
これでシリーズをすべて読み終えたことになる。
シリーズが後半になるに連れて、コメディからシリアスな内容に移行し、
熟成されていく感じがよかった。
作者の年齢とも関係があるのかもしれない。
ファンは1~3巻を正篇、4&5巻は「三部作の4番目と5番目」と呼び
分離して考えるようだが、
私は4&5巻あっての『銀河ヒッチハイクガイド』なんじゃないかと思う。
4巻ではアーサーが恋をして、5巻でその恋を失ったアーサーが
サンドイッチ職人として幸せそうに暮らしているところ、じーんとした。
ラストの評判が悪いようだが、私は嫌いじゃない。
映画も近いうちに見たい。

『迷宮パノラマ館』by芦辺拓
迷宮パノラマ館
著者が若い時に書いた短編と最近の作品であるショート・ショート、
講談・ラジオ台本を集めた作品集。
帯には
「ミステリ、SF、ホラー、講談…奇才・芦辺拓が贈るひとり雑誌」
と書いてある。
「太平天国の乱」と「クトゥルー神話」を組み合わせた
『太平天国の邪神』がよかった。
ショート・ショートはやはり短すぎて物足りなかった。
芦辺拓が好きという方以外にはオススメできないかも…

『かくれ里』by白洲正子
かくれ里

白洲正子が朽木谷、菅浦、久々利といった
知る人ぞ知るかくれ里を訪ねる紀行エッセイ。
深い木立にかこまれた神社に残されている古面、
政変で都を追われた天皇たちの悲しいエピソード、
山奥に残る古代信仰のあと。
しかしこの作品が発表されたのは1971年。
もうこれらの土地も観光客によって荒されてしまっているだろうか。
日本書紀、万葉集、太平記といった日本の古典をもっと読み、
京都周辺の詳細な地図を手元に置いて再度、読みたい。

P.11
バスから押し出される観光客は、信仰とも鑑賞とも、
いや単なる見物からも程遠い人種に違いない。
ただ隣の人が行くから行く…(中略)
仏像や古美術も…(中略)不断の尊敬と愛情によって
磨かれ、育ち、輝きを増す。

P.16
伎楽はおそらくギリシャから西域を経て、中国に渡り、
朝鮮経由で、七世紀の頃、日本に将来された芸能だが、
外国では滅びてしまったその伝統が、日本の片田舎に
こうして生き残っていることに…(中略)
日本の国そのものが、世界のかくれ里的存在といえるのでは
ないだろうか。

P.42
明け行く空と、落ちる月影に、軽の皇子への希望と、
草壁の皇子への追慕を見るのは行きすぎで、
歌はそのままの姿で味わうのが一番いいのである。

P.232
天然記念物に指定されてから急にはやり出したと聞くが、
やたらに指定するのも考えものである。
指定されたために、全滅した植物や鉱物は多い。

P.279
現代人はとかく形式というものを軽蔑するが、
精神は形の上にしか現れない。
私たちは何らかのものを通じてしか、
自己を見出すことも、語ることもできない。
そういう自明なことが忘れられたから、
宗教も芸術も堕落したのである。

P.298
あえて言えば、古事記も、日本書紀も、神話を総括し、
伝説を整頓しただけで、作り話は一つもない。
神話とフィクションのちがいを、私たちはもっとはっきり
心得ておくべきだと思う。

●読書中
『ユリシーズⅠ』byジェイムズ・ジョイス
ユリシーズ〈1〉
スティーヴンがブルームの新聞社にやってきたところ。
英語の修辞学がわからないので、そのあたりが楽しめないのが
ちょっと悔しい。

『古代からの伝言~日出づる国~』by八木荘司
古代からの伝言 日出づる国
「日本書紀」の世界を小説化した作品。

●新たに注文した本
読む本がたまっているので今週はショッピングなし。

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June 16, 2007

『宇宙クリケット大戦争』『村田エフェンディ滞土録』『テヘランでロリータを読む』

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今日はブルームズ・デイである。
ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』という小説が
1904年6月16日のダブリンでの出来事を描いているので、
この日を主人公ブルームの名を取って、ブルームズ・デイと呼んでいる。
その『ユリシーズ』は、他の本に浮気ばかりしているので、まだ1巻…
ブルームたちが墓地に着いたところ。

●今週読んだ本
『宇宙クリケット大戦争』byダグラス・アダムス
宇宙クリケット大戦争

銀河バイパス建設のため、ある日突然、地球が消滅。
どこをとっても平凡な英国人、アーサー・デントは
最後の生き残りとなる。
アーサーはたまたま地球にいた宇宙人フォードと
宇宙でヒッチハイクをするはめに。

というストーリーの『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズ第3弾。
今度はクリキット軍の侵略により銀河系が全滅の危機。
有無をいわさないクリキット軍による殺戮は、
まるで先週見た映画「マーズ・アタック」みたいだ。
ロボットのマーヴィンは相変わらずのウツっぷりでかわいいが
今回は何といってもワウバッガーとアグラジャッグがいい。
ワウバッガーはうっかり不死性を獲得してしまい、
最初のうちは人生を楽しんでいたがそのうち退屈してきて、
ついにアルファベット順にすべての生命体を侮辱することを
生きる目的とする。
アグラジャッグは生まれ変わるたびにアーサー・デントに
“全くの偶然”で殺害される運命を持つ。
ウサギの時は毛皮の袋にされ、ハエの時は叩き殺され、
イモリの時は踏みつぶされた。
「どんな惑星、どんな肉体、どんな時代に生まれても
やっと落ち着きかけたころにアーサー・デントがやってきて――
ボカン、で一巻の終わりさ」(P.174)

『村田エフェンディ滞土録』by梨木香歩
村田エフェンディ滞土録
『家守綺譚』の主人公、綿貫の友人である村田のトルコ留学記。
登場人物がみな魅力的で、
当時、トルコがおかれていた国際的状況なども興味深く
ただ、「『家守綺譚』とどちらが好き?」といわれれば、
より幻想的である『家守綺譚』かなあと思ってた。
が、ラストで号泣。
あまりにつらい。
オウムが村田のところへきたのがせめてものなぐさめ。

『テヘランでロリータを読む』byアーザル ナフィーシー
テヘランでロリータを読む
「ノンフィクションは苦手、小説が好き」という人にも読んでほしい作品。

本書はイラン出身の女性英文学者アーザル・ナフィーシーが、
1979年のイスラーム革命から18年間、激動のイランで暮らした経験を
英語で綴った文学的回想録の全訳である。
テヘランの大学で英文学を講じていたナフィーシーは、
1995年、抑圧的な大学当局に嫌気がさして辞職し、
みずから選んだ優秀な女子学生7人とともに、毎週木曜日、
ひそかに自宅で西洋文学を読む研究会をはじめた。
とりあげた小説は主としてナボコフ、フロベール、ジェイムズ、
オースティン、ベロウなど、イランでは禁じられた西洋文学の数々だった。
イスラーム革命後のイランは、生活の隅々まで当局の看視の目が光る
一種の全体主義社会となり、とりわけ女性は自由を奪われ、
厳しい道徳や規制を強制されて苦しんでいた。
秘密の読書会は、圧制の下に生きる女たちにとって、
ささやかながら、かけがえのない自由の場となり、
ナフィーシーがアメリカに移住する1997年までつづいた。
(あとがきより)

ナボコフ、ギャツビー、ジェイムズ、オースティンの
4つの章に分かれており、
これらの作家の文学論にもなっている。
女子学生たちの読書会を中心に話が進むのかと思ったが、
読書会に関する記述は1章と4章のみで
著者自身がイスラム革命後のイランでどう生きたかが
物語のメインである。
まるで自分もその場にいるかのようななまなましさで
当時のイランの様子が伝わってくる。
チャドルの着用を義務付けられ、海外の本や映画は禁止、
こんな風に国が個人を抑圧するという事態はあってはならないと思う。
ただ、この本で取り上げられている作品は、
『ロリータ』や『高慢と偏見』を初め男女の関係をテーマとした小説が多い。
著者はいう。
「小説入門講座で私が強調したかった点は、小説とは新たに誕生した物語形式が、
いかに人間のもっとも重要な関係をめぐる基本的な通念を根底から変え、
ひいては人間と社会、仕事、義務との関係に対する伝統的な姿勢を
変化させたかにあった。
こうした変化がどこよりもはっきり見られるのは男女の関係である。」
この箇所のように時々、著者の考え方に「ん?」と思うことがあった。
あとがきで訳者が著者の文学観について「古風」と書いている。
私が感じた違和感はそれだろうか。
もうひとつ。
昨年、ノーベル文学賞を受賞したオルハン・パムクにしてもこの著者にしても
欧米は反イスラム的なものを好む傾向にないか?ということもちょっと思った。

●読書中
『充たされざる者』byカズオ・イシグロ
充たされざる者
とにかく長い。(全部で939ページ)
帯に「イシグロがカフカを超える」と書いてある。
確かに最初の方は町の人々の意図がわからず謎めいていて
カフカの『城』を思い起こさせるのだが、
後半は、いろいろなことがはっきりしてきて、
カフカのような幻想さはすっかり消えてしまう。
今、P.646なのだけれど、もう読むのやめたい…

●新たに注文した本
『三等旅行記』林芙美子
昭和6年に著者が下関~パリをシベリア鉄道で旅した様子を書いたもの。
私が購入したのは昭和8年発行の初版本。
戦争を生き抜いてきた本だと思うと感動。
旧かなだから読みにくいかと思ったけどそうでもない。

『フィンバーズ・ホテル』byダーモット・ボルジャー他
フィンバーズ・ホテル
アイルランドの首都ダブリンのはずれにある1920年代に建てられた実在のホテル。
間もなく閉鎖されようとするこの古びたホテルを舞台に、
アイルランドの名手六人が匿名で挑戦したオムニバス小説。
それぞれの作品がつながっているのがミソ。

『高い城の男』フィリップ K.ディック
歴史改変小説。
第二次世界大戦が枢軸国側の勝利に終わってから十五年、
世界はいまだに日独二国の支配下にあった。
日本が支配するアメリカ西海岸では連合国側の勝利を描く書物が
密かに読まれていた……

『時の娘』ジョセフィン・テイ
いわゆる安楽椅子探偵もの。
英国史上最も悪名高い王、リチャード三世――
彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか?
退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、
純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。

『ほとんど無害』byダグラス・アダムス
ほとんど無害
これで『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズも完結。

『迷宮パノラマ館』by芦辺拓
迷宮パノラマ館
乱歩風?
ショートショートや短編が収録されていて「ひとり雑誌」という体裁のようだ。

『バートン版 千夜一夜物語 第1巻 シャーラザットの初夜』
バートン版 千夜一夜物語 第1巻 シャーラザットの初夜

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June 02, 2007

『オデュッセイア』『双生児』『夏の夜の夢・あらし』『黒い時計の旅』『ロボット』

●今週読んだ本

ホメロス オデュッセイア〈下〉
ホメロス オデュッセイア〈下〉
先週に引き続き下巻を。
トロイア戦争にまつわる伝説は、
全部で8編の叙事詩で構成されており
順序は
『キュプリア』→『イリアス』→『アイティオピス』→『小イリアス』
→『イリオス落城』→『帰国談(イストイ)』→『オデュッセイア』
→『テレゴニア』となっている。
『イリアス』も読むべきなのだろうけれど、戦闘シーンが多くて退屈そう…
それに有名なトロイの木馬のエピソードは『イリアス』じゃなくて
『イリオス落城』に書いてあるみたいだし。
いうなれば外伝である『アガメムノーン』も読みたい。
今まで気にもしなかったけれど、こういった古典を出版し続ける
岩波文庫の存在は貴重。

双生児
双生児
「プレステージ」の公開間近なプリーストの話題作。
純粋にトリックを楽しめばいいのか。
それとももっと深い何かがひそんでいるのか。
読んでいるうちに、自分の読み方が正しいのかどうか
わからなくなってきて、足元がぐらつく。
これとかカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』とか
文学としてのSFがきてる?

夏の夜の夢・あらし
夏の夜の夢・あらし
再読。
でも10代の頃に読んだきりなので、ほとんど忘れてた。
これを機にシェイクスピアをもっと読んでいきたいのだけれど
慣れていないせいか、どうも戯曲は読みにくい。


黒い時計の旅
黒い時計の旅
たら本第25回「ドイツの文学」で、
ne_sanさん
が紹介してくださった本。
歴史改変SF。
最初は話にのれなかったのだけれど、
途中から俄然、おもしろくなってきて、徹夜しかけた。
今年のベストかもしれない。
島のホテルに暮らす白人の母子。
本土と島の間を渡す船の老船長。
ヒトラー専属の私設ポルノグラファー。
彼らが大きな歴史の渦に巻き込まれていくのか
はたまた彼らが歴史を飲みこむのか。
傑作です。
是非、読んでみて。

ロボット
ロボット
“ロボット”という言葉はこの本から生み出されたもの。
しかし、私たちが頭に思い浮かべる“ロボット”と
この本に登場する“ロボット”は見た目からして
まったく違うものである。
ロボットというよりクローンの考え方に近いのではないか?
しかしソニーの二足歩行ロボットなんか見ている限りでは
のろのろしていてロボットの実用化はまだまだ先ですな。

●新たに注文した本

『ユリシーズ(2)』ジェイムズ・ジョイス
今は1巻をゆるゆる読んでいる。
この本をおもしろく読むコツは、
その都度、訳注をていねいに読むことじゃないかと思う。
多分、さーっと読み流してしまったら、
何が何だかわからないまま終わる可能性がある。

『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル
突然、再読したくなったので。

『奇術師』クリストファー・プリースト
プリースト検証プロジェクト第2弾。

『充たされざる者』カズオ・イシグロ
カフカっぽいらしい。

『エムズワース卿の受難録』P.G. ウッドハウス
来月、文春ウッドハウス選集第三巻『マリナー氏の冒険記(仮)』が
発売されるので、その前に第二巻であるこれを読んでおく。

『パンプルムース氏のおすすめ料理』マイケル・ボンド
東京創元社の新刊案内に『パンプルムース氏とホテルの秘密』が
あったので、まずはシリーズ第1作を読んでみることにする。

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May 07, 2007

『百万のマルコ』『邪馬台国はどこですか?』『占星術殺人事件』『明智小五郎対金田一耕助』『猫のゆりかご』

●『百万のマルコ』by柳広司
百万のマルコ

囚人たちが退屈に苦しむジェノヴァの牢。
新入り囚人、マルコ・ポーロは、彼らに不思議な物語を語りはじめる。
いつも肝心なところが不可解なまま終わってしまう彼の物語。
囚人たちは知恵を絞って真相を推理するのだが……。

物語の形式としてはアシモフの『黒後家蜘蛛の会』を
思い浮かべてもらえればいいです。
ただ、謎かけ自体は一休さんの頓知みたいな感じ(笑)

●『邪馬台国はどこですか?』by鯨統一郎
邪馬台国はどこですか?

歴史ミステリ連作集。
カウンター席だけのバーに客が三人。
某私立大学文学部教授、専攻は日本史の三谷敦彦。
同じ大学の文学部助手、専攻は世界史の早乙女静香。
(ちょっと気が強い)
そして歴史研究家、宮田六郎。
宮田の爆弾発言に、静香が食ってかかって始まった歴史検証バトル。
回を追うごとに熱を帯びて……。
テーマは、ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、
光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活。

多分、本物の歴史学者が読んだら噴飯物なんだろうけれど、
こんな歴史の見方もあるってことで。
そもそも2千年前のことなんて、正解を出しようがないのだから
ロマンがあった方がいいよね。

●『占星術殺人事件』by島田荘司
占星術殺人事件

怪事件はひとりの画家の遺書から始まった。
その内容は、六人の処女から肉体各部をとり、星座に合わせて
新しい人体を合成するというもの。
画家は密室で殺された。
そして六人の若い女性の死体が次々と見つかる。

これ、すぐ、トリックがわかっちゃった。
ミステリーの名作といわれているけれど
御手洗が、ホームズやポワロのように天才肌じゃないのがつまんない。
(私は天才肌の探偵が好き)
京都で石岡と別れて、さんざん思わせぶりな行動を取って、
結局、何もつかめてなくて、
最後、石岡のヒントで「あっ!!!」でしょ?
この御手洗シリーズってもしかして石岡が主人公で
御手洗はサブキャラ?

●『明智小五郎対金田一耕助』by芦辺拓
明智小五郎対金田一耕助

古今東西の名探偵、パスティーシュ短編集。
登場するのは、明智小五郎、金田一耕助、フレンチ警部、
ブラウン神父、エラリー・クイーン…
ポワロは登場しないけれど、
「そしてオリエント急行から誰もいなくなった」なんていう作品もある。
『グラン・ギニョール城』もそうだったけれど、
芦辺さんってミステリーの雰囲気作りがとても上手。
昭和12年の大阪駅に明智小五郎が降り立ったシーンなんて
目に浮かぶようでしたよ。
「少年は怪人を夢見る」は両親に捨てられてしまった少年が
危険な目にあって、読者ははらはらさせられるのだけれど、
実はその少年は…
あっ!と驚かされます。
芦辺拓は今後も読んでいきたい作家さんです。

●『猫のゆりかご』byカート・ヴォネガット・ジュニア
猫のゆりかご

主人公のジョーナはライター。
原爆を発明したノーベル賞物理学者のハニカー博士に興味を持ち、
博士の息子に手紙を書く。
博士には娘が一人、息子が二人いたが、
一番目の息子は行方不明だった。
ある日、ジョーナはニューヨーク・サンデイ・タイムズの特別付録に
博士の一番目の息子、フランク・ハニカーの名前を見つける。
なんと、彼はサン・ロレンゾ共和国科学大臣になっていた。

「本を読む人々」というSNSで「励まし合って読書会。」という
みんなで毎月1冊、課題本を読んで語り合うというコミュニティがあり
今月の課題本がこの『猫のゆりかご』なのでした。
同じ著者の『タイタンの妖女』も好きだけど、これもすごくいい。
カート・ヴォネガットとは相性がいいのかも♪
『猫のゆりかご』ってタイトルがよくないなあ。
もっとのんびりしたストーリーを想像しちゃうもの。
英語では、“猫のゆりかご”って“あやとり”という意味なんです。
それにしたって、この物語にはもっとドラマチックなタイトルが似合うと思うな。

読書中はボリス・アクーニンの『リヴァイアサン号殺人事件』
リヴァイアサン号殺人事件
帯を高村薫が書いてますー、きゃー。

貴族の館での大量殺人。謎の財宝。
そして、豪華客船に怪しげな人々と名探偵が揃った。
さて、犯人は誰か─
とくれば、もう欠けているものは何もない。
優雅なグランド・ミステリーが現代ロシアで甦ったことを悦ぼう。
スリルもどんでん返しも、精巧な銀細工のような贅沢さである。

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August 15, 2006

『異星の客』byR.A.ハインライン

異星の客異星の客
R.A.ハインライン

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火星に到着したチャンピオン号は火星で一人の青年を発見する。
彼、ヴァレンタイン・マイケル・スミスは
25年前、エンヴォイ号による第1次火星探検隊の8人が
消息を絶った際の遺児で、火星人によって育てられた。
火星人の教育を受けて育ったヴァレンタイン・マイケル・スミスは
地球とは大きく異なる思想を持っていた。
地球に帰ったマイクはジュバル・ハーショー、ジリアン・ボードマン等の
友人・恋人を得る。
彼等との議論を通じて地球人を理解した彼は、
世界の全ての教会(Church of All World)という、
火星人の影響を色濃く受けた独自の宗教を開く。

新興宗教小説とでもいうのでしょうか?
文庫で778ページとかなり長い作品なのですが
当初80万語だったのを編集者に「長い」と文句を言われたので
削りに削って 22万語まで落とし、
さらに、現在、出版されているのは17万語に削ったものだそうです。

ヒッピーの経典とあがめられたっていうのは、わかるなあ(笑)
といっても、私のヒッピーに関する知識というのは
『ダーマ&グレッグ』のダーマの両親が全てだったりしますが…(;´Д`)

「この作品に登場するすべての人物、神々、天体は
空想の産物である」
と、冒頭に書いてあるのですが、
やはり最後のあのシーンは、
キリストの最後とだぶってしまいます。
まさに「最後の晩餐」じゃないですか。

「SFは苦手」とまったく読まない方もいらっしゃるようですが
それはもったいないです。
最近、私は、SFこそ、現代小説の生き残る道じゃないかとさえ思います。
ハインラインは他の作品も読んでみたいです。

火星語メモ
グロクする:認識する、水を飲む、愛する
水兄弟:自分と同じコップから水を飲んだ人物
和合生成:性行為
分裂する:死ぬ
汝は神なり:生けとし生けるものは全て神である

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June 27, 2006

『星を継ぐもの』byジェイムズ・P・ホーガン

星を継ぐもの星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン

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SFって、あまり読まないんですけど、
overQさんne_sanさんを中心に「SFを読もう」という動きがあるので
肩ならしに読んでみました。

月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。
綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。
果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。

SFなんだけど、ミステリーでもあるので、
その謎に引っ張られ楽しく読めました。
考古学SFともいわれているらしい。
SFが苦手な方にもオススメです。
ただ、著者は科学オタクらしくて、
機械や技術の記述がやたら細かくて、ちょっとうざいですけど(笑)

これを読みながら、「どうしてSF小説って人気がなくなったのかなあ」と
考えた。
「スター・ウォーズ」や「ガンダム」は今でも人気なのだから、
SFというジャンルそのものが小説よりも、映像向きなのかもしれない。
SFの映像といえば、日清カップヌードルのCM、
FREEDOM(宇多田ヒカルが歌ってるやつ)が気になります。
あれは映画になるのでしょうか?

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April 02, 2006

『ソラリスの陽のもとに』byスタニスワフ・レム

ソラリスソラリス
スタニスワフ レム Stanislaw Lem 沼野 充義

国書刊行会 2004-09
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※早川書房の文庫本は画像がなかったので、
国書刊行会の単行本にリンクしてあります。

先月亡くなったスタニスワフ・レムの追悼ということで…

惑星ソラリス。
それは宇宙のかなたの謎の星で、
生物の存在は確認されないが、
理性を持った有機体と推測されるプラズマ状の“海”によって被われていた。
それを探査する宇宙ステーションが突如、地球との連絡を絶つ。
その調査のためにソラリスに派遣されるケルヴィン。
しかし、物理学者ギバリャンは謎の自殺を遂げ、
残った二人の科学者も何者かに怯えている。
そしてケルヴィンの前に現われたのは…

SFとしてはかなり地味。
あまり動きもないし
ほとんど宇宙船の中だけの物語。
哲学的。
ソラリスの“海”は、宇宙のかなたにある、ありえない存在ではなく
現代の私たちのそばにもあるのではないかと思う。
禅問答のようでもある。
一方ではハリーとの恋愛小説として読むとせつない。

映画化されてます。
アンドレイ・タルコフスキー監督作品
スティーヴン・ソダーバーグ監督作品があります。

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